実はこれが最後の「世代限定１２００ｍ重賞」となる、小倉２歳ステークス。現在、世代限定の１２００ｍ重賞は函館２歳Ｓと小倉２歳Ｓの２レースしかなく、現２歳馬が出走可能な１２００ｍ重賞は、おそらく来年６月に施行されるはずの函館スプリントＳということになる。

これは現２歳に限った話ではなく、２０１１年以降はずっと、そうなのだ。２０１１年までは３歳３月のファルコンＳが１２００ｍだったのだが、同競走は２０１２年に１４００ｍとなり、現在このような形に。

さらに言うなら、オープン特別まで含めても、世代限定の１２００ｍ戦は２歳１２月のクリスマスＳが最後。そのあとは翌年６月まで否応なしに距離延長を求められることになる。これが近年、短距離重賞のレベルが低下している大きな要因なのではないかと思われる。スプリンターが、スプリンターのまま育つことが許されていないのだから。

ラップを見ていると一目瞭然なのだが、中距離とマイル、スプリント戦はまったくの別物。スプリンターはスプリンターとしての才能を伸ばすべきであって、すべてのスプリンターに距離の克服を強いるレース体系は、残念だとしか言いようがない。

無意味な距離延長で輝きを失っていったスプリンターが過去にもどれだけいたことか。スプリントで強い馬はマイル以上でのレースを覚えさせるべきではないとさえ考えているだけに、現在の２レースしかない世代限定１２００ｍ重賞の数には大いに疑問を持っている。

距離をこなせるところを見せないと、種牡馬としての価値が上がらないという意見もあるのだろう。それでは１４００ｍ以下なら１２戦１１勝だったのに対し、１６００ｍ以上では９戦０勝だったサクラバクシンオーが、種牡馬として後世に示したものは何だったのか。

小倉２歳Ｓの勝ち負けがクラシックに結びつかないのは当然のこと。それは小倉２歳Ｓのレベルが低いからではなく、適性の問題。２０年前ならまだしも、さすがに今の時代、１２００ｍで強い馬が２４００ｍでも変わらず強いと思う人はいないだろう。

同じ１２００ｍでも、函館２歳Ｓよりも数段厳しい流れになる小倉２歳Ｓの勝ち馬は、できればずっと１２００ｍだけを走り続けられるレース体系であってほしい。それが叶わぬ現状は、小倉２歳Ｓが世代最高峰、スプリンターにとってのダービーということになる。



ということで、スプリンターにとってのダービーと銘打った小倉２歳ステークス。数ある３歳重賞の中でも最低レベルの重賞だと思われがちなレースだが、それ相応にレベルは高い。同日札幌の１２００ｍオープン特別・すずらん賞とは比較にならないぐらいだし、テンからガンガン飛ばすレースでこそ輝ける、ナチュラル・ボーン・スプリンターがその後あまりパッとしないのは、適合するレースに恵まれていないからだ。

たとえばこの小倉２歳Ｓ、歴代の勝ち馬に課せられたハードルはかなり高い。まず第一に「前半３ハロンを３４秒ソコソコで先行できること」が条件。それでいて４コーナーでは減速するだけではなくもうひと加速できる脚。スローペース化が進む現代競馬に於いては、まず「３４秒ソコソコで先行する」競馬を見せること自体が難しいのだが。

しかもそれだけではない。過去２０年の勝ち馬一覧を見ると、２０頭すべてが前走「上がり３ハロン２位以内」だった。もう少し具体的に書くと、前走前半３ハロンを３４秒４以内で先行し、ラスト３ハロンを２位以内で上がってくること。

かなり厳しい条件なのだが、現実に過去の小倉２歳Ｓは、そういった馬ばかりが勝っている。この条件に漏れるのは２０１１年エピセアロームと２０１５年シュウジの２頭しかいない。これは過去１０年、２０年に限らず、２９年前の１９８６年以前からも、ほとんど変わっていない傾向なのだ。

例年、その条件に適合する馬は１頭か２着、多くても３頭ほどだったのだが、今年はそれが５頭も存在する。
(３)カシノマスト
(４)レーヌミノル
(６)シゲルベンガルトラ
(11)メイソンジュニア
(13)キョウヘイ

しかし５頭のうち４頭は牡馬であり、牝馬は１頭だけ。夏は牝馬。そう、ここは
２００１年　単勝１０７．８倍　１着　タムロチェリー
２００２年　単勝　６４．９倍　１着　メイプルロード
２０１４年　単勝１２０．２倍　１着　オーミアリス
などの例を持ち出すまでもなく、牝馬を買うべきレースである。しかも前走が１８００ｍだったタムロチェリーは別として、メイプルロードもオーミアリスも条件を満たしていることが恐ろしい。

ということで、先に挙げた５頭のうち、唯一の牝馬である(４)レーヌミノルを本命に推奨。そう、ミノルだけど(４)レーヌミノルは牝馬なのである。馬主の吉岡實（みのる）さんは、牡馬にはミノル、牝馬はクィーンと付けていたのだが、現４歳世代から牡馬も牝馬も全部ミノルになってしまった(笑)

(４)レーヌミノルは人気になりそうなのが、「荒れる小倉２歳Ｓ」としてはちょっと残念なところ。単勝１００倍級の大穴を狙うなら、惜しいところで条件から漏れた牝馬・(１)ビーカーリーかな。仮にここは厳しいとしても、この馬は年内１２００ｍ戦に出てきたら要注意。



※印や金額は発走の約１時間前に確定。それまでは変更の可能性があります。
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