かしわ記念は帝王賞のトライアルレースですが、格付けがJpnⅠだけあって、G1ウイナーが多く参戦します。しかし、意外にもこのレースは、2010年のエスポワールシチー以降、1番人気が未勝利という歴史があります。なぜ、1番人気が勝てないか？　その1番人気の大半が同年のフェブラリーＳの優勝馬だからです。

　近年、フェブラリーＳとこのレースを連覇したのは、前記のエスポワールシチーと2014年のコパノリッキーのみだから、当然と言えば当然かもしれません。2019年のインティのように、同年のフェブラリーＳを逃げ、先行して優勝した馬はここでも2着、3着を拾ってくることも少なくありませんが、2018年のノンコノユメや2020年のモズアスコットのように、同年のフェブラリーＳを差して優勝した馬はことごとく人気を裏切っています。

　そこで◎には、昨年の東京大賞典で2着、今年の川崎記念で1着の(6)カジノフォンテンを推します。同馬が経由した東京大賞典、川崎記念は、チューワウィザードが不出走だったこともあり、例年と比べると見劣りしますが、マイル路線のここなら上位。今年のフェブラリーＳを優勝したカジノフォンテンがお疲れさま状態ならば、ここは有力でしょう。

　カジノフォンテンは逃げて上昇軌道に乗った馬ですが、それは体力がついたからそういう競馬をしてきたのであって、昨年の京成盃グランドマイラーズなどでは、折り合う競馬で勝利しています。それに東京大賞典も川崎記念も逃げてはいますが、折り合いがついています。今回は何でも逃げたいサルサディオーネやワークアンドラブが競り合ってぺースを引き上げる可能性が高いですが、それらに行かせて、自分のリズムの競馬で上位争いを期待します。

　○は、重賞初挑戦で相手が大幅に強化された3走前の武蔵野Ｓで2着と好走した(11)ソリストサンダー。3走前はスタート地点の芝で置かれて、中団外からの競馬となったものの、超絶ハイペースでレースが流れたことでやや展開に恵まれ、一気に突き抜けるかと思わせる瞬発力を見せました。結果的に外からサンライズノヴァに差されたものの、鞍上が内に刺さるのを修正したのもあって、伸びあぐねた面もあります。前走のフェブラリーＳは、内が極端に軽いダートで内を立ち回った馬が上位を独占した中、3～4コーナーで外々を回るロスが応えて8着凡退。不完全燃焼でここへ向けて余力を残す形となっただけに、ここで変われても不思議ありません。また、今回も速い流れになりそうなのも、外から動けるソリストサンダーにとって好都合でしょう。

　▲は、休養明けの前走、フェブラリーＳでは先行抜け出しで優勝した(3)カフェファラオ。前走は内目を上手く立ち回ったにせよ、速い流れを前から押し切ったのは立派。ただし、休養明けで大幅にパフォーマンスを上昇させた辺りから、今回は反動が出る可能性が高いと見て、対抗評価としました。また同馬はユニコーンＳやシリウスを優勝していますが、どれも芝スタートコース。特に昨年のユニコーンＳでも5馬身差の圧勝を収めているように、「芝スタートコースのマイル戦がベスト」という馬なので、そういう要素でも勝ちきれない可能性はあります。

　以下特注馬として、一昨年の秋にダート路線に転向し、同年の武蔵野Ｓで2着、昨夏のエルムＳでは、2着ウェスタールンドに2馬身差をつけて完勝した(1)タイムフライヤー。その次走、休養明けで挑んだ武蔵野Ｓでは5着敗退しましたが、同レースは差し、追込馬が上位独占という結果で、中団追走でもやや厳しい展開でした。それで勝ち馬と0.4秒差なら悪くありません。また、前走のチャンピオンズＣでは、8着に敗れましたが、これは武蔵野Ｓが馬体重14kg減だったために、調教をセーブし、馬体回復に努めた影響もあったでしょう。前走の根岸Ｓでは、2F距離短縮ながら3着と善戦し、復調気配を見せているだけに、ここは注意が必要です。

　あとは△に、昨年はマリーンＣとクイーン賞を制した(2)サルサディオーネ。前々走のエンプレス杯では、骨を切らせて肉を断つ緩みないペースで逃げ、3着馬マドラスチェックに6馬身差を付けての2着。勝ち馬マルシュロレーヌが記録した指数は、今年の川崎記念と同等で、カジノフォンテンに大きく見劣りしない実力があります。逃げ馬は一戦の消耗度が大きく、二連続好走が難しいものですが、それでも前走のマリーンＣで3着を死守したのは、地力強化の現れでしょう。今回もただ行くだけですが、ワークエンドラブと競り合う形になる可能性が高いので、下の評価としました。

　他では昨年のこのレースの覇者(8)ワイドファラオ。昨年はフェブラリーＳでアルクトスと競り合って、オーバーペースで逃げて厳しい競馬をしたことで持久力が強化され、ここに繋がりました。同馬は今年のフェブラリーＳでも逃げてはいるのですが、昨年ほど強烈なペースで逃げていないことと、昨年のこのレースよりも前が厳しい流れになりそうなので、狙い下げました。

　あとは△に一昨年のフェブラリーＳの覇者で、このレースでも2着の実績がある(10)インティ。同馬は気性に問題があって逃げているのではなく、スピード不足だから逃げているタイプ。日本レコード決着となったマイルＣＳ南部杯で9着に敗れたように、高速決着のマイル戦は合いません。しかし、前走のフェブラリーＳのように、位置にこだわらず無理なく追走できれば善戦はしてこれると見て、買い目に加えました。陣営も「前走は収穫があった」とコメントしているので、ここは差す競馬をしてくると見て、買い目に加えました。