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ボクシングの選手紹介アナウンスの抑揚で次の文を読んで欲しい。
「うでのか~く、ひゃ~く、に~じゅうど~!(腕の角、120度)。クローズユアア~イズ!(Close your eyes)オ~ンニュアマ~ウス!(On your mouth)ヤ~ング、ファイッ!ファイッ!ファイッ!(Young fight!fight!fight!…)
湧き上がる歓声。喉を突き抜けるビール。飲み終わったら空のジョッキを頭の上に素早く置いてガッツポーズ。その間抜け面は想像するだけでも恥ずかしいが、何を隠そう若き日の私の姿だ。渋谷の飲み屋で隣り合わせた他大の学生と、互いのその日の飲み代を賭けて一気飲み対決するのが流行りだった。店の迷惑も考えず椅子の上に立って勝負。飲んだ後、空になったジョッキを頭の上に置くまでが一連の競技で、審判はどちらが速かったかをジャッジする。勝った方は勝者がそのまま第2戦に挑み、負けた方は次鋒が登場。勝ち抜き式で3人勝ち抜いた方が勝ち。因みに私はいつも先鋒だった(笑)。バブル世代最後の申し子である我々が大学生だった頃、日本の将来など1ミリも考えずに毎日こんなことばかりやっていた。であるからして、今の日本が国際社会で勝てる国になどなっていようはずもなく、若い人達にはひたすら謝る以外ない。あの日、すれ違いざま私に「どけ、ワケ若造!」と吐き捨てた店員さんにもこの場を借りてお詫びしたい。貴方は正しかった。
社会人になっても速く飲む習慣はなかなか抜けず、職場の上司との飲みではいつも最初の数杯をあっという間に飲み干した。昭和社会人特有の、春の天皇賞の様な長丁場の飲みには耐えられず、何度もトイレに駆け込み翌日は雨上がりのミミズの様に伸びていたものだ。
速ければ得をするのは往々にして若い時に多いもので、年齢を重ねると人間社会ではジックリ時間をかけるべき局面が必ず出てくる。それは競走馬の世界でも一緒で、デビュー間もない右も左も分からない2歳戦では、ポンと出て先頭を切った馬がそのままゴールということが少なくない。今週メインの1つ、ファンタジーステークスはそんなスタートダッシュ絡みの2歳戦格言で攻めてみようと思う。
曰く「2歳戦はとにかく先行を狙え」。
同レースが阪神に移設されてからの2年、3着以内馬6頭の「当該レース前走までの道中位置取り」を調べたところ、6頭が走った合計14戦のうち10戦は道中6番手以内をキープしており、「前走」に限れば6頭中5頭が道中ずっと6番手以内だった。
アロマデローサは7月小倉デビュー。2歳戦において有利この上ない2月早生まれで、レースVを見る限りこれまで2戦、いずれもゲートをフワッと出て先団につけ、直線抜け出す古馬の様なレースぶり。しかも前走レコード勝ちのおまけつきとくれば、人気でも逆らう手はなかろう。
ポンと出て、フワッと好位につけ、ビュンと抜け出し、ヒュンとゴール。絵に描いたような先行抜け出しで週末の晩酌に一品付け足す資金を運んで欲しい。
(文:のら~り)