今週から中央競馬のＧＩシリーズが再開。１２月２８日のホープフルＳまで、毎週ビッグレースが行われる。１４日のエリザベス女王杯では、国枝栄調教師（６６）＝美浦＝が秋華賞馬アカイトリノムスメ（３歳）で史上初のＪＲＡ牝馬ＧＩ完全制覇に挑む。母アパパネは牝馬３冠を達成しながら、エリザベス女王杯は２年連続３着。“母超え”を果たしての偉業達成へ、手応えを語った。（取材構成・漆山貴禎）

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　－－秋華賞で待望のＧＩ初制覇

　「久しぶりのぶん、チャカチャカしていたけど、スタートを決めてソダシをマークできるいい位置で運べたね。結果的にソダシは実力を発揮できなかったけど、最後に内と外から（他馬に）来られても頑張ってくれたのはよかったよ」

　－－アパパネと母娘同一ＧＩ制覇も達成

　「お母さんと比べると頼りなさがあったので、（長めの放牧で成長を促して）トライアルを使わずオークスからのぶっつけ（本番）にした。まだ安心できるほどではないけど、競馬に行けばしっかり走れるのがいいところ。母に比べて良化度が遅いぶん、伸びしろは大きいと思う。このままグーッと右肩上がりで成長してくれれば相当なレベルまで行くはずだよ」

　－－母はエリザベス女王杯に２度出走してともに３着。唯一勝てなかった牝馬ＧＩに娘が挑む

　「母は（芝２４００メートルの）オークスも（サンテミリオンと）同着とはいえ勝ったくらいだから距離が長すぎたとは思わない。ただ、（連覇した英国の）スノーフェアリーが強すぎたよね。瞬間移動のような異次元の末脚だった。娘は父のディープインパクトが強く出ているし、距離が延びても大丈夫。しまいに頑張ってほしいね」

　－－年長馬と初対戦

　「そこが一番のポイントかな。２キロの斤量差でどこまでやれるか。ただ、今年の３歳馬はエフフォーリアが天皇賞・秋を制したし、他の馬も（年長馬相手に）重賞を勝っているからね。世代レベルの高さに乗っていければ。チャンスはあると思っているよ」

　－－４日の１週前追い切りは美浦Ｗコース３頭併せで５ハロン６８秒４－１１秒６。馬なりで軽快だった

　「それほど間隔がないし、再度の輸送もあるので強い追い切りはやらなくてもいい。息さえつくっておけば大丈夫。馬体重は回復しているし、カイバも食べている。今のところ、状態面で気になる点はないよ」

　－－アパパネ、アーモンドアイと国枝厩舎は牝馬の活躍が目立つ

　「牝馬はメンタルが重要だよね。上のクラスまでくる馬はさすがにタフだけど、基本的に（精神的に）追い込みすぎないでへそを曲げさせないのが大事だと思う」

　－－勝てば自身はＪＲＡの牝馬ＧＩ６競走を完全制覇。史上初の偉業だ

　「そうなの？　全然意識していなかったよ。（担当の）福田（好訓調教助手）には『めったにないチャンスみたいだから頑張れ』と言っておきます（笑）。お母さんのリベンジを果たしてくれるといいね」

■国枝栄（くにえだ・さかえ）　１９５５（昭和３０）年４月１４日生まれ、６６歳。岐阜県出身。９０年に厩舎を開業し、９９年スプリンターズＳ（ブラックホーク）でＧＩ初勝利。２０１０年アパパネ、１８年アーモンドアイで２度の牝馬３冠を達成。８日現在、ＪＲＡ通算８２２９戦９７４勝。重賞はＧＩ２０勝を含む５９勝。

★５レース制覇…現在、ＪＲＡの牝馬限定ＧＩは６レース。うち５レースを制しているのは現役では国枝調教師のみで、他には引退した松田博資元調教師（エリザベス女王杯以外）、角居勝彦元調教師（桜花賞以外）の２人がいる。４レースを制している現役調教師には藤沢和雄調教師（秋華賞、エリザベス女王杯以外）がいるが、来年２月で定年のため完全制覇のチャンスはない。

★馬名の由来…母アパパネはハワイに生息する赤い鳥の名前が由来のため、『赤い鳥（アパパネ）の娘』と命名された。

★エリザベス女王杯の特別登録馬（想定騎手入り）はこちら　調教タイムも掲載

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