Mr.11さんの競馬日記

第96回箱根駅伝を終えて

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2年ぶりの青山学院大の優勝で幕を閉じた第96回箱根駅伝。かつて見たことがないほどの驚異的な区間新記録が続出し、文字通り「超高速駅伝」となった。
区間新記録が生まれたのは、全10区間中7区間で述べ13人。その内訳を見ていると、あることが浮かび上がってきた。

[大学別区間新記録樹立者内訳]
青学大(2人)・東海大(1人)・國學大(1人)・帝京大(2人)・東国大(1人)・明治大(1人)・駒澤大(1人)・東洋大(3人)・創価大(1人)

実に多くの大学名が連なる。優勝した青学大からは2人。相澤をはじめとする3人の区間新記録樹立者を出した東洋大は10位に沈んでいる。このことからもわかるように、近年個人の力は大学によってそれほど差はなく、拮抗している。それでも青学大が今回のように完勝したのは「駅伝力」で勝ったのに他ならない。まさに原監督の区間配置がズバリ的中し、選手もそれに120%の力で応えたのだ。今回優勝候補筆頭と目された東海大も、大きく失敗した区間は一つもない。それ以上に青学大が勢いづき、結果どこよりも上回ったと言えよう。


■歴史的な記録ラッシュ
区間新記録が生まれた7つの区間のうち、記録として驚異的な区間がまたいくつもあったのも今大会の大きな特徴である。2区・3区・6区・7区がそれにあたると言える。2区相澤は、学生最強ランナーの名をほしいままに、その実力以上の走りを見せた。前人未踏の1時間5分台。今まで2区を駆け抜けたどの外国人留学生ランナーをも上回った。将来が大変楽しみな選手である。その記録をアシストした東国大の伊藤の走りも見事だった。3区ヴィンセントの記録は、これまでの記録を2分も更新するスーパー区間新。時計だけで判断すれば、文句なしのMVPである。これよりも短い山下りの6区でも恥ずかしくないタイムだ。今年の3区は下っていたのかという錯覚にさえ陥る。これは、もう私達が生きている間には更新されないかもしれない。それくらいの記録である。6区館澤は、ケガの復帰から箱根に間に合うのかと懸念されたが、その心配は全く無用だった。この記録も驚異的だ。数年前までは「夢の58分台」と言われた時代だったが、夢をはるかに超え、堂々の57分台である。最後の箱根に照準を合わせ、結果を出した頼りになる男に拍手を送りたい。館澤の陰に隠れる形となったが、東洋大の今西も57分台。3年連続の6区山下りで、59分台→58分台→57分台と確実にタイムを詰めて箱根を終えた。その陰には毎年主役がいて、区間賞を獲ることはできなかったが、隠れ山下りスペシャリストであったことはしっかり記憶に留めておきたい。7区阿部も、最後の箱根でこれまでの記録を30秒以上更新する区間新記録を樹立した。今大会出場選手中10000m日本人最高記録保持者の実力をトラックだけでなくロードでも証明した。見事な集大成の走りだった。この4つの驚異的な区間新記録のうち、3区・6区・7区は当日エントリー変更の選手によるもの。選手自身は走ることを告げられていたのかもしれないが、他校やファンからすれば、これも作戦の一つによる要素が大きいように感じられる。このあたりが、箱根駅伝の醍醐味でもある。


■各大学にとっての今大会と来季に向けて
独断ではあるが、今大会出場全校の成績を○と●に分類してみた。○は満足いく(及第点の)結果、●は悔しい結果。さらに、来季に向けて寸評。

[1位]青山学院大○
再び目標とされる立場に。経験者も多く残り、層の厚さはさらに増す予感。監督力にも依然要注目。
[2位]東海大●
連覇を逃した悔しさを胸に新たな挑戦。黄金世代が抜け、新生東海大に期待。
[3位]國學院大○
歴代最高順位を励みに。Wエース(浦野、土方)が卒業し、真価の問われる一年に。
[4位]帝京大○
エース不在ながらも上位に来る安定感は証明済。絶対的なエースを育てたい。
[5位]東京国際大○
予選会1位の勢いそのままに大躍進。新鋭校から常連校へ。エース伊藤の抜ける来季は、外国人選手に次ぐ日本人エースの台頭がカギ。
[6位]明治大○
山上り鈴木の好走が収穫。10人中8人が残るのが強み。古豪復活へ。
[7位]早稲田大○
予選会の苦戦から汚名返上。こちらも8人が来季へ残り、さらに上を目指す。
[8位]駒澤大●
優勝候補の一角も不本意な結果に。田澤中心のチームでもう一度頂点を目指す。
[9位]創価大○
1区と10区の区間賞(都内制覇)は見事。一度手にしたシード権は手放したくない。
[10位]東洋大●
抜群の安定感を誇っていた同校が、まさかの惨敗。この悔しさを全員で取り返しにいく。
[11位]中央学院大●
最終区間でシード権を逃した悔しさをバネに、リベンジの年。山下り武川はスペシャリストになれる逸材。
[12位]中央大●
伝統校が予選会常連校になっているのは寂しい。復活には、まず1区専門ランナーを育てたい。
[13位]拓殖大●
復路が誤算。外国人選手に頼りながら、日本人選手の底上げを図りたい。
[14位]順天堂大●
大エース塩尻の抜けた穴は、一年では埋められず。「山の順天」「復路の順天」へチーム立て直し。
[15位]法政大●
1区の出遅れが全て。青木、坪井が卒業し、まずは山を走れる選手の育成から。
[16位]神奈川大●
及第点の走りは5区のみ。全日本駅伝優勝の味を知る新4年生世代に期待。
[17位]日本体育大●
1区専門池田が残るのは明るい材料。下級生の成長がカギ。
[18位]日本大●
大敗も3区樋口、6区宮崎と好走選手も台頭。来季への成長に期待。
[19位]国士舘大●
大砲ヴィンセントをいかし切れず。全区間襷が繋がったことを自信に再出発。
[20位]筑波大○
オールドファンを元気づけた26年ぶりの出場。まずは2年連続の箱根路を目指す。


■あとがき
戦前、大方の予想は東海大の連覇。しかし、相次ぐ歴史的好記録を見るうちに、何か今までとは違った新しい次元の駅伝が始まったような気になった。元号が令和に変わるとともに、大学駅伝も新時代への幕開けか。そんな中、流れを引き寄せ抜け出したのは青学大だった。存在感こそあったものの、その強さは正直、近年の駅伝事情に詳しい人ほど忘れかけていたかもしれない。私もその一人である。今大会、同校の原監督は「やっぱり大作戦」を掲げて臨んだ。これほどまでに作戦名がピッタリハマった年はないだろう。やっぱり青学は強かった。誰もがそう思った結果だった。原監督は言う。「他のスポーツに負けないくらい駅伝を盛り上げていかなくてはいけない」と。陸上界全体を考えた言葉は、優勝すると一層重みを増す。そのきっかけの一つとして、青学が強いと駅伝が盛り上がる。それを再認識させられた大会だった。そして、「やっぱり駅伝は面白い」ということを、今大会を通じて感じた。もしかしたら原監督は、見ている人すべてに作戦をしかけていたのかもしれない。来年の作戦名を楽しみに、これからも駅伝ファンでいたい。

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