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今週は春の牝馬ナンバー1決定戦、ヴィクトリアマイルが東京競馬場で行われる。前走のドバイターフで2着と好走したナミュール(牝5)が参戦。管理する高野友和調教師(48)=栗=は5日のNHKマイルCをジャンタルマンタルで勝ち、2週連続GⅠ勝利を狙う。近走の充実ぶりのワケや、今回の臨戦過程について聞いた。(聞き手・増本隆一朗)
──前走のドバイターフは2着
「本当にいい競馬をして、よく頑張ってくれました。経験を積んで、どこに行ってもどっしりとしています」
──昨年のこのレースは7着。昨秋から成績が安定してきたが、何が変わってきたのか
「数字が示す通り、肉体面がしっかりしてきましたね。体力もつきましたし、筋肉のボリュームもアップしました。回復も早くなりました」
──今回は栗東トレセンに入厩してから10日間でレースに臨む。調整に不安はないか
「(昨年12月の)香港(マイル=3着)から帰ってきたときより、格段にいい体で(ドバイから)牧場(滋賀県・ノーザンファームしがらき)に帰ってきました。牧場でコンディションのチェックはできていますし、乗り込んでもいますから、どういう状況か全部、分かっています。扱う人間は代わりますが、大ざっぱに言えば環境が牧場からトレセンに変わるだけ。今や牧場とのチームプレーの時代。帰厩してから馬を見ましたが、全く問題ないとみています」
──厩舎は昨年、GⅠ2勝を含む重賞5勝。厩舎経営で大切にしていることは
「スタッフを信頼しているところです。信頼する以上、普段から技術面やフィジカル面に関して『木馬に乗りなさい。自分の体と向き合いなさい。自分を律しなさい』などと厳しい要求をしています。その分、あなたたちの言葉、感覚を信じると言っています。去年のマイルCSの共同会見で、かなり強気なことを言いました(注1)が、それは乗り手が『べらぼうにいいですよ』と報告してきたことを、そのまま伝えたまでです」
──そのマイルCSは、先日の落馬事故で他界した藤岡康太騎手が代打騎乗してV(注2)
「レース前のやり取りは今でも鮮明に覚えていますし、康太君の声はいつでも思い出せます。GⅠ勝利というのは、何事にも代えられないすごいもの。それを成し遂げてくれた騎手。彼のことを全く考えずに臨むということはないです」
──今回は東京の芝1600メートルが舞台
「右回りだと、コーナーで少し外に流れるところがあるので、左回りのほうがいいと思います。コーナーで動かしていっても、流れることなく走れますからね。舞台に不安はありません」
──今回は武豊騎手と初コンビ
「これほどの方ですし、数え切れないぐらい勝っている舞台、距離でしょうから、何も言うことはないです。いい状態でお渡ししたいです」
──GⅠ2勝目に向けて意気込みを
「素質のあった馬が、体が強くなってきたことで充実してきました。自信を持っていけると思いますし、いいレースを期待したいです」
■注1 昨年11月、マイルCSの追い切り後の共同会見に登場した高野調教師は、ナミュールについて「結果を出せる時期になってきている」「期待していただいて結構」と発言。普段は冷静に話すが、珍しく強気なトーンで表現した。
■注2 マイルCSで騎乗予定だったムーア騎手が、レース当日に落馬して背中を負傷。急きょ藤岡康騎手が騎乗することになった。初コンビとあって過去のVTRを見て綿密に打ち合わせ。レースでは直線一気の末脚で鮮やかにVへと導いた。藤岡康騎手は今年4月6日の阪神7Rで落馬、頭部と胸部を負傷。同10日に死去した。
■高野 友和(たかの・ともかず)1976(昭和51)年2月4日生まれ、48歳。福島県出身。帯広畜産大を卒業後、ノーザンファーム空港牧場勤務を経て2002年2月にJRA競馬学校厩務員課程に入学。同年7月から栗東・松田国英厩舎で厩務員、調教助手。10年に調教師免許を取得し、11年3月に栗東で開業。14年GⅠ秋華賞(ショウナンパンドラ)で重賞初勝利。6日現在、JRA通算3562戦379勝。重賞はGⅠ7勝を含む27勝。