日本調教馬として初めてＵＡＥダービーを制し、米３冠レースにも挑戦したラニが１日、栗東Ｅコースで圧巻の追い切りを披露した。内田騎手が２週続けて騎乗し、ブリンカーを着用。兄アウォーディーにも劣らない非凡な潜在能力を引き出すため、陣営は手を尽くして大一番に臨む。この日確定した枠順も、苦手な内枠に入ることはなく、個性的な３歳馬に追い風が吹いてきた。

　真っ白な額をブリンカー付きの覆面で隠したラニが、ダイナミックなフォームで砂上を駆け抜ける。栗東Ｅコース（ダート）でマークした７ハロン８７秒５は規格外。２週連続で栗東に駆けつけ、闘魂を注入した内田騎手が満足げに切り出す。

　「結構フーフーいっていたね。息切れするくらいできたのはいい。これだけやっても息の入りは早いし、タフな馬だね。前回より体がスッキリして見えるのもいい」

　みやこＳ（１３着）で走る気を見せずに終わったことから、陣営は“秘密兵器”導入を決断　した。４ハロン６４秒５で登坂後、内田騎手に乗り替わったところでブリンカーを装着。Ｅコースで序盤からハイラップを刻んだ。

　「行きっぷりが良かった」と鞍上が言えば、松永幹調教師も「動きは抜群。馬がその気になっていた」とブリンカー着用の効果はてきめん。当日もゲート裏で装着する予定だ。追い切りを木曜にしたことで、レースまでの間隔は米３冠戦と同じように中２日。臨戦過程も見直して、変わり身を促す構えだ。午後に決定した〔４〕枠（７）番の枠順も、「前回（〔１〕枠（１）番）のこともあるし、極端な内は嫌だった。真ん中の枠なら米国で走っている」とトレーナーは歓迎する。

　ラニは米国遠征時、現地で“ゴジラ”に例えられた。周囲の馬にほえて威嚇するからだ。担当の丸内助手は「自分が一番強いと思っているからでしょう。父のタピットも似た気性らしく、現地では『タピットの子なら納得だ』と言われました」と明かす。大種牡馬である父の特徴を余すことなく受け継いだ個性派だ。

　「心臓は天下一品。どのオープン馬にも負けないくらい。あとは気持ちがうまく乗っていくような競馬をさせたい」

　内田騎手が言葉に力を込めれば、「兄アウォーディーと比べても、持っているものはラニの方がすごいと思う」と指揮官もうなずく。底知れない力を秘める３歳馬ラニ。さまざまな手を尽くしたことで“その気”になれば、実績馬たちを一掃してしまうかもしれない。　（板津雄志）

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