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週末に行われる中央重賞の過去の優勝馬をピックアップして回顧し、競馬の長い歴史の狭間できらめいた馬を紹介する「中央重賞懐古的回顧」。第57回は1996年の京都記念優勝馬テイエムジャンボを取り上げる。
古くからの関西の競馬ファンには馴染み深い、しかし関東のファンにとっては知る人ぞ知るという扱いであろう繁殖牝馬にブラウンデージがいる。懐かしのラフオンテースの半姉に当たるこの馬は現役時3戦0勝。しかし産駒は母の馬っぷりの良さを受け継いでよく走った。浦河の宮内牧場のかまど馬として長らく活躍し、シンブラウン、シンチェスト、そして少し間を置いてテイエムジャンボという3頭の重賞ウイナーを産み出した偉大な母。晩年まで毎年別々の種牡馬を付けていたことも特筆すべき点であろう。なお、お相手にマイラータイプの種牡馬が多かったのは血統的なバランスを意識した判断だったという。
ハクタイセイ、バンブーアトラス、バンブービギンにより三冠トレーナーとなった栗東・布施正調教師。この名伯楽の功績にブラウンデージは大きく寄与したが、息子のテイエムジャンボは布施師の調教師としての最晩年に活躍した。中でも1996年の京都金杯(当時は京都芝2000m)、京都記念の重賞2連勝は鮮烈であった。4角先頭から瞬く間に2馬身半差突き抜けた京都金杯。続く京都記念では課題と目された1ハロン延長もものともせず、抜群の瞬発力で連勝を飾った。
1996年のG2・京都記念はパワーシンザンが他馬に蹴られて発走除外となり、結果として8頭立てで行われた。重賞連勝を狙う5歳牡馬テイエムジャンボの目下の相手は1歳下のオークス馬ダンスパートナーであった。ハナを切ったファンドリリヴリアが作り出した前半5ハロン1分1秒6のスローペース。折り合いに不安を抱えていたテイエムジャンボだったが、ベテラン河内洋騎手に導かれるように素直に好位待機。その一段後ろで構えたダンスパートナーよりもワンテンポ遅らせてスパートを開始し、メンバー随一の上がり34秒3の脚を披露してゴール前ダンスパートナーに3馬身半の差をつけた。
4歳夏までの一本調子の逃げから脚質転換に成功し、クリスタルグリッターズ産駒らしく中距離で瞬発力を活かす競馬を得意技にしたテイエムジャンボ。だが河内騎手の「天皇賞の3200mはさすがに長いよ」という言葉通りに、春天では入りの遅さに引っ掛かって15着大敗。その後宝塚記念は疲労のため自重した。兄のシンブラウンやシンチェストのように「ブラウンデージの仔はG2どまり」という風評を覆せなかったのは残念であった。彼の引退からまもなくして、同父のマチカネフクキタルが菊花賞を制覇したが、その際ささやかれた“距離不安説”は恐らく先達のテイエムジャンボに因るところが大きかったと推測される。
引退後は故郷の宮内牧場で種牡馬入り。生涯で残した産駒は30数頭と少なかったが、その中から準オープン勝ちのトップジャンボを送り出したのは立派だろう。種牡馬としては2007年を最後に開店休業状態となり、時代は下って令和の世の2020年に29歳で死亡。大柄な母譲りの「ジャンボ」なガタイを誇ったテイエムジャンボは、存在そのものが生まれ育った宮内牧場の歴史であり象徴であった。
テイエムジャンボ
牡 鹿毛 1991年生
父クリスタルグリッターズ 母ブラウンデージ 母父ボンモー
競走成績:中央22戦8勝
主な勝ち鞍:京都記念 京都金杯
(文:古橋うなぎ)
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