重箱の隅をつつく形で、時には難癖のような話まで持ち出し、人気馬の不安材料を無理矢理に探し出すことが使命となっている当コーナーにとって、宝塚記念は非常にやりにくいレースです。今、各メディアに掲載されている予想オッズを見て、2・3番人気候補となっている、ジャスティンパレスやジェラルディーナについて、その不安材料を延々と語っても何の意味もありません。

　やはり、イクイノックスについて書かなければならないでしょう。とは言っても、かなり無理があります。7戦5勝2着2回でデビューから連を外していないという、ほぼ完璧な馬なのです。特に昨年の秋以降、天皇賞（秋）、有馬記念、ドバイシーマクラシックと3連勝した内容を見る限り、余計なことを考えず、素直にイクイノックスから買いなさい、というのが常識的な馬券戦術でしょう。

　しかし、やっとの思いでイクイノックスの不安材料を見つけました。それは、同馬を管理する、木村哲也厩舎のデータにあります。このデータにお気づきでない方は意外に多いのではないでしょうか。

　先週末の中央競馬が終了した時点で、木村哲也厩舎の全成績は「16・11・11・64」ですが、このデータを西日本地区（中京・京都・阪神・小倉）でのレースに絞り込むと「1・2・2・10」と、わずか1勝しか挙げていないのです。しかも、この1勝は中京でのものであり、京都以西では勝ち星がありません。


　木村哲也厩舎は昨年も全成績が「34・23・26・109」なのに対し、西日本地区では「2・3・4・13」と僅か2勝のみに終わっています。美浦トレーニングセンターを拠点とする厩舎ですので、成績が東日本地区に偏るのは仕方がないところですが、西に遠征した際の信頼度は高いとは言えません。

　実は同厩舎は東日本地区でも、昨年は東京と中山以外では、新潟でマークした1勝のみでした。今年はまだ出走機会自体が少なく、新潟で3回出走していますが、勝ち星はありません。つまり、西に遠征した際などという話ではなく、東京と中山以外の競馬場で出走する際は信頼度が大きく下がってしまうのです。

　今回、イクイノックスが戦う舞台は、阪神競馬場です。同厩舎が得意とする東京・中山ではありません。イクイノックスほどの馬が初めての阪神競馬場を苦にするはずがない、というのが大方の見解ですが、管理厩舎におけるデータ上はこうした不安材料が存在します。

　昨年の勝ち馬タイトルホルダーは関東馬でしたし、近10年の宝塚記念では他にもマリアライト（2016年）やサトノクラウン（2017年）といった、美浦に在籍する馬の勝利もありましたので、イクイノックスは関東馬だから勝てない、というつもりはありません。しかし、木村哲也厩舎という、東京・中山以外の競馬場での信頼度が高いとは言えない厩舎が管理している馬ですので、無理矢理に不安材料として指摘させて頂きます。

（文・菅野一郎）

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