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クールという言葉がよく似合う。ポーカーフェースで口数は少ない。だが、レースでは力強いアクションで馬を動かす仕事人。それがライアン・ムーアだ。今秋、ジャパンカップ(ジェンティルドンナ)、朝日杯フューチュリティS(アジアエクスプレス)を制した“GI優勝請負人”に、悩める怪物ゴールドシップの復活が託された。
「私が言うまでもなく才能に優れたチャンピオンにふさわしい馬だ」
英国の名手はGI4勝の芦毛に最大限の賛辞を贈った。初コンタクトとなった11日の1週前追い切りは、栗東坂路での併せ馬で1馬身遅れたが、「調教で動く相手に食らいついていたし、納得のできる動きだった」。京都大賞典5着、ジャパンC15着とスランプに陥っているとはいえ、感触は決して悪くなかった。
前夜には、みずから希望して須貝調教師、北村助手、今浪厩務員らを誘って食事会を開いた。ムーア騎手は「特に細かいミーティングはしていない」というが、それでもチームの士気は高まったはず。すべては「有馬記念を勝つため」に実行したことだ。
年末のグランプリが、どれだけ重要なレースかも分かっている。昨年、ダークシャドウ(6着)で挑み「私たち外国人にとってはジャパンCだが、レースの雰囲気や観客の反応、歓声などから、日本人にとっては有馬記念が一番のドリームレースなんだと思った。一度は勝ちたい」と思いを強くした。
朝日杯FSを勝ち、翌16日の有馬記念プレミアムレセプションでは、ファンが行列を作ってサインを求めるほどの人気ぶり。華麗なライディングで日本のファンの心をグッとつかんだ。
「私に期待されていることは『変化』。ゴールドシップのために何が必要か今いろいろ考えている。力強くていかにも中山が向く馬。持っているすべての可能性を引き出してエキサイティングなレースをしたい」
きょうの最終追い切りにも騎乗予定。芦毛の王者復権へ、英国の名手はどんな答えを導き出すのか。 (板津雄志)