競馬ニュース > 記事
激しい風が今心に舞う サヨナラはただ一度の過ちなのか たとえ500マイル離れても 夜が来てまた心は求め合うのさ
THE ALFEEの名曲「星空のディスタンス」の一節だ。ディスタンスと言えばコロナ禍を経験した今どきの若者が連想するのは「ソーシャルディスタンス」だろう。否、老いも若きもと言っても過言ではないかも知れぬ。ところがどっこい、昭和ドップリ50オヤジの感覚のズレの天然ぶりは、そんじょそこらの養殖物とはワケが違う。ディスタンスは「星空のディスタンス」なのだ。(笑)
子供の頃、平日夜のテレビと言えば歌番組と相場は決まっていた。「ザ・ベストテン」、「歌のトップテン」など記憶に残っているが、いずれも視聴者リクエストで票数を競い順位を決める番組だった。毎週、順位の入れ替わりに一喜一憂しては翌日学校で共通の話題で、共通の感情で盛り上がる。今では考えられないコミュニケーションだが、そのテレビ番組でTHE ALFEEは常連中の常連で、毎週と言ってもいいくらい彼らの歌を聴いていた。
星空のもと引き裂かれるカップルに隔たるのは500マイル、800キロ。東京から広島までと考えれば結構な遠距離恋愛だ。歌詞の後半に「Five hundred miles 君に遠すぎて」とあるのも頷ける。競馬には残念ながら500マイルのレースは存在しないが、マイルと言えば今週メインのマイルチャンピオンシップは1マイル1600mのG1。同レースは他のG1とは異なり、距離適性(Suitability for distance)が殊の外重要なことで有名だ。では今週の格言、行ってみよう。
曰く「マイルCSは距離適性と格」。
G1レース故に格は無視出来ないが、それ以上に同レースは距離適性に気を使わなくてはならない。
例えば昨年優勝のグランアレグリアは同レース優勝までに桜花賞、安田記念を圧勝し、マイル適性が並外れていたことを物語る。また、2着シュネルマイスターもNHKマイルCを勝ち、古馬に混じっての安田記念3着などそのマイル適性を十分感じさせる過程だった。一昨年2着のインディチャンプや3着アドマイヤマーズも同様で、例を挙げたらキリがない。とにかくこのレースは圧倒的なマイル適性と格が要求されるのだ。
セリフォスの父ダイワメジャーはノーザンテーストの孫。その母スカーレットブーケは桜花賞でも人気したスピード馬で、産駒の距離適性はマイル前後が多い。母系もノーザンダンサーのクロスが入り、血統背景はかなりしっかりしている。しかし何より評価すべきは、セリフォス自身が朝日杯とNHKマイルカップの両方で1番人気に推された点で、敗れはしたがダノンスコーピオンやダービー馬ドウデュースよりも高い事前評価を受けたことだ。ライバル・ダノンスコーピオンには前走富士ステークスできっちり土をつけ、鞍上もレーンと申し分ない。
前述「星空の~」の歌の後半登場する“レジスタンス”の意味は「反乱軍」。燃え上がり、これまで勝てずにいた積年の悔しさをキッチリ晴らし、G1との恋愛を成就して欲しい。
(文:のら~り)