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3歳馬の頂点を決める日本ダービーの枠順が23日、確定した。1990年にアイネスフウジンでこのレースを制し、19万人の〝ナカノコール〟を巻き起こした中野栄治氏(71)が予想に初挑戦。本命に推すのは❼枠⑮番のジャスティンミラノだ。レースレコードで制した皐月賞の内容を高く評価。さらに、騎乗する戸崎圭太騎手(43)=美浦・田島俊明厩舎=にも〝取材〟し、自信を深めている。伝説のダービージョッキーの予想に乗れ!
皆さん、こんにちは。中野栄治です。今年3月に調教師を定年になってのんびり過ごしていますが、縁あってサンケイスポーツで日本ダービーの予想をすることになりました。これも1990年にアイネスフウジンで勝たせてもらったおかげ。ダービーまでは私も賞味期限、ということでしょうか(笑)。
ではさっそく。◎はジャスティンミラノです。
私が思うのはまず、「ダービーは皐月賞組が絶対に有利だ」ということ。同じ東京芝2400メートルの青葉賞などから参戦してくる馬もいますが、皐月賞に駒を進めた馬はそれだけ厳しい戦いを勝ち抜いてきているということ。高校野球でいえば、地方大会と甲子園くらいの差があります。アイネスのときも、上位を占めたのは皐月賞に出ていた馬ばかりでした。
とりわけ、勝ったジャスティンミラノはとても強かった。最後にひと伸びしたのは稽古をつけていた故藤岡康太君のひと押しかなとジーンとしましたが、横綱相撲で勝ち切ったうえにタイムはレースレコードの1分57秒1。3着のジャンタルマンタルがNHKマイルCを勝ったことからも評価できます。
鞍上の戸崎騎手とは先日、とある企画で対談させてもらいました。彼は「(ダービーでの)これまでの2着(2018年エポカドーロ、19年ダノンキングリー)は正直、距離がどうかって気持ちがありましたが、今回はその心配がない」と言っていました。これはとても重要なこと。アイネスも父が長距離向きのシーホークだったので、スタミナには絶対の自信がありました。戸崎君もおそらく、強気の競馬で臨めるはず。枠順は外めの❼枠⑮番ですが、全然問題はありません。レースで5番手なら、5頭立てくらいのつもりで乗ったらいい。それで直線いつ抜け出すか、そのタイミングだけです。
対抗はレガレイラ。3歳のこの時期でしたら、牡、牝にそれほど差はありません。鞍上はルメール騎手ですし、皐月賞で厳しい競馬をしたこともプラスになるでしょう。▲はシックスペンス。賞金的に出られるのに、皐月賞をパスしてここ一本に調整。他のトライアル組とは違います。鞍上の川田騎手は、お父さんの孝好さんが父(故要さん=大井競馬の元調教師)の厩舎の所属騎手だったという縁もあり、注目しています。
34年前のあの日、皆さんからいただいた〝ナカノコール〟は私の宝物です。一生、あの感動を忘れることはありません。今年も素晴らしいレース、そして温かい声援がダービージョッキーに届けられる瞬間を楽しみにしています。(元JRA騎手、調教師)
■中野 栄治(なかの・えいじ) 1953(昭和28)年3月31日生まれ、71歳。東京都出身。71年3月に東京・荒木静雄厩舎から騎手デビューし、JRA通算3670戦370勝。重賞は90年日本ダービー(アイネスフウジン)など16勝。95年に引退して調教師に転身し、96年3月に厩舎を開業。今年3月に定年で引退した。調教師としてはJRA通算6605戦292勝で、重賞は2001年高松宮記念、スプリンターズS(トロットスター)など8勝。
★試練の15番枠
ジャスティンミラノは、外めの❼枠⑮番に決まった。⑮番枠は過去10年では昨年のノッキングポイントの5着が最高で、過去90回の長い歴史をひもといても優勝馬は1頭だけ。1992年に1番人気のミホノブルボンが4馬身差をつけて逃げ切り、無敗での皐月賞&日本ダービー制覇を果たした。ジャスティンミラノは32年のブランクを打ち破り、ブルボンと同様に無敗の2冠Vを果たすことができるか。
★アイネスフウジンで逃亡1990年の日本ダービー
22頭立てで行われ、1番人気は皐月賞3着のメジロライアンで、中野氏が騎乗した皐月賞2着のアイネスフウジンは3番人気。折からの競馬ブームに乗り、当日の東京競馬場には現在も破られていないJRA最多入場人員記録の19万6517人が詰めかけた。
レースはすんなりとハナに立ったアイネスフウジンが、絶妙なペース配分で後続を翻弄。終始セーフティーリードを保ち、2着メジロライアンに1馬身¼差をつけて先頭でゴールした。満場の観衆は「ナカノ、ナカノ!」と〝ナカノコール〟を連呼し、栄光の人馬をたたえた。