グリーンセンスセラさんの競馬日記

「菜七子フィーバー」は何故消えた?

 公開

177

「藤田菜七子フィーバー」は何故消えたのか?JRAが日本競馬の未来のために変わらなければならない藤田菜七子という「機会」~2016年競馬界プレイバック1~━Gambling Journal ギャンブルジャーナル/2016年12月07日 10時32分00秒 http://biz-journal.jp/gj/2016/12/post_2006.html

 2016年も師走を迎え、残すところあと1カ月。

 ベッキーの「ゲス不倫」に始まり、元プロ野球の清原和博容疑者など大物著名人による「薬物疑惑」、国民的アイドルグループSMAPの「解散騒動」、数多くの感動や名シーンをもたらした「リオ五輪」など話題豊富な一年だったが、こと競馬界においても本当に数多くの話題が尽きない年だった。

 そこで今回は【2016年競馬界プレイバック企画】と銘打ち、今年1年間を振り返る意味で競馬界に起こった様々な事柄をピックアップしていきたい。第1回は、16年ぶりのJRA女性騎手誕生となった「藤田菜七子騎手」を特集したいと思う。
「菜七子フィーバー」は確かに存在し、一時は大きく世間を賑わせた。

 2月11日、JRA騎手課程32期生の合格発表が千葉県白井市の競馬学校で行なわれ、16年ぶり史上7人目のJRA女性騎手となった藤田菜七子ら6名の新人騎手が合格した。

 その剛力彩芽似といわれる愛らしいルックスから、競馬学校に入学した15歳の頃から注目を集めていた藤田菜七子騎手だが、16年ぶりのJRA女性騎手誕生を各メディアが報じたことで、その知名度は一気に全国区に。

 騎手デビューが前倒しとなり、地方競馬の川崎競馬場で同期より一足早くデビューする異例の形が取られたが、「ひな祭りデビュー」となったその日の川崎競馬場には、競馬界に突如降臨した"アイドル"を一目見ようと、ファンとメディアが殺到。取材規制が敷かれるなど、一時騒然となる騒ぎになった。

 その後、美浦の根本康広厩舎の所属騎手としてJRAデビューを果たした藤田菜七子騎手はデビュー戦でいきなり2着。JRAデビューからわずか14日後の3月20日にはモウカッテルでスプリングS(G2)に参戦し、女性騎手による最短重賞出走記録を大幅に更新した。

 さらに3月24日には、地方の浦和競馬場で初勝利。同日にもう1勝挙げ、史上初の女性騎手による1日2勝を達成した。さらには、デビューわずか1カ月で芸能プロダクションであるホリプロと契約するなど、今春最も話題を集めたのは間違いなくこの"新人アイドル騎手"だったであろう。

 だが、フィーバーが過熱し続ける一方で中央競馬の騎乗では苦戦が続いた。
 実際に中央競馬での初勝利を挙げたのは、翌月の4月10日。すでに同期の多くが初勝利を挙げた後だった。「純然たる男社会」と述べても過言ではない日本の競馬界で単純に女性というだけでも大きなハンデだが、競馬とは関係のない家庭で育った藤田菜七子騎手には競馬界特有の"コネクション"もなかった。

 そういった点では同じくデビューからスター騎手として扱われた武豊騎手や福永祐一騎手とはあまりにも大きな違いである。現在の競馬界では、コネクションのない新人騎手はまず騎乗馬を集めることさえ困難な状況に陥るのが当然となっている。それはアイドル騎手として、世間から大きく注目されていた藤田菜七子騎手とはいえ例外ではなかった。

 結局、デビュー当初の根本調教師の斡旋による騎乗馬の確保に加え、兄弟子の丸山元気騎手と共通のエージェントを手配するも、根本的な解決にはつながらず。また、藤田菜七子騎手自身も体力面で不安を露呈し、1週間の騎乗を制する動きがあったため、騎乗馬はさらに厳しいものとなった。

 競馬は常に着順で優劣が明確となり、勝者と敗者の差が極めて大きい世界といえる。

 勝てない、乗れない騎手がいつまでも注目されている世界ではないし、表面的な"結果"だけが届けられる世間ではなおさらだ。12月となった現在5勝、この秋わずか1勝の藤田菜七子騎手は、早くも世間から忘れられた"普通"の乗れない新人騎手になりつつある。

 これが「勝負の世界」といえばそれまでだが、率直に述べて藤田菜七子騎手が勝負の世界から淘汰されるべき騎手なのかどうかさえ、実質的に定かではない。何故なら、日本の競馬界には女性騎手におけるスタンダードが、ほぼ何一つ確立されていないからだ。

 サッカー、野球、ゴルフ、他にもオリンピックで争われるほぼすべての競技は明確に男女別に分けられ、どちらにも平等のメダルや栄誉が存在する。

 だが、紛れもない「アスリートの世界」であるJRAの騎手界は未だ男女の隔たりがない。

 例えば男女が交じって戦うことのある競艇の世界では、体重の下限を男子が50kg、女子が47㎏と定め「3kgのハンデ」がつくように設定されている。名古屋や笠松といった地方競馬にも女性騎手を1kg優遇するルール(重賞は適応外)もある。

 だが、JRAにはそういった女性に対する恩恵がない、いや、この世界に挑戦する女性をどう扱うかという文化自体がまだ存在していないのだ。

 しかし、これ以上そういった事情を"言い訳"にして良いのだろうか。

 このままでは藤田菜七子騎手が"騎手"として成功するには、相当な困難が待ち受けていることに間違いはない。率直に述べて、JRAでデビューした過去の女性騎手と同じ"末路"を歩むのが濃厚な状況だ。

 だが、それで良いのだろうか。藤田菜七子騎手はこれでJRAとしては史上7人目の女性騎手、つまりはJRAが「女性騎手の待遇」について思慮しなければならない7度目の機会でもあるということだ。

 すでに順調に行けば4年後にデビューするJRA競馬学校の騎手過程36期生には女性騎手の候補生がおり、騎手界への女性進出は確実に新たな局面を迎えようとしている。

 無論、ルールを変えてまで女性騎手の立場を確立させる動きは現状、その対象が藤田菜七子騎手1人となるため、賛否両論は避けられないかもしれない。

 しかし、日本競馬の未来を見据える意味でも、JRAは藤田菜七子騎手の誕生を大きな変化の「きっかけ」にしなければならないことに間違いはないだろう。
(文=編集部)

関連キーワード

この日記へのコメント

コメントはありません。

新着競馬日記

人気競馬日記