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貧乏子沢山とはよく言ったもので、父は8人兄弟の下から2番目だった。上4人が女で下4人が男。産めよ増やせよの戦争末期に農家で量産された子供の一人だ。
昔は大体そんなものだったのかも知れないが、面白いことに父の兄弟は上から順番に“君が代”の歌詞が名前につけられている。一番上の姉が千代、次女は八千代。そして歌詞の通りの順番で行くと父は“コケ”になる。さすがに名前でコケはないと思ったのか普通の名前に収まったが、生前父は良く「俺は本当はコケだったんだ」などと嘘ぶいていた。
田舎だったので近所の大人で読み書きが出来る人は少なく、私の祖母は唯一字が書けた女性だったと聞いているが、本宅の古びた賞状に書かれた祖母の名前「やい」には今でも違和感を覚える。女性の名前で「やい」ってあり得るだろうか。北関東エリアは言葉遣いやイントネーションが独特で“あい”と発音するところを“え”で代用したり濁点の位置がズレて「ほとんど」と言うべきところを「ほどんと」と言ったりする。祖母の本当の名前は実は「やえ」で、祖母が生まれた時に村役場の担当者が誤ってやいと表記してしまったのが実際のところではないか…というのが私の解釈だ。そういえば小学校の時に仲の良かったWは「俺のばあちゃん、フナって言うんだぜ」と自慢していたがこれも何かの間違いであって欲しい。(笑)
私の卒論まで読んだ祖母だが、彼女を思い出す度にモノ書きが好きな自分の性格のルーツを彼女の読み書き能力に求める自分がいたりする。そして競馬の世界にもまた“世代を遡って勝ち馬を探る”格言が存在する。
今週メインの一つ武蔵野ステークスは、そんな格言から勝ち馬を予想してみたい。
曰く「ダートは母系3代前の血統を見よ」。
私が競馬を始めた今から40年前、種牡馬として大活躍していたのはノーザンテースト。父ノーザンテースト、という馬を買っておけば大体間違いなかったこの時代、ダートで力を発揮していた血統は、母の父トウショウボーイだ。
父ディープインパクト、という若馬が少なくなった今日、血統を見る際にどうしても目が行くのは母の父ディープインパクト。一昔前に一世風靡した血統が母系にしっかり入っている馬は、当代のダート戦で活躍するということが多い。武蔵野ステークスも例外ではない。
アドマイヤルプスの母はカールファターレ。その父キングカメハメハは一時代を築いた大種牡馬だ。更にカールファターレの母エルフィンフェザーは、父サンデーサイレンス、母ダイナカール(その父ノーザンテースト)と、日本の近代競馬を盛り上げた超豪華血統の集合体の様な配合だ。アドマイヤルプス自身がこれまでに上げた全5勝は1400~1800mに集中し、府中マイルも【1,3,0,2】と好相性だ。
同馬がセン馬でその血を後世に継承できないのは残念だが、受け継いだ能力を発揮すれば、人気馬に一泡吹かせるシーンがあっても不思議ではない。
(文:のら~り)
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このニュースへのコメント
のら〜り
daikiさん、コメントありがとうございます。(^^)大樹と金太郎とでは大分違いますね。名前って難しいですよね…(笑)
2022年11月9日 19:52
垣本大樹
今週も面白かったです。だいぶ時代はちがいますけど、私の名を大樹(父)にするか、金太郎(父以外)にするかでずいぶん家族で揉めたようです。前者に丸く収まってよかったと思います。
2022年11月9日 9:22