上半期の総決算となる
グランプリ、
宝塚記念が23日、阪神競馬場で12頭によって争われ、ダミアン・レーン騎乗で3番人気の
リスグラシューが2番手から力強く抜け出し、GI2勝目を飾った。好スタートのアドバンテージを生かすため、無理に控えず前につける好判断で、鞍上はJRA短期免許の最終週を見事にGI制覇で締めた。1番人気の
キセキはマイペースの逃げを打ったが、2着に終わった。
5歳牝馬と25歳の若き天才が紡いだ驚きの完勝劇に、仁川が沸いた。紅一点の
リスグラシューが強豪牡馬を蹴散らしてGI2勝目。春の日本競馬に旋風を巻き起こし、
グランプリまでも奪取したレーン騎手が、はにかみながら喜びを伝えた。
「最高の気持ちです。仕上がりが完璧な馬に乗せていただき、厩舎に感謝しています」
スタート直後に、抜群の判断力を発揮した。好発を決めると、本来は後方から末脚を生かすタイプと承知の上で、抑えることなく2番手につけた。誰もが驚く奇策は「先頭に立つかどうか悩んだが、流れや展開で“ここで大丈夫”と判断しました」という絶妙のアドリブ。向こう正面では折り合いもつき、いい手応えで直線へ。ラスト1ハロン手前で
キセキを抜いて先頭に立つと、脚いろが鈍ることなく3馬身差をつけての圧勝だ。
矢作調教師も「誰も、まさか2番手に行くとは思わなかったでしょう。指示は“ゲートに気をつけて、出してくれれば”と、それだけ。彼の好判断です」と“レーンマジック”に最敬礼だ。
オークス(
ラヴズオンリーユー)に続くGI7勝目の指揮官は、
有馬記念を含めて
グランプリ初出走初制覇。国際派調教師らしく、秋の目標も
ワールドワイドだ。米GI・ブリーダーズカップに挑戦するなら、牝馬限定のフィリー&メアターフ(11月2日、サンタアニタ、芝約2000メートル)の予定だったが「この強さなら(牡牝混合の)ターフ(同、芝約2400メートル)に行っても(戦えるのでは)と思います」と目尻を下げた。
さらに、今年から
宝塚記念優勝馬に豪州GI・コックスプレート(10月26日、ムーニーバレー、芝2040メートル)の優先出走権を付与。優勝時のボーナスも設定されており、「“直線が短いのでどうか”と思っていたが、きょうの競馬なら…」と夢は広がるばかりだ。
4月末に初来日したレーン騎手は、約2カ月間の短期免許期間中にGI2勝を含む重賞6勝。競馬以外でも日本を満喫し、「一番印象深かったのは、日本食がすごくおいしかったこと。いろんな場所に行けたのもよかった」とすっかり親日家となった。存在を強く印象づけたJRA短期免許はこれで終了。口取り式では、豪州で調教師をしている父のマイケル氏とも記念撮影し、最高の親孝行を果たした。
「アリガトウゴザイマス。マタキマス」
最後には、日本語であいさつ。春の競馬を彩ったレーン劇場は、鮮やかすぎる“魔法”の余韻を残しながら、幕を閉じた。 (山口大輝)
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宝塚記念】払い戻し確定!! 全着順も掲載
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宝塚記念の表彰式プレゼンターを務めた2019年JRA年間プロモーションキャラクターの松坂桃李 「阪神競馬場に来るのは初めてでした。阪神競馬場開場70周年というメモリアルなタイミングでお呼びいただいて、とても光栄です。馬券は以前出演していた映画の名前にちなんで
キセキの単勝で勝負しましたが、残念ながら2着でした」
★BCフィリー&メアターフ
1984年に7部門で創設された北米競馬の祭典「ブリーダーズカップ(BC)」の8番目のレースとして99年に加わった。ターフ(芝約2400メートル、優勝賞金220万ドル=約2億3540万円)の牝馬版だが、距離は施行競馬場で異なり、これまで1800メートル、1900メートル、2000メートル、2200メートルで実施された。今年は11月2日にロサンゼルス郊外のサンタアニタ競馬場で芝約2000メートルを舞台に行われる。優勝賞金は110万ドル(約1億1770万円)。フルゲートは14頭。