くりーく
第86回中山記念(26日、中山11R、GII、4歳上オープン国際、別定、芝・内1800メートル、1着本賞金6000万円 =出走11頭)ケタ違いの末脚で、GIIの壁も突破だ。前走のGIII中山金杯で重賞初Vを飾った蛯名正義騎乗フェデラリストが、直線で内からグイグイと伸び、逃げ込みを図るシルポートを捕らえて4連勝を飾った。タイム1分47秒3(重)。母にGI2勝ダンスパートナー、叔父に96年菊花賞馬ダンスインザダークを持つ良血馬が本格化。関係者はドバイワールドC(3月31日、メイダン、GI、AW2000メートル)を目指すことを明言した。 直線に向いて逃げるシルポートとの差はおよそ10馬身。逃げ切り濃厚のシーンだが、連勝中の勢いがそうさせなかった。フェデラリストが力強い脚取りで追いつめ、かわしさる。4連勝のゴールは、圧巻の内容だった。 「届かないかなと思ったけど、さすがにペースも速かったし、(シルポートが)止まるだろうと。でも、離れすぎた。それでもきっちり捕まえるあたり、素質が開花してきた感じだね」。中山金杯に続く重賞連勝に、蛯名正義騎手は本格化の気配を感じ取った。 それにしても強い内容だった。5番手のインをピッタリと回り、直線は内ラチ沿いを、ただ1頭が伸びてきた。上がり3ハロンは34秒4で、34秒台をマークしたのはフェデラリストのみ。沈んだ上位人気馬を尻目に、羽が生えたように飛んできた。 この鮮やかな勝利に、生産者の社台ファーム、吉田照哉代表は、何と世界挑戦をぶちあげた。もともとシンガポール航空国際C(5月20日、クランジ、GI、芝2000メートル)は視野に入っていたが、レース後急きょ、ドバイWCへの追加登録(10万ドル=約800万円)が決まった。「ヴィクトワール(ピサ)も、中山記念を勝って行ったわけだしね」と、吉田照哉代表は生産馬のドバイWC連覇に思いを馳せた。 開業3年目の田中剛調教師は「能力にびっくりした。進化していますね」と話す。昨年の今頃は調教師として未勝利。それが1年で、J・GI(昨年12月中山大障害・マジェスティバイオ)を勝ち、平地重賞を連勝、そしてドバイ遠征まで浮上した。騎手時代は米国、英国、フランス、アイルランド、オーストラリアで騎乗経験がある。開業前にはドバイWCを見に行った。「将来、これたらいいな、と思って日本に帰ってきた」。その夢が近づいてきた。 「この(悪い)馬場をこなせたのは大きいし、中山金杯のときよりトモがよくなっていた。乗せてもらえるなら、どこでもいきますよ。ホント、楽しみになってきた。ググッときている」と蛯名は大きな期待を寄せる。ドバイWCに選出されるかは分からないが、関東から中距離の新星が誕生したのは間違いない。 (田中直成)