第59回フジテレビ賞
スプリングS(21日、中山11R、GII、3歳牡牝オープン国際、馬齢、芝・内1800メートル、1着本賞金5400万円、3着までに
皐月賞優先出走権=出走15頭)2番人気
アリゼオが初騎乗の
横山典弘騎手の絶妙なリードに導かれ、鮮やかに逃げ切り重賞初V。
皐月賞(4月18日、中山、GI、芝2000メートル)の有力候補に躍り出た。タイム1分48秒2(良)。2着に10番人気
ゲシュタルト。昨年の
朝日杯FS勝ち馬で、最優秀2歳牡馬
ローズキングダムは1番人気に応えられず3着。キャリア4走目で初の敗戦を喫した。
無敗の
チャンピオンが相手でも、迷いはなかった。意を決しての逃亡策。
横山典弘騎手と
アリゼオのコンビが自らの競馬を貫いた先には、重賞初Vとクラシック候補の称号が待っていた。
「少し出負けしたけれど、二の脚でしっかり踏ん張っていたし、すぐに行けたのが勝因ですね。いい馬ですよ」
初騎乗の素質馬を鮮やかにエスコートしたノリの表情が緩む。「気難しさがあって、他の馬が横に来ると気にする。馬の意識を前々に集中させるように」と、逃げは考え抜いた結果の選択だ。1000メートル通過60秒2。絶妙のペースを刻み、直線に入る手前で後続を突き放す。終わってみれば、最後まで他馬を寄せ付けない快勝劇だった。
「すぐ後ろに来るだろうと思っていたので、最後まで必死でした」とノリが意識した2歳王者
ローズキングダムの存在がかすむほどの鮮やかなV。その裏には、陣営の工夫もあった。前走の
共同通信杯(3着)で幼さい面が出たため、中間は調教を強化した。さらに、レース当日も、パドックで二人引き、ゲート裏までメンコを着用、馬場入りは先出し、と精神面でも万全の対策を講じた。2歳時に新馬、
ホープフルSと連勝した素質馬は、様々なプラス材料を得て、才能を
皐月賞トライアルで開花させた。
ノリは今年の重賞6勝目。2位の岩田康騎手が3勝で、数字は際立っているが、本人はいつもどおり「いい馬に乗せてもらっていますから」とサラリ。ベテランの自然体は、若駒には何よりの頼もしい味方だろう。
「距離はあと200メートル延びても、心配ありません。他にも強い馬はいっぱいいるけれど、力がある馬だし、無事にいってほしいですね」。
皐月賞を見据えて、ノリは気持ちを引き締める。イタリア語で“貿易風”(地球の緯度30度前後から決まったコースに吹く風、北半球では北東の風)の意味を持つ黒鹿毛馬が、今、自分の宿命であるクラシックロードへ向けて、強い追い風に乗った。(黒田栄一郎)