佐藤洋一郎さんの競馬日記

電子版 穴馬絞り 皐月賞

 公開

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「英雄のいない時代は不幸だが、英雄を必要
とする時代はもっと不幸だ」というブレヒト
の言葉を、藤田菜七子フィーバーでひさしぶ
りに噛みしめた。
庶民には手も足も出ない、ディープインパ
クトを筆頭とするSS系産駒の高価なブラン
ドホースが君臨、席巻している平成のJRA
競馬に、ハイセイコーやオグリキャップのよ
うな「草の根」ヒーローの出現は望むべくも
ない。
世界に通用する強い馬が出てきても、勝っ
て当たり前、走って当然の高額の血統馬で、
しかもそれらの所有者がいくつかの同じ服
飾に限定される。庶民感覚として心底応援
する気にはなれない。
 そうした馬に対する欲求不満を緩和させる
ためかどうか(外)のスーパージョッキー2
人が免許を取得したが、かれらはすでにヒー
ローであり、競馬を超えた老若男女の心を揺
さぶるほどの鮮度やインパクトはない。
 そこに忽然と「オルレアンの乙女」が降臨
した。彼女への狂熱には、ハイセイコーやオ
グリにのめり込んだ昭和の心情と同じものを
感じる。
 昭和は遠くなりにけり…だが、このとき、
今からひょっとすると「昭和」が復活するか
もしれない。そういう想いにかられて、昭和
の名門・谷川牧場のナムラライジングに◎を
打った。
 5冠馬シンザンは肉眼で見てはいないが、
怪物ハイセイコーを退治したタケホープ、オ
ークス馬タケフブキ、菊花賞馬ミナガワマン
ナ、ダービー(3着)のアサヒエンペラーは
レース後に前肢をさすりながら涙ながらに「
これ(深管)がなければ負ける競馬でなかっ
たのに」とつぶやいた谷川広一郎さんともど
も取材した。
 桜花賞に続いてのヴィクトワールピザ産駒
の一冠、ここから流れが変わり、新たな歴史
が刻まれる(といいな)。

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