東西サンスポ記者が1週間の密着取材で勝ち馬を探るGI連載。マイルチャンピオンシップは、大阪サンスポの渡部陽之助記者(39)が担当する。2日目は春秋マイルGI制覇を狙う安田記念勝ち馬モズアスコット陣営を直撃。デキは急上昇で、エリザベス女王杯を制したリスグラシューに続いて、矢作厩舎の2週連続GI勝利は十分にありそうだ。
月曜夜は取材用の自転車に油を差してメンテナンス。週末までスムーズにトレセン内を移動できるように準備した。全休日明けの火曜は、連闘で安田記念を制したモズアスコットに注目。同一年ではモーリス以来、史上7頭目となる春秋マイルGI制覇がかかる。約5カ月ぶりのスワンS2着を叩いて、状態が気になるところだ。
まず坂路に向かうと、首尾よく矢作調教師を発見。声をかけると、力強い言葉が返ってきた。
「金曜(9日)の動きを見れば、明らかに使って良くなっているね。前走はモタれていたし、休み明けという感じ。使って反応も良くなっているし前回とは全然違うよ」
9日は、坂路で一杯に追われて4ハロン51秒1-12秒2と抜群の動き。力強い脚さばきが目を引いた。14日の最終追いについては「しまいに仕掛ける程度で大丈夫でしょう」。戦闘態勢は、ほぼ整っているようだ。
父が欧州GI10勝の名馬フランケルとあって「種牡馬のオファーも来ている」と明かしたトレーナー。さらに勲章を積み重ねておきたい思いは強いはずだ。
坂路で調教師の取材を終え、快適にペダルをこいで矢作厩舎へ。担当の玉井助手を直撃した。
「(9日は)すごい動きでしたね。次の日からペロッとカイバを食べていたし、体調にも余裕があるんでしょう」と上昇ムードを証言。いつもは追い切るとガタッと来て、カイバを食べさせるのに苦労するというが、今はそんな心配も無用。頼もしい限りだ。
今回の舞台、京都芝・外1600メートルの持ち時計1分31秒5(今年のマイラーズC2着)は、メンバー最速。「坂の下りを含めて、舞台に関しては問題ないでしょう」と同助手は太鼓判。京都芝は【1・3・0・0】と好相性だけに自信を持って臨めそうだ。
モズの近くの馬房では、2日前にエリザベス女王杯を制したリスグラシューがリラックスしていた。
「こちらも続きたいですね」と玉井助手は目を輝かせた。勢いのある厩舎に、上昇曲線を描くモズアスコット。本命候補として、最後まで迷いそうだ。(渡部陽之助)
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エリザベス女王杯2着クロコスミアが香港ヴァーズへ
©サンケイスポーツ
11月14日(水) 05:04
エリザベス女王杯で2年連続2着だった
クロコスミア(栗・西浦、牝5)が、
香港ヴァーズ(12月9日、シャティン、GI、芝2400メートル)に挑むことが13日、明らかになった。西浦調教師は招待の受諾を表明し「選ばれて良かったです。2400メートルは守備範囲だと思いますし、うまく自分のペースで運べればチャンスはあると思います」と話した。鞍上は引き続き岩田騎手。
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リス、エリザベス女王杯Vから一夜明け次走は香港か有馬
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11月13日(火) 05:01
11日の
エリザベス女王杯でGI初制覇を飾った
リスグラシュー(栗・矢作、牝4)は、一夜明けた12日、栗東トレセンの自厩舎で激闘の疲れを癒やした。「馬運車の中で見ていたけれど、出た位置でじっとして、直線でいい脚を使っていたので『勝った』と思いました。家に帰ってから泣きたかったけど、しんどくてそれどころじゃなかった」と北口厩務員は苦笑い。今後は、香港国際競走(12月9日、シャティン)や
有馬記念(同23日、中山、GI、芝2500メートル)を視野に入れる。「レース後も馬は元気です。これからもああいう競馬をしてくれれば」と期待を込めた。
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【次は買い】エリザベス女王杯5着ノームコア
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11月12日(月) 11:37
エリザベス女王杯・2番人気5着
《レース》好位は取れたが外めの(13)番枠が災いして、前に壁を作れなかった。勝負どころの反応も今ひとつながら、3着争いに加われたのは能力の高さだろう。
《次走ポイント》「ペースが遅かった。折り合いはついたが、外々を回らされて直線もあまり反応できなかった。それでも最後にもうひと伸びした」とルメール騎手。初の古馬との対戦は苦い内容に終わったが、「まだ3歳。これから力をつけていくよ」と言うとおり未来は明るい。ベストはマイルから2000メートルと思われ、来春の
ヴィクトリアマイルに向けて牝馬G戦線の中心的存在となっていく。 (夕刊フジ・水谷)
★11日京都11R「
エリザベス女王杯」の着順&払戻金はこちら
【エリザベス杯】初GI届いたリス!これぞマジックマン・モレイラ
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11月12日(月) 05:09
第43回エリザベス女王杯(11日、京都11R、GI、3歳上牝馬オープン国際(指)、定量、芝・外2200メートル、1着本賞金1億500万円 =出走17頭)3番人気のリスグラシューが中団から直線で鋭く伸び、ゴール前でクロコスミアをかわして8度目の挑戦でGI初制覇。ジョアン・モレイラ騎手(35)=ブラジル=もJRA・GI初制覇となった。タイム2分13秒1(良)。このあとは香港国際競走(12月9日、シャティン)や有馬記念(同23日、中山、GI、芝2500メートル)が視野に入る。1番人気で連覇を狙ったモズカッチャンは3着に敗れた。
歓喜のゴールに飛び込んだ瞬間、モレイラ騎手が右拳を何度も振り上げた。GIで4度の2着に泣いてきたリスグラシューの悲願、自身にとっては日本でのGI初制覇。あふれ出す喜びを抑えきれなかった。
「初めてのGIは何より特別な気持ちです。ガッツポーズを見せてしまって許してください」
全てが完璧だ。課題のゲートを決め、中団をキープ。4コーナーで外に持ち出すと鞍上のステッキに応えて脚を伸ばす。最速の上がり3ハロン33秒8の豪脚で、粘るクロコスミアをクビ差捕らえた。
「4コーナーでエネルギーがいっぱいあったので、最後の300メートルで自信を持ちました。能力を見せられてよかった」
8Rのスタート後に落馬して周囲をヒヤリとさせたが、直後の9RにJRA史上最少騎乗数で通算100勝を達成。激動の一日をGI制覇で締めくくる、“マジックマン”の独壇場だった。
「日本でGIを勝つのが、子供のころからの夢でした」。幼少時に父が他界。かすかに覚えている一生懸命働く大きな背中が、心の支えになっている。「今も、どこかで見ていてくれている。父のおかげで勝つことができたし、うれしい」。晴れ姿はきっと天国にも届いたはず。孝行息子は続けて「どんどん勝ちたい。ここで終わりではない」と貪欲だ。
リスグラシューはGI8度目の挑戦で戴冠。矢作調教師も感無量だ。
「これだけ強い馬にGIがないのはすごく情けなかったし、うれしいしかない。若い頃は牝馬特有の繊細さに悩まされたが、今年の春くらいから大人になって完成に近づいてきた。どんどん自分で進化してくれた」
新コンビの鞍上にも「ゲートの中だけ悪いので『そこだけ気をつけて、うまく出して』と言ったら、最高に出してくれた。折り合いも完璧で、位置取りもよし。“なんであんなにうまいのか”というくらい、うまいレースをしてくれた」と絶賛する。
今後は香港国際競走や有馬記念が視野に入る。「折り合いも大丈夫だと分かったし、マイルから2400メートルまで全部こなすと思う」と、トレーナーは手応えを感じ取る。待望のタイトルを手にしたリスグラシューが、まだまだ高みを目指していく。 (斉藤弘樹)
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★アラカルト
◆矢作芳人調教師 昨年の同馬での8着に次ぐ2度目の出走で初勝利。JRA・GIは2010年朝日杯FS(グランプリボス)、11年NHKマイルC(同)、12年ダービー(ディープブリランテ)、18年安田記念(モズアスコット)に次ぐ5勝目。
◆ハーツクライ産駒 延べ9頭目の出走で初勝利。JRA・GIは8勝目。
◆馬主(有)キャロットファーム 15年マリアライトに次ぐ2勝目。JRA・GIは19勝目。
◆生産者ノーザンファーム(北海道安平町) 15年マリアライトに次ぐ7勝目。JRA・GIは122勝目。
◆関西馬 1996年に4歳以上に開放されてから16勝目。関東馬は5勝で、他に英国のスノーフェアリーが2勝。今年のJRA・GI(JBC3レースを除く)は障害を含めて関西馬11勝、関東馬7勝。
★入場&売り上げ
アーモンドアイ、ディアドラなどが出走しなかったためか、11日の京都競馬場の入場人員は4万8775人で前年比94・1%、エリザベス女王杯の売り上げも155億1357万8600円で同97・4%と、ともにダウンした。JBC3レースを除く今年の平地GI17レース中、フェブラリーS、大阪杯、皐月賞、天皇賞・春、宝塚記念、天皇賞・秋に次ぐ7レース目の売り上げダウンとなった。
リスグラシュー 父ハーツクライ、母リリサイド、母の父アメリカンポスト。黒鹿毛の牝4歳。栗東・矢作芳人厩舎所属。北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は(有)キャロットファーム。戦績16戦4勝。獲得賞金4億615万3000円。重賞は2016年GIIIアルテミスS、18年GIII東京新聞杯に次いで3勝目。エリザベス女王杯は矢作芳人調教師、ジョアン・モレイラ騎手ともに初勝利。馬名は「優美な百合(仏)。母名より連想」。