グリーンセンスセラさんの競馬日記

【徹底考察】ミスエルテ

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【徹底考察】朝日杯FS(G1)ミスエルテ「怪物フランケル産駒の2歳頂点完全制圧なるか!ソウルスターリングと"真逆で唯一"の不安点とは...」監修=下田照雄(栗東担当)━ Gambling Journal ギャンブルジャーナル/2016年12月14日 10時13分00秒
http://biz-journal.jp/gj/2016/12/post_2076.html

 先週の阪神JF(G1)をソウルスターリング(牝2歳、美浦・藤沢和雄厩舎)が圧倒的なパフォーマンスで制し、フランケル産駒初のGI制覇を達成した。今年から世界中で続々とデビューした同産駒だが、先週以前までの最高成績はイギリスのQUEEN KINDLY(母父Rahy)という馬が制したG2 Sky Bet Lowther Stakes(芝1200m・ヨーク競馬場)まで。つまり、阪神JFはフランケル産駒にとって記念すべき「世界初のGI制覇」だったのである。

 そして今週末の朝日杯FSにも、同じくフランケルを父に持つミスエルテ(牝2歳、栗東・池江泰寿厩舎)が出走する。異例といっていい牝馬参戦の背景には、生産者や馬主による有力馬「使い分け」の思惑が見え隠れするものの、馬の実力に自信がなければできない芸当というのは確かだろう。

 そういった意味で、ミスエルテの朝日杯FS挑戦は非常に興味深い。

 父フランケルは現役時代、主に芝1400m~1600mを主戦場とし、通算14戦14勝。その内G1・10勝という破格の成績を残し、「世界史上最強馬」とも呼ばれている。近年、欧州で活躍した馬(ワークフォース、ノヴェリスト、ハービンジャーなど)の産駒は、日本の高速馬場に適しないというイメージが強い。しかし、フランケル産駒は日本で既に重賞を2勝しており、日本の馬場に適性の高い種牡馬であることは証明済みだ。

 果たしてミスエルテは朝日杯FSを勝てるのか。その可能性を探るために、まずは前走のファンタジーステークス(G3)から振り返ってみよう。
【前走考察】

11/5 ファンタジーステークス(2歳G3 京都芝1400m) 1着

 この日はスタートのタイミングが合わず最後方からの競馬になるが、鞍上の川田騎手は無理に追っつけずゆったり追走。初の1400mでも折り合い面に問題はなかった。

 松若騎手が押して先手を主張したショーウェイが、前半3F35秒5の平均的な流れを作る。3コーナーまでは坦々と進み、ショーウェイが2馬身のリードを取ったまま直線へ入った。

 4コーナーを回る時、ミスエルテの手応えは決して良くはなかった。馬群の加速に付いていけず、最後方で川田騎手が慌てて手綱をしごいている様子が、レース映像からも伺える。


 このまま後方馬群に沈むのか...多くのファンがそう思った瞬間、残り200m付近でエンジンにようやく火が付いた。大外から矢のような豪脚を発揮し、一気に前の馬に迫る。

 逃げ粘るショーウェイをあっという間に交わすと、最後は馬なりでゴール。競馬をしたのは残り200mだけ。圧巻の差し切り勝ちであった。スタートや勝負どころでの加速など、随所に課題は見受けられるものの、爆発的な末脚はそれらを十分補って余りあるものを感じさせた。
【血統考察】

 父フランケルは、イギリスで14戦無敗の成績を残し、史上最高のレーティング「140」を与えられた最強馬。冒頭でも述べたように、近年の欧州で好成績を挙げた馬の産駒は、日本の高速馬場に適さないイメージがある。原因として考えられるのは、欧州の重い芝と日本の軽い芝の違いだ。

 これまで、日本の馬場に苦戦を強いられてきた欧州由来の種牡馬(ワークフォース、ハービンジャー)の共通点は、現役時代、主に中距離で好成績を収めていたこと。一方フランケルは、英インターナショナルS(2092m)、英チャンピオンS(2000m)を制すなど中距離での勝ち鞍もあるものの、卓越したスピードから1400m~1600mで圧倒的な強さを見せてきた。この類まれなスピードが子供にも受け継がれ、前述の馬の産駒にはない強烈なキレ味を発揮するのかもしれない。

 ミスエルテの母ミスエーニョはアメリカのダート1400mG1・デルマーデビュタントSの勝ち馬。母父Pulpitは日本でもおなじみのパイロや、14・15年のアメリカリーディングサイアーで、アメリカ3冠皆勤を果たしたラニの父Tapitを輩出しており、現代アメリカダート路線における主流血統と言ってもいい。欧州とアメリカの「血の結晶」がはるか離れた日本の地で開花するのだから、競馬というのは面白いものだ。
【結論】

 前走のファンタジーSではまだ幼い競馬ぶりを見せたものの、現時点で致命的な欠点とは思えるものはない。牝馬路線に比べて牡馬路線はタレントが揃っていないだけに、男馬相手でも力でねじ伏せる可能性は十分ある。


強いて欠点を挙げるとすれば、スピードが豊富「すぎる」こと。父フランケル自身もそうだが、母ミスエーニョはアメリカのAW1400mG1・デルマーデビュタントSの勝ち馬で、スピード>スタミナの血統背景。池江調教師も「とにかく引っ掛かる。使うたびに競馬が難しくなっている」と言っており、将来は短距離に矛先を向けそうだ。

 怖いのはマイルへの延長でペースが極端に緩んだときだろう。前走のラップは最初1Fを除くと遅くても12秒フラットで、概ね短距離らしい締まった流れだった。朝日杯FSで中盤に息の入る流れになった場合、ペースの緩急に「引っ掛かる」気性が耐えられるかわからない。それを考えると、2戦目に距離短縮の道を選んだことが正しかったのかどうか。

 同じフランケル産駒のソウルスターリングは、逆に距離短縮が課題の1つだったが、ミスエルテはまったく反対の課題を抱えている。そこさえ乗り切れば、フランケルが1年目にして両2歳G1ダブル制覇の栄誉に輝いてもまったく不思議はない。
(監修=下田照雄(栗東担当))

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