中央競馬の3歳クラシック最終戦、菊花賞の追い切りが18日、茨城県の美浦トレーニングセンターで行われ、日本ダービー馬タスティエーラ(美浦・堀宣行厩舎、牡)が、初コンビのジョアン・モレイラ騎手(40)=ブラジル=を背にWコースで迫力満点の動きを見せた。ダービー以来のぶっつけ参戦となるが、仕上がりに不安はなく、サンスポ調教評価は最高の『S』。競馬の常識を覆す走りが期待される。
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これが日本ダービー馬の貫禄だ。競馬の祭典で3歳馬の頂点に立ったタスティエーラが、美浦Wコースで力強さ満点の動きを披露。初めてコンタクトを取ったモレイラ騎手も、極上の感触に笑みがこぼれた。
「すごくいい動きでした。能力が非常に高い。コントロールもしやすく、折り合いもしっかりつきました。自信を持ってレースに乗れますね」
秋晴れの下、3頭縦列で先頭から5馬身ほど離れた最後方を追走した。鞍上との呼吸をぴったり合わせて直線で最内に進路を取ると、中カフェクロニクル(1勝)と外ダノンラスター(OP)が一杯に追われる中、馬なりで加速。6ハロン81秒4-11秒7をマークし、2頭に半馬身先着した。1週前の12日にも同6ハロン80秒5-11秒2と抜群の動きを披露しており、文句なしの『S』評価だ。
日本ダービーから中146日で臨むクラシック最終戦。ぶっつけ参戦の理由を堀調教師は「(北海道の)ノーザンファーム早来で乗り始めてしばらくたって、右トモ(後肢)に疲れが出ました。それほどひどくはなく、前哨戦にはギリギリ行けるかというぐらいでしたが、北海道の暑さが非常に厳しかったこともあって、(直行で)菊花賞に向かおうという話になりました」と説明する。
菊花賞では1987年にサクラスターオーが皐月賞1着以来、中202日で勝ったケースがあるが、ダービー馬のぶっつけ参戦は異例中の異例。それでも、ダービーでオーストラリアのレーン騎手を背に69年ぶりの初コンビをVを成し遂げた〝常識破りのダービー馬〟ならあるいは…。モレイラ騎手も「休み明け感は全くなかった。しっかりでき上がっている」と仕上がりに自信満々だ。
今回はレース間隔だけでなく初の3000メートルも課題となるが、母国ブラジルや拠点にしていた香港などで輝かしい実績を誇り〝マジックマン〟の異名を取る鞍上は意に介さない。タスティエーラの父サトノクラウンで2016年のGⅠ香港ヴァーズを制した実績もあり、「父の方がテンションが高めで、調教でも前向きさが強かった。長距離で一番大事なのは折り合いだが、この馬は落ち着いているしリラックスして走れそう。距離が延びても大丈夫」とノープロブレムの構えだ。
皐月賞2着、日本ダービーVと能力、実績は世代最上位。魅力的な鞍上とともに、再び歴史を塗り替える準備は整った。(綿越亮介)
★堀調教師TALK
--帰厩後の状態は
「体重こそほぼ変わりないですが、皮膚感や馬体の張り、トモ(後肢)のバランスが良くなっています。リフレッシュされたいい状態です」
--最終追い切りの意図は
「先週でほぼ心肺機能や反応も良くなって、態勢が整ってきたので、モレイラ騎手に馬をしっかりと把握してもらいたいと思いました。父のサトノクラウンには(香港やドバイ遠征で)乗っていましたが、全く違う個性なので」
--動きの評価は
「春は抜け出すとソラを使う(気を抜く)部分があったので、残り1ハロンで抜け出す場面を作って確認しましたが、そういった面は見せませんでした。また、以前は追い切り後に必ずDDSP(喉の疾患)がありましたが、今週は全く症状がなかったです」
--距離については
「ここまでの競馬でスタミナがあるところをしっかりと見せてくれていますし、メンタルさえ整っていれば力を出せると思います」
◆達成すれば50年ぶり 日本ダービーと菊花賞の両方を勝った馬は史上10頭いるが、うち8頭が皐月賞も勝った3冠馬。残る2頭のうちクリフジは牝馬で、ダービーを勝ったあと、当時は秋に行われていたオークスも勝って〝変則3冠〟を成し遂げている。純粋なダービー&菊花賞の2冠馬は皐月賞には不出走だったタケホープのみといえ、達成すれば50年ぶりの快挙。ここでも歴史的な記録が懸かっている。