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日本中央競馬会(JRA)の騎手で、レース中の落馬事故で入院していた藤岡康太(ふじおか・こうた)さんが10日午後7時49分、死去した。35歳。滋賀県出身。JRAが11日、発表した。6日に阪神競馬場で落馬し、頭部と胸部を負傷。関係者の話では、意識不明の状態が続いていた。中央競馬でレース中の落馬事故による死者は、2004年の竹本貴志騎手以来で20人目。
藤岡康騎手は6日の阪神7Rでスウィートスカーに騎乗。4コーナーで騎乗馬が前の馬に触れてつまずき、落馬。後続の馬と接触するような形となり、頭と胸を負傷した。担架に乗せられて病院へ搬送され、意識のない状態が続いていた。騎乗中の事故で亡くなったGⅠジョッキーは1993年の岡騎手以来。
10日に兄の佑介騎手が栗東トレセンで取材に応じ「本人の頑張りに期待するしかないというところで、僕たち家族も見守っています」と症状を明かしていた。
藤岡康騎手は藤岡佑騎手の弟で藤岡健調教師の次男。競馬学校23期生で同期には浜中騎手、丸田騎手、荻野琢騎手らがいる。2007年3月に栗東・宮徹厩舎からデビュー。当たりの柔らかいスマートな騎乗が持ち味で、初騎乗初勝利を挙げるなど、高い騎乗技術を披露していた。3年目の09年にはNHKマイルC(ジョーカプチーノ)でGⅠ初制覇。昨年はマイルCS(ナミュール)で14年ぶりのGⅠ勝利。2Rで落馬負傷したムーア騎手から、史上初めて当日の乗り替わりでGⅠを制した。「さらに頑張りたい気持ちになりました。帰って子供を風呂に入れないと」と気を引き締め、自己最多の63勝もマークした。30代半ばにして円熟味を増した手綱さばきを見せ、関係者からの信頼は厚かった。父・健一調教師の管理馬では、後方一気の末脚を繰り出したヒーズインラブで18年ダービー卿CTを勝利。喜びを分かち合った。
私生活では2020年に結婚し、昨年には第一子が誕生。女性アイドルグループ・ももいろクローバーZのファン「モノノフ」を公言して、トレセンではももクロの派手なジャンパーを着て調教に騎乗していた。騎乗馬やレース後の取材にも丁寧に応じ、多くの人から愛されたジョッキーが、帰らぬ人となった。
■藤岡 康太(ふじおか・こうた) 1988(昭和63)年12月19日生まれ、35歳。滋賀県出身。2004年に23期生としてJRA競馬学校に入学。07年に栗東・宮徹厩舎からデビュー。3月3日の中京1R(ヤマニンプロローグ)でJRA史上42人目となる初騎乗初勝利。09年NHKマイルC(ジョーカプチーノ)でJRA・GⅠ初制覇。23年マイルCS(ナミュール)でGⅠ2勝目を挙げた。JRA通算1万759戦803勝。重賞はGⅠ2勝を含む22勝。父・健一はJRA調教師、兄・佑介はJRA騎手。既婚。