藤沢雄二さんの競馬日記

『非国民』と『国民』の狭間で…

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先週の香港国際競走の中継は中山競馬場で見ていました。

日本時間で15時発走の香港スプリントでのミッキーアイルは7着。勝ち馬のベニアフォビアの強さには舌を巻いたが、概ね前残りの競馬で番手から失速したのはいただけないというか、まだまだというか…。

それだけに香港マイルでのモーリスは楽ではないだろうと思っていました。
もっとも、正直なことを言うと、香港マイルはエイブルフレンドに期待していた。なぜなら、モーリスが勝ってしまうとラブリーデイの年度代表馬の座が怪しくなるから。
とはいえモーリスに無様な競馬はしてほしくなく、エイブルフレンドとのデッドヒートの末の2着惜敗というのが理想的なシナリオ。ただ、モーリスが勝っても接戦だろうから、仮にラブリーデイが有馬記念を勝ってG?勝ち数で並んだ時にそうなると“アウェイゴール”の分だけモーリスが有利になっちゃうだろうな…ぐらいの認識でいたんですね。

ところが…

ご存知のようにモーリスの完勝。そして劇勝。
日本の馬が勝ったことで歓喜に湧く中山のパドックで、一人、この日の空のようにドンヨリとした気分になっておりました。
なぜならラブリーデイの年度代表馬の座が消えたのを悟ったから。


あの勝利でモーリスの年度代表馬は確定。それどころか年度代表馬にモーリス以外の名前を書いたら見識を疑われそうに思える勝ち方。なにせ断然人気の地元の英雄相手の完勝劇だから。
そしてラブリーデイの年度代表馬が消えたショックと同時に『最優秀4歳以上牡馬』もモーリスじゃないと辻褄が合わなくなるかと思うと軽く目眩が…。
だってラブリーデイが天皇賞を勝った時点で年度代表馬の座は間違いないと思っていたし、それだけの手応えもあったから。だいたい、天皇賞の時点では、毎日王冠を回避したモーリスがマイルチャンピオンシップを使う予定だと聞いて
「えっ、使えるの?」
ぐらいにしか思っていなかったのだし。
だから“スコア的”には、9回表を終わって4点リードしていたのに、2死からソロホームランを打たれて、その後あっという間に満塁になって、あの香港マイルで逆転サヨナラ満塁ホームランを打たれた、そんな感じ。マウンド上で打球の行方を見たまま呆然としてその場から動けない…。モーリスのあの勝ち方は何かもののけでも宿っているんじゃないかと思うほど、本当の意味での鳥肌モノ。
もしラブリーデイが有馬記念でシンボリクリスエスや2回目のオルフェーヴル級のパフォーマンスを見せても覆ることはないだろう。

愕然としながら、有馬記念に向けて調整しているラブリーデイ陣営のことを考えたら『勝ってもそれ以上のモノを得られない』という点において、1999年の最終節での浦和レッズのことが頭をよぎってきた。90分で試合を決められずに延長戦に突入。当時のレギュレーションで、勝ち点2を得ただけでは得失点差で市原を上回れずにJ2降格が決まった中で延長戦をプレーしなければいけないあの時の光景だ。結果的福田正博のVゴールで試合には勝ったけれど、あのゴールは“世界一悲しいVゴール”と言われたものだった。こうなった以上は年間7つ目の重賞勝ちをして“世界一悲しい有馬記念”にしてしまえ!

中継の映像はモーリスの表彰式の様子を映していた。国内では勝ってもニコリともしない、良く言えばプロフェッショナルの、悪く言えば鉄仮面の堀調教師とライアン・ムーアから笑みが浮かんでいることがこの勝利の大きさを雄弁に物語る。モーリス陣営の喜びの姿を見ながら、粛々と目の前のタスクを消化していかなければいけないラブリーデイのことを思うと、1999年の浦和レッズよりも1988年の近鉄の方に近い気もしてきた。
坂下で抜け出したラブリーデイがショウナンパンドラの強襲を喰らった姿は、ブライアントのホームランで勝ち越したのに阿波野で追い付かれたシーンにもダブる。そして4時間を越えて中継の映像には森監督の胴上げ…。

あれこれ思いを巡らせてもネガティブな方向に進みがちではあったが、気づけば香港カップのパドックの様子が映し出されていた。気持ちを切り替えて香港カップのことを考えることにした。
香港カップはヌーヴォレコルトに期待しておりました。血統的に、ちょっと相手関係が強くなることで人気を落とすところがむしろ買いのハーツクライ産駒で、そもそもモーリスが惜敗するという前提でこっちこそムーアと思っていたわけですが、そのムーアは香港ヴァーズも勝っていたのでカップまで勝てばトリプルになるわけで、むしろ勢いを素直に信頼。そんな感じでした。

で、レースは武豊・エイシンヒカリが鮮やかに逃げ切って、2着がヌーヴォレコルトで日本勢の1-2フィニッシュに中山のパドックでも大きな歓声に包まれました。まるで横山典弘のようにガッツポーズをしながら入線してくる武豊なんて今までに見たことない。よほど会心のレースだったのでしょう。
見ている方は非常に現金なもので、快調に飛ばすエイシンヒカリは向正面の時点で逃げ切りそうなムード満々で、とりあえずヌーヴォレコルトを中心に見ていたら直線は内を突いて2着は確保できそうな感じになったので、エイシンヒカリというか武豊の逃げ切りに興奮した。
表彰式での武豊の爽やかなドヤ顔がまた嬉しい。うん、かなり矛盾した表現だとは思うが、単勝38倍ならそんな表情にもなるだろう。
香港の空に流れるこの日2回目の君が代。モーリスの時はものすごく征服感があったけど、エイシンヒカリの時は鞍上が武豊だったからこそ「日本人で良かった」と思えたし、自然と目から汗が…。

日本勢のダブルという結果に解説の合田さんが「総勢10頭で遠征した成果」というのを強調していたけど、そう考えるとモーリスが、こちらも自分が応援しているドゥラメンテと同じ堀厩舎というのは心強く思えてきた。
マイルのモーリス、クラシックのドゥラメンテという二枚看板をそのまま、かつてのジャンボ鶴田と天龍源一郎の鶴龍砲のような存在で世界を席巻しようものならモーリスはこの上ないパートナーだし、もし来年もラブリーデイが現役続行ならそこに2000のラブリーデイ@藤波辰爾という感じでトリオを結成できたらもっと素敵なことになるだろう。

やはりそのためには、ラブリーデイはしっかりと有馬記念を勝つ必要がある。
一度目標が潰えても、また新しく立てればいい。
とにかくラブリーデイは勝って2015年を締め括ろう!

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