田辺騎乗で3番人気の
アスクビクターモアが、2番手から抜け出して重賞初勝利を飾った。これで
ディープインパクト産駒が出走機会6連勝を達成。偉大な父の名を冠したレースで無類の強さを発揮した。昨年の最優秀2歳牡馬で無敗だった
ドウデュースはクビ差の2着で初黒星。3着の
ボーンディスウェイまでに
皐月賞(4月17日、中山、GⅠ、芝2000メートル)の優先出走権が与えられた。
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日本競馬の至宝が、その存在感を見せつけた。
弥生賞ディープインパクト記念を制したのは、メンバーただ一頭の
ディープインパクト産駒
アスクビクターモア。2歳王者
ドウデュースの猛追をクビ差しのぎ、父に同重賞出走機会6連勝の快挙をプレゼントだ。
「道中掛かりながらも遅い流れで脚はたまっていた。じりじりと迫ってくる強い馬の気配は感じたけど、何とか粘れそうだと思っていました」
殊勲の手綱は
東京新聞杯に続く今年重賞2勝目の田辺騎手=円内。「消極的な競馬はしない方がいい」という田村調教師からのアドバイスを受けて、スタート直後、促しながら2番手のポジションをキープ。先行馬の天下となっていたこの日の馬場ではこの判断が大正解で、早めの競馬で後続を振り切った。
「先行馬がもうちょっとやりあってほしかったが、レースの形が決まるのが想定より早くて。遅い流れの中で後ろにいるのは嫌だった」と自身の判断を振り返った鞍上は「見栄えはすごくきゃしゃだけど、体を大きく使って走れている。メンタル面などまだ成長の余地があるし楽しみ」と、父譲りともいえる身体能力をたたえた。
「このレースは本当に狙っていて、これで足りなかったらショックだといえるくらい仕上がっていたからね。本当にうれしい」。渾身(こんしん)仕上げでのGⅡ奪取に田村調教師も穏やかにほほ笑んだ。1勝クラスに続いて
皐月賞と同じ舞台を連勝し「東京では引っ掛かったけど、ここはコーナーが4つあるので何とかごまかせる。まだ体も全然できていないし粗削りだけど、それだけにものすごく魅力がある。同じコンビで
皐月賞? そうなるんじゃないですか」と力強く皐月取りに名乗りを上げた。
走りを見届けた廣崎利洋オーナーも「
ストレイトガール、
レッツゴードンキとこれまでは牝馬ばかりでしたが、ようやく男馬(の活躍馬)が出ました。クラシックが楽しみです」と近づいた春に思いをはせた。6頭いる2歳が最終世代となる偉大なる父。〝準ラストクロップ〟のエースとなるべき新星が、強豪ひしめく牡馬戦線に殴り込みをかける。(内海裕介)
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アスクビクターモア 父
ディープインパクト、母カルティカ、母の父レインボウクエスト。鹿毛の牡3歳。美浦・
田村康仁厩舎所属。北海道千歳市・社台ファームの生産馬。馬主は廣崎利洋ホールディングス㈱。戦績5戦3勝。獲得賞金7350万8000円。重賞は初勝利。
弥生賞ディープインパクト記念は
田村康仁調教師、
田辺裕信騎手ともに初勝利。馬名は「冠名+勝者+より多くの」。
★6日中山11R「
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