主役不在と言われるとこが多い近年のマイル路線だが、この１年はそれが特に顕著。実は去年の安田記念以降、１８００ｍ以下の古馬重賞は１番人気が35戦２勝、勝率６％という成績（回収率１６％）。

スワンＳのミッキーアイルと、ダービー卿ＣＴのモーリス。この１年、１番人気で勝っているのはこの２頭だけなのだ。通常、１番人気の勝率は約32％。ならばこの安田記念も、流れに沿って１番人気を嫌ってみるべきか？

安田記念はマイルＧ１の中でもかなりペースの上がるレース。ここ１０年のレースペースを比べてみると、実はマイルチャンピオンシップよりも速い。ＮＨＫマイルカップも３歳にしては大概速いのだが、安田記念のペースはそれよりもさらに速い。だから安田記念過去１０年は瞬発決着１、平坦決着９の（東京芝１６００ｍとしては）イレギュラー・レースとなっている。

さすがに瞬発力不要とまでは言わないが、ハイペースからの持久力がベース、どちらかと言うとそれを後ろから差してくるのが良い。人気どころでいうと、(２)ダノンシャークと(13)ヴァンセンヌは「瞬11平４消０」、「瞬６平２消０」のラップギア適性値から持久力に難あり、(５)ミッキーアイルは差し脚に見劣る印象だ。

そうなると残る人気馬は(６)モーリスと(10)フィエロの２頭ということになるのだが、あーやはりこの２頭が１番人気を争うのか。……と言うか、ここは(６)モーリスのダービー卿ＣＴについて語るのが先か。

映像的にも衝撃的だった(６)モーリスのダービー卿ＣＴは、ラップ的にも破格。
12.3-11.5-11.8-11.1-11.3-11.6-11.7-10.9
しかしラスト１ハロンの１０秒９、ここだけに着目しても特に破格ではないのだよね。たしかに滅多に見られないものではあるものの、たとえば

２００１年　轟Ｓ　エイシンコジーン
11.9-10.2-11.3-10.1-10.7
２０１２年　山吹賞　エタンダール
13.7-12.9-13.5-13.7-13.7-13.4-13.1-12.8-12.0-10.8-10.5

もっと速いラスト１ハロンだって存在するし、何よりラスト１ハロンが１０秒台だった馬はその後活躍しているかと言うと、それがそうでもない。まー平均よりは上だけど、「その数値を記録＝スーパーホース確定」ということはナイ。

でもね、こういうラスト１ハロン１０秒台のレースって大抵が超スローなの。そして、そのほとんどが新馬戦（新馬戦はスローになりやすい）。そういった意味ではおそらく史上初めて（少なくとも１９８６年以降では初めて）オープンクラスの（スローではない）流れで１０秒９を記録したモーリスに対しては一定の評価が必要なのではないかと。あと、ついでに言うとこの馬はダートは鬼のように走ると思う。それこそクロフネのように。

それで、その「一定の評価」がどれぐらいかと言うと、Ｇ１を勝てるぐらい(笑)　クロフネのダービー挑戦のような、瞬発力勝負なら二束三文だけど、持久力勝負の安田記念、実はマイルチャンピオンシップよりも厳しい流れになる安田記念ならアリなのではないかと。

問題は例年の安田記念ペース、これが(６)モーリスが今までに経験したことのないペースだということ。しかしこれも瞬発系の馬なら大きな不安材料（というか即消し材料）にもなるのだが、むしろ(６)モーリスにとってはペースが上がれば上がるほど好都合なのではないかと。この辺りは前年の◎ジャスタウェイと同じ論調で。

ということで、本命は(10)フィエロではなく(６)モーリス。あと、気になる一頭が(３)ダイワマッジョーレ。だってこの馬、前哨戦の京王杯ＳＣで１番人気だったんですよ。で、ソコで０．３秒（１馬身ちょっと）届かなかっただけで、単勝２３倍の９番人気想定はオカシイんじゃないかと。

ただ、クラシック戦線の穴馬は「前哨戦を人気で負けた馬」なんだけど、古馬Ｇ１はまたちょっと違う。正体不明感がつきまとい、ニューヒーローに目移りしがちなクラシック戦線と違い、古馬Ｇ１はある程度正体の割れたメンツ。

実績馬の人気が薄いときは、人気が薄い理由があるはずだから（誰の目にもデキが良くないとか）。そう言えば前年安田記念も、京王杯ＳＣを１番人気で勝った直後にも関わらず単勝１８．７倍の６番人気だったかな（９着）。(３)ダイワマッジョーレこれが適正な評価なのかも。ウン、やっぱり(６)モーリスだな。



※印や金額は発走の約１時間前に確定。それまでは変更の可能性があります。