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フェブラリーSでGⅠ馬の仲間入りを果たしたレモンポップ。担当する田端誠調教助手(45)は大井競馬の元トラックマンという異色の経歴の持ち主だ。
「競馬が好き、馬券が好きという気持ちが強くて、競馬の世界に携わろうと思いました」
念願のトラックマンとして仕事に励んでいたが、次第に「現場の方が夢があるな」と競走馬を扱う仕事に魅力を感じ始めた。さらに、「もしやるなら中央の方が華やかだし、目指すならトップになりたい。GⅠのパドックで馬を引いてみたい」と夢がふくらんでいった。その後、牧場での勤務を経由して、当時の年齢制限ギリギリとなる28歳でJRA競馬学校を受験して見事合格。以来、身を粉にしながら素質馬を手塩にかけて育ててきた。
レモンポップもその内の一頭だ。フェブラリーSではこれまでの主戦・戸崎圭太騎手から坂井瑠星騎手に乗り替わりとなったが、実は田端助手にとって坂井騎手とは浅からぬ縁があったという。「坂井騎手のお父さん(英光氏)が大井の騎手(現・調教師)で、トラックマン時代に取材していました。人の縁を感じましたし、流れが来ているなと思いました」。
その予感通り、好位から押し切る横綱相撲でGⅠ初制覇。「坂井騎手のお父さんからレース後にすぐ電話があって、喜んでくれていました」。さらに、大井でデビューして親交が深い戸崎騎手にも祝福を受け、「〝心の底からうれしいよ、おめでとう〟と言ってくれて。今回の喜びはそこにもありますね」と振り返った。
〝GⅠのパドックで馬を引いてみたい〟という夢をかなえただけでなく、GⅠタイトルまで手に入れた田端助手。
「こうしてGⅠ馬に携われて、助手冥利に尽きます。馬が好きでこの仕事を始めて、やりたいことができている。すごくやりがいがあります。現場は楽しいですし、毎日が充実していますね。それにレモンポップは間違いなく種牡馬になる血統。その子供を担当できたらと思うと、楽しみで仕方ないですね」。
新たな夢を抱いた世話役の表情は、うらやましさすら覚えるほど輝きに満ちていた。(綿越亮介)