グリーンセンスセラさんの競馬日記

『菊花賞の行方を占う』Vol.9

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【夏季特別企画】史上最強世代・最後の一冠『菊花賞の行方を占う』Vol.9「これで皐月賞10着馬......札幌2600mでまたも5馬身差の圧勝劇!ますます混沌を極める『淀』への道」─
Gambling Journal ギャンブルジャーナル/2016.08.22 http://biz-journal.jp/gj/2016/08/post_1114.html

 圧巻の競馬だった。これで皐月賞(G1)10着馬である。一体、『史上最強世代』とは、どこまでハイレベルなのか......まったく底が見えない。

 そして、だからこそ来たる菊花賞(G1)はますます混沌の深みに嵌まろうとしている。

 20日、札幌で行なわれた札幌日刊スポーツ杯(1000万下、芝2600m)。未だ小雨が降り続け、「重」発表の札幌芝コースで皐月賞10着馬のウムブルフが躍動した。

 水分を多分に含んでぬかるんだ洋芝でこそ、ウムブルフの母方に流れるドイツ血統が本領を発揮。タフなコンディションに輪を掛けるようなタフな流れで、最後は出走各馬がバタバタになる中を一頭だけ次元の違う手応えで突き抜けた。5馬身差の圧勝劇である。

「スタートが決まり、すぐに折り合いがつきました。流れもちょうど良く、いい差し脚を見せてくれました。距離はもっと延びても大丈夫でしょう」

 手綱をとったJ.モレイラ騎手がそう語るように、3コーナー過ぎから圧巻の手応えでまくり一閃、直線に入る頃には後続に3馬身以上のリードを築く内容はまさに完璧だった。そして、何よりも香港No.1騎手の「距離はもっと延びても大丈夫でしょう」という一言が、ウムブルフが今後"辿るべき道"のすべてを物語っている。
 札幌2600mの圧勝劇といえば、本企画「伝説の出世レース『阿寒湖特別』を5馬身差で圧勝!北の大地で目覚めたステイヤーの血(リンク)」でも取り上げた先月30日の阿寒湖特別を、今回と同じく5馬身差で圧勝したカフジプリンスがいる。

 現時点でも菊花賞へ向けて強力なライバル関係となった2頭。時計面では2:39.3でゴールしたカフジプリンスが、ウムブルフの2:43.2を大きくリードしているが、良馬場と重馬場ではまったく参考にならない。

 実際に、札幌日刊スポーツ杯に出走した13頭の内、5頭が「前走阿寒湖特別組」だったが、その着順が完全に逆転しているように、札幌日刊スポーツ杯と阿寒湖特別は同じ札幌2600mでも「問われた資質」が大きく異なったレースと判断した方が良さそうだ。

次のページ▶▶▶ ライバルたちとの比較では……

例えば、昨年の札幌日経オープン(札幌2600m)で約5年3カ月ぶりの劇的な復活勝利を飾ったペルーサだが、58㎏を背負いながら札幌2600mを逃げ切ったからといって、決してステイヤーというわけではない。無論、まったくスタミナがないとは述べるつもりはないが、翌年のダイヤモンドS(G3)では大バテして、最下位に敗れている。

 札幌2600mコースはコーナーが6回も続きながらも直線が短く、なかなか道中のスピードが上がらないようなコース形態になっている。かつて長距離の名手だった岡部幸雄の言葉を借りるなら「ごまかしの利くコース」ということになる。

 2500mの有馬記念(G1)でダイワメジャーやオーシャンブルー、アメリカンボス、サクラチトセオーなど、しばしば高いマイル実績を持つ馬が好走することがあるが、あれと同じ理屈で、札幌2600mも折り合いの上手さと高い操縦性があれば、スタミナの不利を埋められるとうことである。

 話を戻すが、以上のことからカフジプリンスは一定のステイヤーの資質がありながらも「ごまかしの利く」通常の札幌2600mで強い競馬をした馬ということになる。

 しかし、今年の札幌日刊スポーツ杯のように重い馬場状態になれば、よりスタミナが問われるレースとなり、それを圧勝したウムブルフは、カフジプリンスよりもさらにスタミナに優れた馬という位置づけができる。

 だが、ここで問題なのは必ずしも「スタミナに最も優れた馬」が菊花賞馬になるとは限らないということだ。

 いや、むしろ最近の菊花賞はスタミナ一辺倒ではなく、中距離にも対応し得るスピード能力も重要な要素となっている。昨年の菊花賞馬キタサンブラックなどは、その典型といえるだろう。


次のページ▶▶▶ どこまでハイレベルなのか

従って仮に今年の菊花賞が、トーホージャッカルがレコードで制した2014年のような状況になるとカフジプリンスに分がある(もっといえば『BIG5』に分がある)。だが、逆に雨の中をエピファネイアが5馬身差で圧勝した2013年のような状況になれば、当然ウムブルフが大きく浮上しそうだ。

 いずれにせよ、さすが『史上最強世代』というべきか......本企画も次から次へと現れる素質馬をレポートする内に、次でとうとう10回目を迎えることとなった。

 しかし、これだけ春は脇役に回っていた素質馬の突き上げが激しくなると、今度は1000万下勝ちで菊花賞に出走できないという「最強世代」ならではの状況に発展する可能性さえ出てくる。トライアルから貴重な出走権を巡った激しい争いが見られるかもしれないと思うと、本当に今から秋が待ち遠しい限りだ。

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