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【QE2世C】展望コラム~クルーズ2騎に奇跡の香港ダービー馬、サンデーレーシング2頭に“待った!”

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【QE2世C】展望コラム~クルーズ2騎に奇跡の香港ダービー馬、サンデーレーシング2頭に“待った!” | コラム | ウマニティ

ウマニティ会員の皆さん、ご無沙汰をしました。甘粕代三です。香港競馬春の祭典は今年から装いも新たに「チャンピオンズカップ・デー」となり、昨年までは2週に分けて行われていたG1 3レースが今年からは同日に行われることになりました。12月の香港国際競走に並ぶフェスティバル開催です。これは長くクイーンエリザベス2世カップをスポンサーしてきた高級装飾時計メーカー、オデマピゲとの交渉がまとまったから実現したことです。香港ジョッキークラブ職員にとっては繁忙期が一週で済むようになって歓迎かもしれませんが、我々メディアの人間にとっては盆と正月がいっぺんに来る忙しさに見舞われて嬉しい悲鳴を上げなくてはいけない事態となってしまいました(笑)

さて、日本から出走した3頭に関しては日本メディアが詳しく紹介していることでしょうから、このコラムでは香港馬を中心にご紹介したいと思います。その前に一つ重要なことをお伝えしなければなりません。
一昨年の凱旋門賞から始まった海外馬券ですが、今週はG1 3レースの内、2世カップしか発売されません。海外馬券発売が実現できたのは2015年4月に競馬法改正が国会を通ったからですが、その時には日本馬が出走する海外G1レースが発売の条件と聞いていました。ですからファインニードルが出走するチェアマンズスプリントプライズは当然発売されると思っていましたが、さにあらず。これはおかしいと調べてみたところ、改正競馬法には発売可能な海外G1レースが列挙されていますが、チェアマンズスプリントプライズはこの中に入っていないのです。それはその通りなのですが、チェアマンズスプリントプライズはシンガポールのクリスフライヤー国際スプリントが中止になった翌年の16年、香港ジョッキークラブがクリスフライヤー国際スプリントに代わるレースとして国際招待G1に位置づけたので、改正競馬法には間に合わなかったのです。ならば、世界で今後どれだけ賞金も格式も高いG1が新設され、日本の年度代表馬が挑戦しても我々は日本国内で馬券を楽しむことが出来なくなります。

日本国内、香港でさらに聞きこんでみると信じられない話を仄聞するに至りました。JRAは上部官庁である農林水産省にチェアマンズスプリントプライズの発売を打診したというのです。しかし、カジノ法が成立して以来、ギャンブル依存症対策がけたたましく叫ばれている中、農林水産省はこの打診を一言のもとに却下。上部団体の前では猫のようになってしまうJRAは直ぐに発売を断念したというのです。真偽のほどは日本競馬界影の皇帝、裏番長である農林水産省競馬監督課長にセクハラ覚悟で夜まわりでもかけなければ分からないことですが、まことにさもありなん。
皆さん、これって世界一善良な日本の競馬ファンを馬鹿にしていると思いませんか? 命の次に大事なものを賭けるわけですから、熱くなりすぎる競馬ファンがいることは否定できませんが、日本の競馬ファンは世界の中で最も良質、最も善良であることは世界の競馬場を見てきたアタクシ、自信を持って断言できます。それをカジノ法が巻き起こしたギャンブル依存症と同列に論じられることは競馬ファンの名誉を著しく傷つけるもので、何としても承服できません。JRAには我々が世界で最も善良にして自己責任の中で競馬を楽しんでいることを農林水産省に対して主張して貰いたい。そして農林水産省は競馬に対する認識を一新して貰いたい。競馬メディアは予想だけではなく、競馬を楽しめる環境を自らの声と力で築かなくてはならないのではありませんか! そのために一石を投じた次第です。
という訳で、初の香港チャンピオンズ・デーはこれまで通りクイーンエリザベス2世カップ1レースしか情報と予想を提供できません。なんとも残念で悔しいことですが、この1レースに全力投球しますので、以下よろしくご高覧下さい。


クイーンエリザベス2世カップ
強い4歳馬、しかもノーザンファーム生産、サンデーレーシングと今年参戦のアルアインダンビュライトともこれまで以上の実力の持ち主で、先帝陛下の誕生日である4月29日、沙田競馬場で君が代とともに日の丸が掲揚される確率は相当高い、と見ています。しかしながら共に敵地、香港では初出走。アウェーの不利は認めざるを得ません。小頭数8頭立ての2世カップ、この2頭に立ちはだかる地元香港勢から有力馬3頭をピックアップ。プロフィールを紹介致しましょう。

タイムワープ
香港での人気の中心は昨年の香港カップ勝ち馬、タイムワープです。昨年の香港カップは前半800m49秒56のスローペースで逃げられた展開の利によるもの、フロックとの受け止め方が一般的でしたが、その軽視をタイムワープは2走後の香港ゴールドカップで払拭しました。香港カップと同じ沙田芝2000mを香港カップとは正反対に前半800mを47秒11のハイペースで飛ばし、1分59秒97のレコードタイムで逃げ切ったのです。
沙田競馬場の芝は日本よりも時計1つから2つ遅く、2000mはコーナーを4つ回らなくてはいけないので、2分は厚い壁と見られていました。タイムワープは香港競馬史上初めて2000mで2分を切るという歴史の新たな1ページを開いたのです。それも逃げての時計ですから、この馬の実力を十分証明したものと言えます。
その後、距離不適を承知で1600mのチェアマンズ・トロフィーに臨みましたが、道中競りかけられたことから、空前のハイペースとなり直前半ばほどで歩き始めてしまい殿負け。A.クルーズ調教師に話を聞いてみました。
「ゴールドカップから2世カップまでは2カ月あるので、距離不適を承知で使った。マイル戦であのペースで行けば潰れない方が不思議。殿負けも仕方がない。成績を悲観していない」
逃げ馬だけに自分のペースで行けなければ脆いことは香港でも同じことです。得意の2000mに戻って、小頭数の8頭立てなら容易に先手を取ることは可能。前走の成績だけでタイムワープを見ていると痛い目に合うことは間違いありません。

パキスタンスター
同じくクルーズ調教師が管理するパキスタンスターは昨年の2世カップ2着馬ですが、稀代の癖馬として香港競馬ファンの不思議な人気を集めています。デビューから追い込み一辺倒の脚質に人気が集まっていたパキスタンがその癖馬ぶりを発揮したのは、昨年の2世カップの次走、プレミア・プレートでのことでした。雷神ことJ.モレイラ騎手鞍上、単勝1.2倍とグリグリの二重丸のパキスタンはゲートを出て最後方からレースを進めましたが、300mほどで立ち止まってしまい雷神が押せども引けども動かず。これにはさすがのマジックマンも成す術なしでしたが、暫くして雷神の叱咤に応え走り始めたものの、先行集団は既に遥か彼方。勝ち馬のホースオブフォーチュンから遅れること何と! およそ1分、1800mを2分47秒10でゴールインしたのでした。
当然のことながら再調教を命じられ、今年2月25日の香港ゴールドカップから雷神騎乗で戦線復帰しましたが4着。続いてクラス1(オープン特別に相当)の格下ではM.チャドウィック騎乗で4着。前走のチェアマンズ・トロフィーでは雷神に鞍を戻したもののまたまた4着。ちょっと狙いづらいと感じながら、A.クルーズ調教師に話をきいたところ、腰が抜けるような答えが戻ってきました。
「前走のモレイラの騎乗にはがっかりした。全く指示通り走ってくれないんだ。指示通り乗っていれば勝ってもおかしくない状態だったのに! もうモレイラに乗せることはない。あいつを降ろして鞍上を強化した。今回は去年の2世カップで手綱を取ってくれたデソウサに来て貰うことにした」
さらに3頭出し(もう一頭はゴールドマウント)の内、一押しは? と確認するとさらに腰が抜けるような答えが返ってきたのです。
「パキスタンスターが一押し。デソウサはモレイラよりも腕っぷしが強い。彼ならパキスタンにわがままを言わせず、これまでのような競馬にはならない。自信ありだよ」
モレイラを降ろして鞍上強化にもびっくりすれば、タイムよりもパキスタンを押してきたのには本当に腰が抜けました。
香港ジョッキークラブが養成した地元騎手出身で騎手としても引退後調教師となってからもリーディングに輝いた香港のレジェンドの御託宣を信用しないわけにはいきません。しかし、当日のパドックにどのような状態で出てくるのか、本馬場入場、そして返し馬。この馬の取捨は発走直前まで目を離すことができません。

ピンハイスター
もう一頭のスターはピンハイスター、今年の香港ダービーで突然、天空を飾った新星です。4月24日まで既に70勝と2位に25勝差をつけてリーディングを独走するJ.サイズ調教師の管理馬ですが、J.サイズ厩舎は多士済々。今年の4歳クラシック1番馬はナッシングライクミーと見られていました。ナッシングは前評判通り第1レグのクラシック・マイルを快勝しましたが、ピンハイはこの時まだクラス3(1000万下条件戦に相当)1400mを勝ったばかり。その後、快進撃を見せクラス22(1600万下条件戦)1400m戦を連勝して香港ダービーに臨みました。
これまで手綱をとってきたJ.モレイラにはナッシングがいたため、この日はイギリスからR.ムーアを呼んで初騎乗。サイズ人気かはたまたムーア人気、ナッシングに続く単勝5.2倍に支持されました。この日は香港で観戦したのですが、1400mしか勝ち星がなく、1600mでは敗れているため軽視いたのですが、これはとんでもない見当違いでした。
ダービーでは何と最後方からレースを進め、直線中ほどで三冠第2レグ、クラシック・カップ(芝1800m)勝馬のシンガポールスリングが抜け出した刹那、大外から強襲して香港ダービーの栄冠を射止めたのです。沙田芝2000mはコーナーが4つ、直線も東京競馬場ほど長くなく、最後方強襲には極めて不適です。随分長く香港の競馬を眺めてきましたが、G1の大舞台でこれをやってのけたのは、やはりR.ムーア騎乗が騎乗した12年香港カップスノーフェアリーくらいしか記憶にありません。殿強襲であれば距離適性を問われずに済むので、ピンハイの距離適性に関しては未だに懐疑的なのですが、その点をJ.サイズ調教師に直撃してみました。
「それはダービーを見ての通りだ。それ以外には何物もない」
J.サイズ調教師は口数が少なく、インタビューには最も苦戦する調教師なのですが、この時も詳しくは語ってくれませんでした。
さて、J.サイズ調教師のこの反応をどう判断したらいいのか? 今回はR.ムーアではなくJ.モレイラに鞍が戻りますが、R.ムーアと同じように殿強襲でいくのか、ある程度前につけて競馬をするのか?

★”日本と香港を股にかけて活躍する”海外プロ甘粕代三プロが、海外馬券販売レースのクイーンエリザベス2世カップの予想提供をいたします。当日の予想にご期待ください。


甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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