秋のＧＩ開幕戦・スプリンターズＳに、サマースプリントシリーズ優勝馬が参戦する。ＧＩＩＩアイビスサマーダッシュと北九州記念を連勝したベルカントだ。一時は不振に陥っていたが、気性面の成長と直前まで手加減なしの調教を積んだことで完全復活。ＪＲＡ重賞通算３００勝がかかる武豊騎手（４６）＝栗・フリー＝に導かれ、ＧＩ制覇を目指す。

　ＧＩでもヒロインへ。２８日の栗東トレセンで、白坂助手はベルカントを頼もしげに見つめた。

　「ここまで順調にきている。スピードはあったけど、気持ちとかみ合っていなかった。いろいろ試行錯誤して気性面がよくなってきた」

　充実の夏だった。サマースプリントシリーズ第３戦のアイビスサマーダッシュを持ち前のスピードでＶ。第４戦の北九州記念では好位で折り合って悠々と抜け出し、連勝を飾った。スランプから完全復活。シリーズ王者ともなった。

　もともと、天性のスピードでクラシック候補となった馬だが、昨年のＧＩＩフィリーズレビュー優勝後は７連敗。３走前にはダートにも参戦した。「いろいろと試しながらスプリンター色が濃いことが分かった」と角田調教師。そこで、サマーシリーズには背水の陣で臨んでいた。見直したのは調教パターンだ。

　牝馬は１週前追い切りでびっしり追って、当週の追い切りは軽めに済ませることが多いが、牡馬並みに手加減せずに追い込んだ。過去２戦は２週続けて坂路でラスト１ハロン１１秒台をマーク。この中間も２４日に坂路でラスト１ハロン１１秒８を叩き出した。必勝パターンのスパルタ調教を継続し、態勢を整えている。

　気性面の成長も復活の大きな要因だ。以前はレース前の返し馬ができないほど激しかった気性について、トレーナーは「精神的にリラックスしていい状態」と目を細める。ＧＩＩ、さらにＧＩＩＩを連勝し、夏の王者にもなった。「あとはＧＩを勝てればいいですね」。夏の女王が一気にスプリント界の頂点へ駆け上がる。（川端亮平）

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★重賞で成績アップ

　角田調教師、武豊騎手のコンビでのＪＲＡ通算成績は【６・３・３・２９】で勝率・１４６、連対率・２２０。そのうち重賞は【３・１・０・６】で勝率・３００、連対率・４００と数値が高くなる。ＪＲＡ重賞通算３００勝に王手をかけている武豊騎手にとって心強いデータで、ベルカントについて「左回りでは外に行くから、新潟（が舞台）だった昨年（５着）はアンラッキー。中山になるのはいいんじゃないかな」と説明。「胸を張って出られそうだね」と手応えを感じている。

★史上初

　角田調教師は騎手時代の１９９５年、スプリンターズＳをヒシアケボノで制しており、レース史上初の騎手＆調教師のダブル勝利がかかる。ただ「人間がイレ込んでも勝てるわけではない。それが馬に伝わってしまうから、普段通りに手を抜くことなく調整できればいい」と自然体を強調。ＧＩは、騎手として２００１年のダービー（ジャングルポケット）など通算１０勝を挙げたが、今回勝てば調教師としては開業５年目で初めてだ。

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