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「第1回福永洋一記念」が10日、ナイター開催の高知競馬場で行われ、中央競馬の伝説のジョッキーで高知出身の福永洋一さん(61)が、長男の福永祐一騎手(33)と同レースのプレゼンターを務めた。79(昭和54)年の毎日杯での落馬負傷が原因で引退して以来、洋一さんがファンの前に現れたのは初めて。
落馬事故から31年。「お帰り!」。温かい声援と大きな拍手に包まれて伝説のジョッキーが帰ってきた。現役時代に『天才』と称された福永洋一さんが、長男の祐一騎手に付き添われ「第1回福永洋一記念」のプレゼンターを務めた。
「縁の深い高知でレースができて、父も喜んでいます。たくさんの方が拍手で迎えてくれましたので…」
意思の疎通がスムーズでない父に代わりインタビューを受けたユーイチは、感極まって声を詰まらせた。落馬事故後、洋一さんがファンの前に姿を見せるのは初めてとあって、入場者数は1263人と普段の約2倍。車いすに乗ってファンと握手。何度も手をあげて、「ありがとう」というように大きな声を発した。
高知は洋一さんが中学時代まで過ごした地。96年の全日本新人王争覇戦に出場したユーイチを応援するため同競馬場を訪れて以来、14年ぶりの里帰りとなった。
同期に岡部幸雄氏、柴田政人調教師らがいるハイレベルの世代。その中でも突出した成績を残し、70年から9年連続でリーディングジョッキーに輝いた。だが、79年の毎日杯で落馬。一命を取り留めたものの、脳挫傷などの負傷のため引退を余儀なくされた。言葉を理解するまで回復して、現在は自宅で訪問介護を受けるなどして療養中。数年前に糖尿病を患って食事制限をしているため、体重は約50キロと現役時代と変わらない。
昨夏、同競馬場のイベントに訪れたとき、レースの創設を提案したユーイチにとって「オヤジがいなければ騎手になっていない」という父の存在は特別だ。「今回、自分の中のヒーローがオヤジだったと初めて思いました。格好よかったですよ」。『元祖・天才』が31年のときを経て、息子とともに高知競馬場で新たな1ページを刻んだ。(土井高志)