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第142回天皇賞・秋(31日、東京11R、GI、3歳上オープン国際(指)、定量、芝2000メートル、1着本賞金1億3200万円=出走18頭)世界の名手が、請け負った仕事をキッチリと果たした。落馬負傷の横山典騎手に替わり、ブエナビスタの手綱を取ったクリストフ・スミヨン騎手(29)=フランス拠点=は、ソツのないレース運びで危なげのないV。凱旋門賞2勝など、欧州でビッグレースを制している名手は1番人気のプレッシャーも難なくはねのけた。次走のジャパンC(28日、東京、GI、芝2400メートル)でも、この華麗なコンビが鮮やかなパフォーマンスを見せてくれるはずだ。
陣営からバトンを託された勝利の請負人が、満点の回答を叩き出した。ブエナビスタの圧勝をエスコートしたのは、ベルギー生まれのクリストフ・スミヨン。拠点を置くフランスから駆け付けた29歳の名ジョッキーは、涼しい顔で2馬身差の快勝を振り返った。
「宝塚記念も惜しかったし、2着が多い馬だったからね。後ろから行くのは難しいと思っていたから、今回は中団から行こうと思っていたんだ」
過去のレースをDVDで徹底的に研究して、事前にシミュレートするのがスミヨンの流儀。必然的に、ライバルにも精通する。騎乗依頼の声がかかった今回も、「ブエナビスタなら」と即座にOK。この天皇賞のために土、日の2日間だけ短期免許を取得しての来日と、気合は十分だった。そのスミヨンが入念なチェックの末に出した結論が、中団からの競馬だ。
「昨年のエリザベス女王杯(3着)や、レッドディザイアに負けた競馬(秋華賞2位入線→3着降着)を見ても、ボクは勝った馬より彼女の方が強いと思っていたんだ」
いわば、恋い焦がれていたブエナビスタとのコンビ。その強い思いが、「きょうがベストのレースじゃないかな」と自画自賛するベストパフォーマンスを呼び込んだ。
フランスで3度のリーディングを獲得、凱旋門賞2勝(03年ダラカニ、08年ザルカヴァ)の名手は、これが日本でのGI初制覇で、マイルCS(21日、京都、GI、芝1600メートル)で再来日する。昨年3着のフランス馬サプレザに騎乗する予定だ。勝負を離れれば、「お土産にキティちゃんグッズを買って帰るよ」と笑うスミヨンだが、3週間後には、再び勝負師となって帰ってくる。もちろん、ジャパンCでもブエナビスタに騎乗予定。今秋のGIシリーズは、この笑顔を何度も見ることになりそうだ。(黒田栄一郎)
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