■過去10年で逃げ馬の複勝率50％

　エプソムＣが行われる東京芝1800mは1～2角の間にあるポケットからスタート。最初の2角までの距離が約150mですが、2～3角までの距離は約750mもあるため、先行争いがさほど激しくならないことが多いもの。今回は逃げ馬がトーラスジェミニ、ノースブリッジの2頭のみ。またその2頭も折り合うことが可能な馬です。

　一方、差し、追い込み馬は12頭中7頭というメンバー構成。その他、先行馬も流動的な馬が多いだけに、今年は前が残る可能性も十分にあると見ています。ただトーラスジェミニが逃げ切るには、天気予報どおりに本日、もうひと雨降ってもらいたかったのも確か。雨が降るのを待っていましたが、降らないようなので、そのさじ加減も考慮して予想を組み立てたいです。


　■有力馬のコメント

　◎ (8)ガロアクリーク

　3歳春の芝1800m戦・スプリングＳを優勝すると、続く皐月賞ではコントレイル、サリオスに次ぐ3着となった実績馬。3歳秋もセントライト記念で3着するなど力のあるところは見せていましたが、昨年のエプソムＣでは脚部不安もあり12着に惨敗しました。

　しかし、今年初戦となった前々走の中山記念では、長期休養明けながら4着と好走。同レースは3番枠からまずまずのスタートを切り、そこから無理せず折り合い重視で位置を上げ、後方の内目を追走。3角で後方集団の内目から中目、4角で外に出して直線は外からジリジリ伸びました。後にドバイターフを勝つパンサラッサが逃げて前を潰したことで、展開には恵まれましたが、力が衰えていないことを証明する走りでした。

　前走の都大路Ｓは6着と着順は悪いですが、スローペースを意識して好位の外を追走し、勝ちにいってのもの。内容はそこまで悪くありませんでした。また前走は最後の直線で伸びそうで伸び切れておらず、いかにも長期休養明けで好走した直後の、疲れが残った馬が直線で見せがちな姿でした。

　今回は重賞勝ち実績のある芝1800mが舞台。当然、前走を叩かれて状態は良くなっているはず。先週の鳴尾記念ではスプリングＳで降したヴェルトライゼンデが復活の優勝。安田記念でもサリオスが3着好走と、この流れに乗りガロアクリークも復活の好走が大いに期待できます。


　○ (10)トーラスジェミニ

　不良馬場で行われた2020年のエプソムＣで3着した馬。2021年は重馬場だった東風Ｓを勝利し、安田記念5着、七夕賞を優勝した実績があります。今年に入ってからは着順の悪い大敗が続いていますが、3走前の中山記念は勝ち馬パンサラッサに付いて行って失速。前々走の黒船賞は初ダートで惨敗は仕方ありません。

　前走のダービー卿CTは先行馬に厳しい流れ。それを向正面から動き、3角では2番手のサトノフェイバーの外まで上がり、4角では先頭のリフレイムに並びかけていく競馬。サトノフェイバーが勝ち馬と4.4秒差の16着、リフレイムが勝ち馬と1.4秒差の15着に敗れたなか、トップハンデ57.5Kgを背負い、勝ち馬と0.8秒差と大きく崩れなかったところに復調気配を感じました。

　今回は得意の東京芝中距離戦。今回有力視されている馬たちは、馬場状態、スタミナ面に不安を抱えている馬が多く、それらはなるべく脚をタメたいはず。一方、トーラスジェミニは道悪でも実績があり、スタミナ面にあまり不安がない点が強調材料。本日ひと雨降れば、同馬の本命も視野に入れていましたが、得意馬場の優位性が生かせないので対抗評価に止めました。


　 ▲ (2)タイムトゥヘヴン

　前々走のダービー卿CTで初重賞制覇を達成した馬。同レースは外差し馬場で、逃げたリフレイム、その外から競り掛けて行ったサトノフェイバーが15、16着に沈む展開。この馬は3番枠から出遅れ。最後方付近から3角をロスなく回り、4角で外に出されるとジリジリ伸び始め、ラスト1Fで前をまとめて差し切りました。展開に恵まれたが、自己最高指数を記録しました。

　通常なら激走の疲れが残って次走で崩れるのが一般的。しかし、同馬は前走の京王杯スプリングＣでは1Fの距離短縮にも対応、3着と善戦しました。能力を出し切った直後の一戦ながら好走したとなると、かなり力をつけていると高く評価できます。この勢いなら今回はかなり有力と見るべきでしょう。

　ただ、少し気になる点もあります。それは同馬はもともと中距離を先行し、好成績を挙げていたこと。しかし、マイル戦を主戦場としてからは、脚をタメて瞬発力を生かす競馬で好走してきました。そのことから、距離が短い方が良い馬に変貌してきている印象があります。

　今回の舞台は東京芝1800m。タフな馬場にならなかったのはこの馬にとって好都合ではありますが、今回は12頭立てと重賞としては少頭数だけに、勝ちを意識して前目でのレース運びになることも考えられるでしょう。そうなるとよりスタミナが必要になり、そこにやや不安を感じるため、3番手評価としました。


　△　(5)ダーリントンホール

　デビュー2戦目の札幌2歳Ｓで3着、そして東京芝1800mの共同通信杯を制した素質馬。その後は皐月賞、日本ダービーにも出走しましたが、そこでは結果を出せず。また、ノド鳴り手術などで2度に及ぶ長期休養を余儀なくされました。しかし、今年は洛陽Ｓ2着、ダービー卿CT3着と安定した走りを見せています。

　同馬はスタートが遅く、二の脚でも置かれ気味になる面があります。前々走の洛陽Ｓでは序盤のペースが遅かったこともあり、2番枠から好発を切り一旦は2番手から外の馬に行かせ、好位の最内を追走する形。4角で外に出されると、そこからジリジリ伸びて2着。ラスト100m辺りで先頭に立ったところで、外からエアファンディタに差されましたが、しぶとい粘りを見せました。

　前走のダービー卿CTは、10番枠からスタート後に内の馬と接触し、狭くなる場面がありましたが、そこから少し盛り返して中団の中目を追走。ラスト1Fでは一旦2番手まで上がったものの、外の2頭に差されました。前走は外差し馬場、前半で出遅れを挽回するのに脚を使ったことと、最後の直線で勝ち馬タイムトゥヘヴンよりも前から動いたことは評価できます。

　しかし、この馬はゲートが不安定なところが弱点。スタートを決めたときは、共同通信杯や前々走のように好走することが多く、能力、適性ともに申し分ありません。しかし、前有利な展開になる可能性が高い今回は、評価を下げる必要があるのも確かです。


　△ (12)ザダル

　デビューから3連勝でプリンシパルＳを勝利した素質馬。古馬になってからも、芝1800mの関越Ｓを好指数勝ち、昨年のエプソムＣで初重賞制覇を達成しました。

　昨年のエプソムＣは馬場の内側が悪化していたため、中団列が外に広がって行く流れ。同馬は15番枠でしたがまずまずのスタートから上手く中目のスペースを拾い、中団中目を追走。直線序盤で外に出されると、そこから一気に抜け出し、ラスト1Fで先頭に立っての優勝でした。

　また、今年の京都金杯も7番枠から出遅れ後方からの競馬となりましたが、中団中目の後ろぐらいまで位置を挽回。最後の直線序盤でも馬群の狭い間を割り、ラスト100m辺りから抜け出し優勝。能力面に衰えはないように見えます。

　しかし、前走のダービー卿CTは10着敗退。スタートが悪く、中団馬群に突っ込んでいくような競馬で、最後の直線でも馬場の良い外に出せなかったのは敗因のほとつとしてはあります。ただ、前走はタイムトゥヘヴンの直線外一気が決まったように、追い込み馬に有利な流れではありました。

　サダルは4角で前の馬との間を詰め過ぎ、少しブレーキをかけたことで、最後の直線で勢いをつけきれなかった面もありましたが、それを考慮しても、もう少し走れても良かったはず。巻き返して当然の実力馬ではありますが、過大評価も禁物でしょう。


　△ (11)ジャスティンカフェ

　昨秋の1勝クラスを休養明けながら好指数勝ち、能力の高さと成長力を感じさせた馬。その後はやや疲れも出たようで、成績がすんなりとは伸びませんでした。しかし、ここに来て疲労も抜けてきたのか、グングン上昇。

　前走の湘南Ｓは14番枠から五分のスタートを切ったものの、二の脚が遅く後方2番手からになりました。そこから折り合い重視で乗られ、4角で外を回って直線序盤で大外に出されると、ラスト2Fで一気に突き抜けました。重賞通用レベルの指数で3勝クラスを突破です。

　今回も前走同様に走れるなら、当然チャンスは大きいもにがあります。しかし、前走は脚をタメにタメて爆発させたレース内容。瞬発力の素晴らしさは証明しましたが、スタミナ面は未知数な部分が残ります。本日、馬場が悪化しなかったのは同馬にとっての好材料ですが、前走から距離が延びるのは好ましくないはず。

　多頭数で人気がないなら後方でスタミナの温存も可能。しかし、今回は現時点で1番人気となると、ある程度は勝ちを意識した競馬をせざるを得ません。その時は前走同様の走りができるかは不透明です。能力は高く、将来的に活躍が期待できる馬ではありますが、今回は試金石の一戦でしょう。


　△ (3)コルテジア

　一昨年のきさらぎ賞では7番人気とブービーながらも番狂わせの勝利を飾った素質馬。同馬は時計の掛かる馬場状態で行われた京都芝1800mの未勝利戦を逃げ切り勝ちしていることから、距離延長はプラスと見ていましたが、きさらぎ賞でもあっさりと勝ったことには驚かされました。

　前走の日本ダービーは、「超」がつくほどまでではなかったにせよ、高速馬場の2番手を追走して12着に失速。これはさすがに距離が長かった面もあるでしょう。先週の鳴尾記念では、同馬と同世代のヴェルトライゼンデが1年4ヵ月ぶりの休養明けで勝利しましたが、同馬も長期休養中に成長していればチャンスがありそうです。


　△ (6)ノーズブリッジ

　前走のアメジストＳでは、4番枠から好発を切ってハナを主張しての逃げ切り勝ち。極端にペースを落とさずに平均ペースで逃げ、最後の直線で馬場の良い外に出しての逃げ切り勝ちでした。

　今回はそこから4ヵ月ぶりの休養明けの一戦。前走で自己最高指数を記録した後の一戦となるので、能力全開とまではいかないでしょうが、展開の後押しがあれば上位争いに加われそうです。