高3生の合格判定ランクは上からS、A、B、C、D、E。Sは90%、Bなら80%と続き、Dは通常40%程度。受験指導としては合格を勝ち取るため“なるべく多くの大学を受験させる”がセオリーだ。 それはそうなのだが、とある研修で面白い話を聞いた。E判定(合格率20%)でも10校受ければ合格率は90%になるというのだ。 その理屈はこうだ。ある大学の合格率が20%なら不合格率は80%。2回連続不合格の確率は0.8×0.8で64%。3回連続はもう一回0.8をかけて51.2%。この計算を繰り返すとある生徒が合格率20%の大学に10回連続で落ちる確率は10.7%。逆に言えば1回でも合格する確率が90%になるというのだ。 賢明な読者諸君なら分かると思うが、この説明を聞いて(なるほど!)とはならない(笑)。理屈はそうでも合格率20%の大学を10個受けたら1校合格するか?と聞かれれば経験的に答えはNOだ。 今のは極端な例だが、我々の生活を取り巻く「数字」は全て、人間が社会生活を送る上で実際には見えないものを可視化するべく作り上げた「仮の姿」だ。偏差値70と聞けば人は天才と判断するし、内閣支持率が40%を下回れば体制についてあれやこれや言う。でも事実は「あるテストである生徒が取った点を偏差値にしたらそれが70という数値だっただけ」だし「国民の一部の集団に内閣を指示するか否か訊いたら、指示する人が40%未満だった」だけのことで、これらの数値は「目安」にはなっても真の「実態」ではない。 レーティングの記事も手掛ける私がこんなことを言うと自分の首を絞める事になるが(笑)「数字」を盲信してはならないのは競馬も一緒だ。勝率、連対率、複勝率など勝ち馬検討の数字は多くあるが、これらは全て「過去の結果を集めた一つの姿」に過ぎず、未来の何かを語ってはくれない。今週日曜、西日本エリアのメイン競走は朝日杯FSだが、これを読み解く鍵として今週はちょっと変わった金言を紹介しよう。 曰く「ステップレースはメイチ度を見よ」。 数値の指標も大事だが、一番大事なのはレースそのものを“自分の目”で見ること。「Seeing is believing」だ。そして前哨戦を見る時に必要なのは「勝った」「負けた」の結果よりも馬がどのくらい「メイチ」状態だったかという視点。 シュトラウスの前走は東京スポーツ杯2歳ステークス。朝日杯FSのステップレースで絶好の3番手追走から直線追い出されて先頭に立ち、内の馬を競り落とすと、ゴール前では騎手が手綱を緩めた。つまりシュトラウスの前走は「メイチ」ではなかったということだ。距離が短縮し、直線も短くなる本番で先行脚質は魅力で、メイチ駆けされたら逆らえない。 逆らえない、といえば以前折り合いが悪かった上司に「◯◯月は(仕事を目一杯やって)死んで下さい」と言われたことがある(笑)。“のら~り”のハンネを持つ私がニコッと笑って返した答えは当然、「ヤなこってす」だった(笑)。私の人生の本番はまだまだ先だ…。