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第70回皐月賞(18日、中山11R、GI、3歳牡牝オープン国際、定量=牡馬57キロ・牝馬55キロ、芝・内2000メートル、1着本賞金9700万円、1~4着にダービー(5月30日、東京、GI、芝2400メートル)の優先出走権=出走18頭)代役の重責から解放されて、思わず男泣き-。牡馬クラシックの第1冠は、1番人気ヴィクトワールピサが5連勝でV。落馬負傷中の武豊騎手(41)=栗東・フリー=の代打を務めた岩田康誠騎手(36)=栗東・フリー=は、堂々たる騎乗で昨年のアンライバルドに次ぐ、日本人騎手では50年ぶりの皐月賞連覇を達成した。ヴィクトワールはダービー(5月30日、東京、GI、芝2400メートル)では武豊騎手に戻って2冠を目指す。
ヴィクトワールピサを勝利に導いた瞬間、岩田康誠騎手は何度もガッツポーズで喜びを爆発させ、それはいつしか涙へとかわった。クラシックで代打騎乗、しかも1番人気…。すべてのプレッシャーに打ち勝った男にだけ許される涙だった。
「厩舎やオーナーのために勝利をプレゼントしたかった。プレッシャーはありました。でも、このチャンスは選ばれた者にしか味わえないもの。僕はプロですから、逃げるわけにはいかない」
前走までの全5戦で騎乗した武豊騎手が、3月27日の毎日杯で落馬し左鎖骨遠位端骨折、腰椎横突起骨折の負傷。翌28日に岩田にオファーがあった。ラジオNIKKEI杯2歳S、弥生賞の重賞2勝を含む4連勝中の本命馬。重圧が強くのしかかる。それでも、昨年、アンライバルドで制した実績のある舞台。プレッシャーに打ち勝って堂々たる騎乗を見せた。
(13)番から内に潜り込んで、後方集団の最内を追走。直線で前後左右を囲まれたが「僕が焦れば詰まったかも。最内の1頭ぶんは、能力がなければ抜けられないコースでした」。力を信じて最内に進路を取り、一気に突き抜けて1馬身1/2差の完勝。見事に史上4人目の皐月賞連覇を決めた。
「ユタカさんから『自信を持って勝ってこい』と言われて安心した。あの言葉がなかったら、自分に負けていたかもしれない。引き揚げて、角居(勝彦)先生と市川義美オーナーの顔を見たら、グッとこみ上げてきました」。目を潤ませる名手は、自分を信じてくれたすべてへ感謝を述べた。
負傷中の武豊は、5月16日のシンガポール航空国際C(ヤマニンキングリー)で復帰予定。ヴィクトワールも、2冠制覇に挑むダービーでは、その主戦に手綱が戻る。「冷静な馬なので、東京の2400メートルでも大丈夫だと思う。僕はあくまで代打。早くユタカさんに復帰してもらって、ダービーを狙ってもらいたい」。大きな仕事を果たした男は安堵の表情で、次にはライバルとなるパートナーとユタカにエールを送った。(柴田章利)
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