11月1日に東京競馬場で行われる
天皇賞・秋(芝2000メートル)で、
フィエールマン(美浦・
手塚貴久厩舎、牡5歳)が天皇賞の春・秋制覇に挑む。
アーモンドアイの芝GI8勝の偉業達成に注目が集まるが、こちらも勝てば史上3頭目の天皇賞3勝の大記録だ。先週の
菊花賞で
コントレイルを無敗の3冠馬に導いた
福永祐一騎手との新コンビで、“打倒アーモンド”を狙っている。
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史上初の芝GI8勝がかかる
アーモンドアイに注目が集まる中、同世代の牡馬
フィエールマンも虎視眈々(たんたん)と爪を研いでいる。今年、
天皇賞・春連覇を果たした“盾男”は、今回も勝つと史上6頭目の同一年春秋制覇。しかも天皇賞3勝目となれば、過去に
テイエムオペラオーと
キタサンブラックしか達成していない快挙だ。
「(記録は)意識していないよ。
アーモンドアイがいるわけだし、あくまで挑戦者だから」
管理する手塚調教師はGI7勝の女王に敬意を表すが、
フィエールマンが残してきた足跡も負けてはいない。
一昨年、史上最少キャリアとなるデビュー4戦目で
菊花賞制覇。昨年は
天皇賞・春を制し、秋にはフランスの
凱旋門賞(12着)に挑戦した実力馬だ。その遠征帰りで本調子になかった
有馬記念(4着)でも
アーモンドアイ(9着)に真っ向勝負を挑んで先着し、前走の
天皇賞・春では改めて性能の高さを示した。
秋初戦に予定していた9月末の
産経賞オールカマーを追い切り前の発熱で回避。ぶっつけ本番とはなるが、「何とかギリギリ間に合った前走や、昨年の
有馬記念よりも状態はいい。動きを見れば分かる。全然違う」とトレーナーはむしろデキの良さを強調。体つきも「少し太かった前走よりも絞れている。この馬は無駄肉がなく細く見えるくらいでちょうどいい」と研ぎ澄まされている。
今回は2000メートルの距離に対応できるのかどうかもポイント。同距離の
札幌記念は3着で、GI3勝が全て3000メートル以上なら、一般的に長距離向きとみられるのも仕方がない。だが、手塚師の見立ては違う。「長距離馬とは思っていない。むしろ中距離馬だと思っている。広い東京コースなら2000メートルでも対応できるはず。早めにエンジンをふかしていく感じで…」と距離への不安は抱いていない。
新コンビとなる福永騎手は、
コントレイルでクラシック無敗3冠を成し遂げた、いま最も頼れるジョッキーだ。その鞍上は21日の1週前追い切りで
フィエールマンと初
コンタクトを取り、「心臓(心肺機能)が良さそう。心臓の強さと長くいい脚を使えそうなところを生かせるように考えて乗りたい」と好感触をつかんでいる。
3冠ジョッキーとともにアーモンドの偉業阻止へ-。取り巻くムードは上々だ。馬名の由来通りに『気高く勇ましい』走りを披露する準備は整っている。(板津雄志)
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天皇賞・秋の特別登録馬(想定騎手入り)はこちら 調教タイムも掲載
★芝で強いユーイチ…福永騎手は今年JRA重賞を10勝しているが、その全てが芝レースでのもの。今年の芝重賞勝率は22.7%で、ルメール騎手の16.7%を大きく上回っている。先週の
菊花賞ではルメール騎手の
アリストテレスに最後まで苦しめられたが、今回は立場が逆転。大本命の
アーモンドアイ&ルメールを追い詰める番だ。ちなみに、福永騎手は2013年
ジャスタウェイで
天皇賞・秋を制しており、そのときも前週に
菊花賞を
エピファネイアで勝っていた。
★天皇賞3勝へ…天皇賞は1937年の第1回から長く勝ち抜き制度を導入し、春・秋を問わずに1度勝った馬は、その後に出走することはできなかった。その制度が廃止されたのは81年。88年に
タマモクロスが春・秋を制して、史上初の天皇賞2勝馬に輝いた。天皇賞を複数回制した馬は、昨年、今年の春を連覇した
フィエールマンで11頭目。3勝した馬は2000年春・秋、01年春の
テイエムオペラオー、16年春、17年春・秋の
キタサンブラックの2頭がいる。