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【香港国際競走】Road to HKIR②~香港カップへ地元の新星登場!香港国際競走へのステップレース紹介(1)

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【香港国際競走】Road to HKIR②~香港カップへ地元の新星登場!香港国際競走へのステップレース紹介(1) | コラム | ウマニティ

 11月4日(金)から香港に滞在しています。香港競馬は夏のシーズンオフ約1か月半を経て、今年は9月3日(土)に開幕。12月11日(日)に開催される香港競馬最大のイベント、香港国際競走(HKIR=Hong Kong International Races)に向けたステップレースが組まれ、この大舞台へ向けて新旧勢力が熱戦を繰り広げています。
 到着3日後の6日(日)には沙田競馬場で香港国際競走のメーンレース、香港カップ(香港盃)、香港ヴァーズ(香港瓶)に向けた中距離のステップレース、ササ・レディーズパース(莎莎婦女銀袋、G3、芝1800m)が澳門最強馬のアルフォンソ(阿方素)を迎えて行われました。8番人気の地元馬、ハウスオブフォーチュン(馬上發財=たちまち大儲けという何とも嬉しい中国語馬名です)が初重賞制覇を果たし、香港カップへ名乗りを上げました。
 11月20日(日)に行われるトライアル3競走まで見届けて一旦、帰国する予定ですが、今回から数回に分けて、HKIRに向けて各距離別に編成された重賞戦線の様子をご紹介し、今年初めて日本でサイマル発売される予定のHKIRに向けた生の情報をお届けいます。
 ちなみに今回ご紹介するこのレースは香港の大手化粧品小売りチェーン、Sasa(莎莎)がスポンサーし、この日の沙田競馬場には色とりどりの帽子や綺麗なドレスに身を飾った女性で彩られ、パリのロンシャン競馬場のかくや、という煌びやかな雰囲気に包まれました。Sasaの総帥、郭少明氏は一代で香港屈指の化粧品チェーングループを築き上げた立志伝中の人物で、安田記念に挑戦した香港のマイル王、ビューティーフラッシュ(美麗締造)のオーナーとして知られる大馬主の一人です。

 下図に開幕からHKIRまでのステップレースの流れをまとめました。今回は最新の情報でもあるササ・レディーズパースのレースを中心に香港カップ香港ヴァーズに向けた中長距離路線を展望しましょう。



 ササ・レディーズパースは芝1800m、中長距離路線のステップレース第1弾に位置付けられます。10月23日、芝1600mのシャティン・トロフィー(沙田錦標)がマイル路線のステップレース第1弾として開催されています。中長距離路線を目指す馬がローテーション、仕上げ具合の関係からシャティン・トロフィーから使い始め、最大の前哨戦となる11月20日のトライアルを経て本番の12月11日の香港カップ香港ヴァーズに向かうケースもありますが、ササ・レディーズパースはマイル以下のレースが80%以上を占める香港では数少ない中距離戦重賞で、中長距離馬にとってはここからHKIRに向かうのが王道といえます。
 このレースには、日本のダート最高峰であるチャンピオンステークスに挑戦し、ドバイではG1を勝った香港のダート、オールウェザー王、ガンピット(準備就緒)に2013年のUAEダービー馬で、アメリカを経て香港移籍後に、チャンピオンズ&チャーターカップ(渣打冠軍暨遮打盃、G1、芝2400m)を勝ったヘレンスーパースター(喜蓮巨星)のG1馬2頭を筆頭に中長距離重賞勝馬7頭と出走14頭の半分を占め、香港カップ香港ヴァーズに照準を定めた香港の中長距離馬がずらりと顔を揃えた必見の一戦となりました。
 この顔ぶれの中、重賞未勝利ながら昨季の4歳三冠の第2レグ、香港クラシックカップ(香港經典盃,LG1、芝1800m)で3着同着。そして、今季も1800mのクラス2で2着、G3で3着の上り馬、イースタンエクスプレス(東方快車)が香港では雷神との異名をとる、あのモレイラ(莫雷拉)騎手騎乗と最軽量ハンデもあって単勝3.1倍の一番人気となりました。

 レースは外枠11番から果敢に先頭に立ったベーシックトロフィー(精氣神)が先手を取り1000m60秒56の平均ペースで引っ張る中、2番手で控えたハウスオブフォーチュンが直線入り口でベーシックに並びかけ、残り200mで仕掛けて先頭に立つと、道中最後方から内を突き抜けようとしたトップハンデのヘレンパラゴン(喜蓮奨星)、中団から馬場中央を衝いた1番人気のイースタンエキスプレスを抑えて単勝29倍の穴をあけました。

 ハウスオブフォーチュンは南アフリカ産の6歳セン馬。南アフリカで8戦3勝の後に2014/15季に香港移籍。マイルを中心に使われてきましたが、昨年12月に初めて使ったハッピーバレー(跑馬地)1800mのクラス2(準オープンに相当)で2着すると今年3月には同距離のクラス1(オープンに相当)を勝って中距離適性の高さを示しました。今季はクラス1、G3の1400m戦を叩いて臨んだ初のシャティン(沙田)1800m戦で改めて中距離適性を示し、重賞初勝利という大金星を挙げました。鞍上は今年夏、短期免許で札幌シリーズに初来日を果たした香港の穴男、カリス・ティータン(田泰安)騎手でした。16日朝、トニー・ミラード(苗禮徳)にインタビューしたところ、20日のトライアル、ジョッキークラブカップ(馬會盃)を使うとローテーション的にも厳しいので、香港カップに直行するとのことでした。初重賞勝ちですので本番でも人気にはなりませんが、1800m3戦2勝の距離適性は無視できない存在となりましょう。



ハウスオブフォーチュン(馬上發財)
輸入前馬名 :Strongman
産地/性齢  :南ア/セン6
父     :Stronghold
母     :Sweet Virginia
母の父   :Casey Tibbs
レーティング:114
香港成績  :5-3-2-17
海外成績  :3-1-0-4-8
総賞金   :HK$7,332,975
(海外賞金) :HK$152,980

 また、トップハンデを克服して2着に飛び込んだヘレンパラゴンはフランスでマイルのG1を3着。そして香港移籍後には昨季の香港ダービー(香港打吡、HG1,沙田芝2000m)で5着、ダービー後の1800m G3、プレミア・プレート(精英碟)勝ちの実績があります。また、4歳馬でもあり勝馬よりも伸び代は大きく、定量戦になる本番ではさらに期待が高まります。次回は20日に迫ったHKIRトライアル3レースの展望をお伝えします。
(写真提供:HKJC)

香港競馬豆知識①
香港では馬名、レース名が英語、中国語の2か国語で表記されます。香港馬に中国語馬名がつけられるようになったのはなんと、1941年12月に日本軍が香港を占領してからのことでした。アヘン戦争の結果、香港を植民地にしたイギリス人が香港に近代競馬を持ち込み、香港ジョッキークラブ(HKJC)はイギリス人を中心に組織されて中国人の加入には厳しい制限が設けられていました。しかし、日本軍はHKJCなどのイギリス系組織を接収し、その際にHKJCへの中国人加入を緩和。同時に漢字2字から4字までの中国語馬名を許可したのでした。しかし、馬名の英語、中国語表記が連動する必要はなく、全く意味が異なることがほとんどです。本稿では英語からの日本語転写の後のカッコ内に中国語表記を付すことにします。英語よりも中国語を日常的に使う筆者には、実は中国語馬名の方が使いやすく、親しみもあるのです。会員の皆さんも英中表記の違いを楽しんでみては如何でしょうか。

香港競馬豆知識②
香港競馬は毎年、9月初旬から7月初旬までの約10か月半開催され、これを1シーズンとします。中国語ではシーズンを「馬季」と表記しますが、本稿では地元香港紙の表記に従って「季」と簡略表記することに致します。昨季までは1馬季83日の開催でしたが、香港ジョッキークラブの長年の交渉が実って政府の承認が下り、今季からは88日開催になりました。

※次回のコラムは11月19日(土)公開予定になります。

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■甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。
卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、
同台北開設支局長などを務める。中国留学中に香港競馬を初観戦、
94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから
香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を
日本から香港に。香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、
テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)
駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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