来年1月1日付で調教師に転身する
田中勝春騎手(52)=美浦・フリー=が、28日に現役最後の騎乗を迎える。中山で6鞍に騎乗予定で、最終レース終了後には引退式も行われる予定。カッチーの愛称でファンに親しまれ、JRA通算1810勝(26日現在)を挙げた名手の最後の手綱さばきから目が離せない。
騎手・
田中勝春がついに見納めだ。新規調教師免許試験に合格した現役騎手は、翌2月末まで騎乗して3月1日に調教師免許の交付を受けることも可能だが、カッチーは1月1日の交付を選択。28日の中山競馬でラストライドを迎える。
「悔い? もっとGⅠを勝ちたかったとか、言ったらキリがないけど、そんな大きなけがもなくやってこられたのは幸せだったよ。これだけ長く乗れるとは思っていなかったし、乗せてもらえたことがありがたい」
いつも通り穏やかに目を細めながら、カッチーが口を開いた。今では現役の騎手、調教師でも少数派となった馬産地出身。北海道三石町(現新ひだか町)の牧場で生まれ育ち、地元の草競馬で活躍して〝三石の神童〟と呼ばれたほどだった。ただ、プロの騎手としては決して順風満帆ではなかった。美浦・藤原敏文厩舎所属で1989年にデビューしたが、その1カ月後にはバセドー病を発症。半年間の療養を余儀なくされた。
「当時は騎手としてやっていけるか危機感があったけど、藤原先生と奥さまに支えてもらった。文句もいわないで俺を乗せてくれたからね。たくさん経験を積ませてもらったことが本当にありがたかった」。初勝利は同期の中で最も遅いデビュー年の10月21日。そこからトップジョッキーへの道を歩み始め、JRA通算1810勝(26日現在)を積み重ねた。
「おやじ(田中春美氏)には昔から〝ジョッキーになれ〟といわれてきたが、牧場に戻ってこいとは一度もいわれなかったなあ…。調教師になったら、牧場へどんどん足を運ぼうと思っている」
調教師としての第2の人生を前に迎える最終日は12R・2023ファイナルSの
ブランデーロックなど6鞍に騎乗。中には、最後に勝春を乗せてほしいという馬主サイドからのリクエストもあったという。「ファンの応援は本当にありがたい」と日頃から口にしているカッチー。勝負師として、最後の最後まで全力の騎乗を見せる。(片岡良典)
◆最終レース終了後に引退式 田中勝騎手の引退式は28日の中山競馬場で行われる。最終レース終了後の午後4時45分頃からパドックで実施予定で、引退式の模様はYouTubeのJRA公式チャンネルでライブ配信される他、グリーンチャンネルでも中継される。また、来年1月6日から21日までの競馬開催日に、中山競馬場のスタンド地下1階センターコートにおいてパネル展示『騎手・
田中勝春~栄光と笑顔~』を開催。先着3万人に「
田中勝春 引退メモリアルリーフレット」が配布される。
■田中 勝春(たなか・かつはる) 1971(昭和46)年2月25日生まれ、52歳。北海道出身。1989年3月に騎手デビュー。90年京王杯AH(オラトリオ)で重賞初勝利。92年
安田記念(
ヤマニンゼファー)でGⅠ初勝利。2004年にJRA通算1000勝を達成するなどトップジョッキーとして活躍し、JRA賞の優秀騎手賞、フェアプレー賞をそれぞれ2回受賞。24年度の新規調教師試験に合格した。26日現在、JRA通算2万651戦1810勝(うち重賞はGⅠ2勝を含む51勝)。
◆柴山騎手も最後の騎乗 年内で引退を表明している
柴山雄一騎手(45)=美浦・フリー=も28日が最後の騎乗となり、中山で5頭の手綱を取る。1998年に笠松でデビューし、2005年にJRAに移籍。26日現在、重賞12勝を含む602勝を挙げている。1月1日から美浦・古賀厩舎で調教助手となる予定。
なお、田中勝騎手と同様に新規調教師免許試験に合格している
秋山真一郎騎手(44)=栗東・フリー=は来年2月末まで現役を続け、3月1日に調教師免許を取得予定となっている。