30日の東京11Rで行われた
天皇賞・秋(GI、芝2000メートル)は、1番人気の
イクイノックスが、逃げた
パンサラッサをゴール前で捕らえてGⅠ初勝利。父
キタサンブラックにも初GⅠタイトルを贈り、JRA平地GⅠにおける1番人気馬の連敗は〝16〟でストップした。クリストフ・ルメール騎手(43)=栗東・フリー=は、
天皇賞・秋4勝目。今後は
ジャパンC(11月27日、東京、GⅠ、芝2400メートル)か
有馬記念(12月25日、中山、GⅠ、芝2500メートル)が視野に入る。1馬身差2着に7番人気
パンサラッサ、さらにクビ差の3着に4番人気
ダノンベルーガが入った。
◇
6万人を超える大観衆が固唾をのんで見守った東京競馬場の直線。
パンサラッサが残すのか、
イクイノックスが届くのか…。最後は3歳馬の末脚が、年長馬の粘り腰に勝った。伝統の古馬最高峰の一戦で、166代目の栄誉に輝いたのは
イクイノックス。JRA平地GIで16連敗中だった1番人気馬が、クラシック2冠で2着に泣いた未完の大器が、その豪脚ですべてをのみ込んだ。
「(道中は)
パンサラッサのことは本当に見えていなくて、直線で見えて〝エーッ〟とびっくりしました。15馬身も前にいて、もう間に合わないかと思ったけど、坂を上がってからの
イクイノックスの脚がすごかったです」
数々のGⅠを制しているルメール騎手をも驚かせた展開と
イクイノックスの末脚。1000メートル通過57秒4は、
サイレンススズカが大逃げを打って故障した1998年と同じ。驚異的なハイペースで逃げた
パンサラッサの大差リードを、後方から一完歩ずつ詰め寄り、最後は涼しい顔で標的を抜き去ってみせた。メンバー最速、
天皇賞・秋史上でも歴代2位タイとなる3ハロン32秒7の切れ味でひっくり返した相棒に、同レース4勝目のジョッキーは「
キタサンブラックの子でこの秋から来年に強くなる。今日が最初のGⅠだけど、最後のGⅠじゃないです」ときっぱり。2017年にこのレースを勝ち、GⅠを7勝した父同様の活躍を約束した。
1番人気が連敗中だった重圧を払拭した木村調教師は、表彰式のあとファンに向かって何度も頭を下げた。「(16連敗で)人気に応えられていないのが本当に申し訳なかった。今日はゆっくり寝られます」と安堵(あんど)の表情。「きょうの状態が悪かったわけじゃないけど、入厩して3週間くらいはギリギリの感じでちょっと手探りだった。春より成長しているのは間違いないけど、正直、この馬はどこに限界があるのかわからない」と無限の可能性も認めた。
今後については状態を見て判断されるが「年内あと1戦。
ジャパンCか
有馬記念に使えるようにやっていけたら」とトレーナー。春の悔しさを晴らして手に入れた待望のタイトル。それも快進撃の序章に過ぎない。(内海裕介)
■
イクイノックス 父
キタサンブラック、母
シャトーブランシュ、母の父
キングヘイロー。青鹿毛の牡3歳。美浦・
木村哲也厩舎所属。北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は㈲シルクレーシング。戦績5戦3勝。獲得賞金4億324万2000円。重賞は2021年GⅡ
東京スポーツ杯2歳Sに次いで2勝目。天皇賞は
木村哲也調教師が初勝利。クリストフ・ルメール騎手は18年秋
レイデオロ、19&20年春
フィエールマン、19&20年秋
アーモンドアイに次いで6勝目。馬名は「昼と夜の長さがほぼ等しくなる時」。
■
天皇賞・秋 アラカルト
◆親子制覇
キタサンブラック産駒は、JRA・GⅠに延べ5頭目の出走で初勝利。父は17年の優勝馬で、当レース4組目の親子制覇となった。
◆最少キャリアでのJRA古馬GⅠ制覇 デビュー5戦目でのJRA古馬GⅠ制覇は、グレード制導入の1984年以降で最少。これまでの記録(デビュー6戦目)は
ファインモーション、
リアルインパクト、
フィエールマン、
クリソベリル、
レイパパレ、
エフフォーリアの6頭。
◆最長間隔タイでの勝利
日本ダービーから中153日での勝利は、当レースの実施距離が2000メートルとなった84年以降で、21年(
エフフォーリア)と並ぶ最長間隔。
◆単勝1番人気馬の勝利 JRA・GⅠは21年
有馬記念(
エフフォーリア)以来の勝利となり、グレード制導入以降で最長記録を更新していた1番人気馬のJRA・GⅠの連敗は16でストップとなった。
◆3歳馬の勝利 21年(
エフフォーリア)に続き、通算5回目。