ブリックスアンドモルタル 父:Giant's Causeway母:Beyond the Waves 母父:Ocean Crest鹿毛 2014年産生 アメリカ合衆国産通算成績:13戦11勝 ブリックスアンドモルタルの主な勝ち鞍ペガサスワールドCターフ、ターフクラシックS、マンハッタンS、アーリントンミリオンS、BCターフ(G1) アメリカ競馬名誉の殿堂博物館S、ムニスメモリアルH(G2) ブリックスアンドモルタルの主な産駒ゴンバデカーブース、イーグルノワール、アンモシエラ、クランフォード、アスクカムオンモア ブリックスアンドモルタル産駒の特徴・産駒によってこなす条件の幅がかなり広い。・短距離から中長距離、芝もダートもこなす可能性がある。母系の血統や産駒自身の気性が適性の手がかりに。 アメリカでデビューし、通算成績13戦11勝。 現役生活の途中で重度の跛行治療のために”成功率50%”という難手術に挑み、1年に渡る休養を強いられながら、復帰後はG1・5連勝を含む7連勝。底を全く見せない輝かしい戦績を刻んだまま日本へとやってきたブリックスアンドモルタル。 ダート競馬が主体のアメリカから芝の実績馬が輸入されるというのは珍しいが、確かな競走実績や、日本で溢れていたサンデーサイレンス系やキングカメハメハ系の血とも配合可能とあって、初年度からかなりの人気を集めた。 だが、その初年度産駒の上級馬は、見事なまでにタイプがバラバラ。 芝マイルの重賞を制したゴンバデカーブース、ダートの重賞を制したイーグルノワールやアンモシエラ、短めの距離で頭角を現してきたクランフォード、芝中長距離での走りが光るアスクカムオンモアなど、芝、ダート、距離に関しても全く統一性がない。 なぜこうなるのか。 ブリックスアンドモルタル自身の血統を見ていくと、父は欧州で”アイアンホース”の異名を残したジャイアンツコーズウェイ。 1400m〜2000mという幅広い距離でG1を制した名馬だが、この適性は本馬にもしっかりと受け継がれ、主戦場としたのは1600〜2400m。守備範囲という点では父以上の広さを誇る。 加えて、本馬自身は芝の経験しかなかったが、父のジャイアンツコーズウェイはダート戦であるBCクラシックでも好走。母父のオーシャンクレスト、母母父のエクセラーという馬も芝・ダートの両方で勝ち星を挙げている馬なので、本馬も潜在的に芝もダートもこなす万能性を備えている可能性がある。産駒の統一性のなさは適性の幅広さゆえと見ることができないだろうか。 産駒全体の成績としては今のところ芝の方が若干優勢ではあるが、これは芝主体の日本の主流血統馬を繁殖に迎えることが多い分の差であって、その中からイーグルノワールやアンモシエラのような存在が出てくるということは、ダートの一線級が出てくる可能性も十分に考えられる。これからの繁殖の集まり方次第では芝とダートの成績が五分に近い状態になる可能性があるし、これだけこなす条件の幅が広ければ、将来リーディングサイアーランキングの上位に名を連ねても不思議ないように思える。 とは言え、初年度からの人気や産駒数を考えれば、今の成績でもやや小粒といった印象は拭えない。 だが、本馬の現役生活を踏まえると、少々イメージは変わってくる。冒頭において簡単に綴ったが、本馬のデビューは3歳。そこから1年の休養を挟んで、その才能が全開となったのは5歳になってからだ。難しい手術を挟んでこれほどの成績を残すのは、元々の高い能力の他に、それを維持・向上させる成長力がないとできない芸当。早熟性よりも、年を経ての成長力に富む血統という可能性がある。 そう考えると、執筆時点でデビューしているのは僅か2世代。これだけで本馬の種牡馬としての可能性を結論付けるのは早すぎる気がする。 幸いここ数年の種付け数も安定しており、これからまた様々なタイプの産駒が出てくるだろう。既デビューの上級産駒たちのさらなる変身にも期待が掛かる。 予想面においても、適性の広さから様々なアプローチが可能となりそう。 それぞれのレースぶりや気性面など、映像でのチェックは必要だが、思い切った距離短縮・延長、芝・ダート変わりといった、いかにも変化がありそうな条件変更の際は一考の必要がある血統と言えそうだ。 「この種牡馬だからここで狙う!」といった固定観念が薄い種牡馬だからこそ、美味しい馬券を運んできてくれる可能性があるのではないだろうか。