グリーンセンスセラさんの競馬日記

横山典弘「あの乗り方はやめろ」

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横山典弘騎手が若手騎手に「あの乗り方はやめろ」岩田康誠騎手らが実践する「お尻トントン」は、競走馬の負担になるだけ?━ gambling journal ギャンブルジャーナル/2017年02月19日 20時00分00秒 http://biz-journal.jp/gj/2017/02/post_2625.html

 15日に競馬大手ポータルサイト『netkeiba.com』内の「若手騎手応援コーナー!キシュトーーク U25」に出演した菊沢一樹騎手のインタビューで、興味深い一幕があった。

 今年で2年目を迎えている菊沢騎手だが、ルーキーイヤーの昨年を振り返りながら自身の騎乗フォームの修正について話す中、待望の初勝利を上げるきっかけとなった「ある一件」に関して語っている。

 デビュー当時の菊沢騎手は、新人の中でも一風変わった馬の追い方をしていた。俗に「お尻トントン」といわれている騎乗スタイルで、岩田康誠騎手や蛯名正義騎手、川田将雅騎手などのトップジョッキーが近年取り入れた、斬新な追い方だ。

 菊沢騎手はそういった先輩の影響を受け、競馬学校時代から練習を重ねてきたようだが、いざデビューしてから思うように勝てず苦しんでいたらしい。実際に藤田菜七子騎手や新人王を獲った木幡巧也騎手などの同期が次々と初勝利を挙げる中、自分だけが最後まで勝てていなかった。

 そんな中、悩める新人に声を掛けたのが関東の大御所・横山典弘騎手だ。

 菊沢騎手の叔父にあたる横山典騎手は「あの乗り方はやめろ」と強く説得。菊沢騎手もここまで培ってきたスタイルだけに最初は納得できなかったようだが、大先輩から丁寧な説明の上に師匠であり、父でもある菊沢隆徳調教師からも「あれは馬の負担になるだけだから止めなさい」と指摘されたようだ。

 菊沢騎手はその時の心境を「目が覚めた」と語っているが、結果的に「お尻トントン」をやめた翌週に初勝利を上げ、自分が取り入れるべき騎乗スタイルが見えたようだった。

 このエピソードだけでなく、以前から何かと議論を巻き起こしている「お尻トントン」。JRAでの"発案者"は、おそらく岩田騎手であり、実践し始めた当初は岩田騎手が重賞を勝ちまくっていたこともあって大きな注目を浴びた。

「馬の背中にトントンと尻をつけるような」独特の騎乗フォームは一見、馬にさらなる推進力をもたらしているようにも見える。実際に2015年の岩田騎手は、8月の終わりまでに「13」もの重賞勝利を上げる大活躍。武豊騎手が持つ年間最多重賞勝利記録も視野に入るほどの"無双"ぶりだった。

 その頃から岩田騎手だけでなく、蛯名騎手や川田騎手といった東西のトップジョッキーが真似し始めたことで騎手界の"トレンド"になりつつあった「お尻トントン」。だが、その一方で見た目が美しくないことや、騎乗馬に必要以上に負担が掛かるのではないかと考える見方も絶えない。

 通算1918勝を上げ、2015年に引退した藤田伸二元騎手は自身の著書の中で、岩田騎手の騎乗フォームに関し、見た目が不恰好で「馬の背中を痛めてしまう」という理由から「絶対に認めたくない」と記している。大きな結果を残している一方で、こういった意見があることもまた事実なようだ。

「『お尻トントン』が見た目上、不格好なのは確かですが、それが馬に対して必要以上の負担になっているのかを科学的に証明することは難しいと思います。ただ逆に、常に勝敗が問われる弱肉強食が競馬の世界ですし、そんな厳しい世界で『勝つためにベストを尽くす』というもの自然な発想なのかもしれません。

 もちろん、馬の背中を痛めてしまう可能性が高まるという話も理解できます。ただ、実際にどの程度影響があるのかは定かではないですし、勝ってなんぼの世界で『それで結果が出るのなら』と考える人がいることにも頷けますね」(競馬記者)

 横山典騎手から「お尻トントン」をやめるようにアドバイスを受けた菊沢騎手にしても、自分の重心が定まっていない中で大きなアクションをすることが、馬の負担になっていたと「お尻トントン」そのものを否定しているわけではない。

 逆に述べれば、正しい重心での騎乗さえ確立できていれば「お尻トントン」で馬に掛かる負担は最小限に軽減され、さらなる推進力が生まれる可能性があるということなのだろう。

 ただ、その一方で昨年壮絶なリーディング争いを繰り広げた戸崎圭太騎手とC.ルメール騎手、そして現在のリーディングを牽引している田辺裕信騎手や武豊騎手らが、以前からあるスマートな騎乗法で結果を残していることもまた事実だ。

 果たして、近年の騎手界のトレンドになりかけた「お尻トントン」は、今後も一つのスタイルとして定着していくのだろうか、それとも一過性のものとして、いつしか誰も真似しなくなるのだろうか。

 0.1秒でも馬を速く走らせたい騎手たちの「飽くなき探求」は続く。

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