予想する側としては、なんてややこしい枠順だろうと思った。
一番人気が予想された
アスコリピチェーノが17番枠。前走で強力牡馬を撃破した
クイーンズウォークも外の16番枠。この2頭に劣らない能力を秘める
ステレンボッシュは2番枠と、有力馬が内と外の極端なところに分かれた。
加えて、逃げという選択肢を持ち、展開の鍵を握ると思われた
クリスマスパレードと
アリスヴェリテがそれぞれ1番枠と18番枠。これまた極端だ。前週の
NHKマイルカップが予想だにしない展開からの大波乱だったので、その影がちらついた方も多かったのではないかと思う。
だが今週は、強者がその意地を見せつけた。
注目された先行争いは、
クリスマスパレードが若干の後手を引いたことで一気に混戦に。
シンリョクカが押していく構えを見せたが、
サフィラや
アドマイヤマツリ、
ビヨンドザヴァレー、
ソーダズリングも前向きな走りで先団を狙う。一時は雁行状態になるかと思われたが、それらを一気にかわしてハナに立ったのが大外枠の
アリスヴェリテだった。
元々溜めを作るタイプではない
アリスヴェリテは、今回も極端にラップを落とさない逃げを展開。後続はやや離れ、1頭+16頭という隊列が形成された。
その中で
アスコリピチェーノと
クイーンズウォークは外枠だったこともあり、内に入れることが叶わず後方外の苦しい位置。道中も大きな動きはなく、直線に入るまでその位置に留まるしかなかった。
だが、結果的にはその位置取りが奏功することに。
前日の雨の影響が多少残っていたか、当日の芝は外目からでもじゅうぶんに届く傾向を示していた。
ヴィクトリアマイルでもそれは例外ではなく、直線で伸びが目立ったのは外に進路を切った馬たち。終始内にいた
ステレンボッシュらが伸びを欠く中で、遮るもののなくなった
アスコリピチェーノと
クイーンズウォークが外から一気に強襲。ゴール直前で5頭が並ぶ大激戦をねじ伏せにかかり、最後は
アスコリピチェーノがぐいっとひと伸び。クビ差だけ
クイーンズウォークを抑えてG1・2勝目のゴールへ飛び込んだ。
上位4頭が同タイムという接戦を制した
アスコリピチェーノ。
外が伸びる馬場に助けられた面はあったが、道中の苦しい位置取りを考えると、かなり高い能力がないと勝ち切るのは難しかったはず。戦前の評価通り、牝馬同士のマイル戦であれば基礎能力が一枚上であったように思う。
血統的なものを加味してか、これまでマイル以上の距離には使われていないが、レースぶりからはマイルが限界という印象は全く受けず、2000mくらいでもじゅうぶんに戦えるように思う。このままマイル路線を進むのか、中距離も視野に入れたローテを組まれるのか、引き続きその動向には注目したいところだ。
惜しくも2着に敗れた
クイーンズウォークも、内容はほぼ互角。
これまでG1になると頼りない面を出すことが多かったが、この中間は陣営のトーンも高く、その通りに力を出し切った。マイルへの対応力を見せたことも、今後を考えれば大きな収穫だっただろう。
ここまでの実績から、右回りよりは左回りのほうが安定しており、その中でものびのびとフットワークを伸ばせるかたちになるのがベスト。距離も2000mまでであれば高水準の走りが可能で、こちらも
アスコリピチェーノ同様選択肢は広い。牝馬路線、マイル路線、
天皇賞(秋)を含めた古馬王道路線、あるいは海外など、様々な進路が考えられるが、どこに目標を定めてくるだろうか。
惜しかったのは3着の
シランケド。
道中は
アスコリピチェーノと同じく最後方に近い位置にいたが、直線では外が空かないと見て内を選択。
そこから他馬の動きもあり再度外へ舵を切り、最後にはもう一度大きく内に切り返す格好に。まっすぐ脚を伸ばせた上位2頭に比べ右往左往するかたちとなった分が、最後のクビ+ハナ差に繋がってしまったという印象を受けた。
それでも裏街道を突き進んできた馬が、この舞台で勝ちを狙えるところまで成長したというのは素晴らしい。無理せずにじっくりと実績を重ねた陣営の手腕も評価すべきだろう。
4着の
アルジーヌは上位3頭よりも前目の位置から早めの仕掛け。最後は僅かに差されたものの、展開や馬場傾向を考えれば能力差はほとんどなかった。
昨夏以降は常に高水準の走りができており、大きく崩れない安定感が光る。
これまで徹底して1600~1800mのレースだけを使われているが、血統やレースぶりからは2000m前後でもじゅうぶんにこなせそう。秋には母が届かなかった
エリザベス女王杯に挑戦するのも面白いかもしれない。
一方、2~3番人気馬は苦戦を強いられた。
ボンドガールは遅めの発馬からかなり行きたがる仕草を見せ、レース終盤までほとんど収まりがつかなかった。
参考外と言える負け方ではあるが、気性面の難しさは相変わらず。まともに走れば上位に来れる能力は感じるものの、人気になりやすいタイプでもあり、予想的に非常に難しい選択を迫ってくるタイプと言える。
ステレンボッシュは内枠がプラスに働かない馬場傾向だったのが誤算だったが、父
エピファネイア×母父
ルーラーシップ×母母父
ダンスインザダークという血統構成もマイルG1だと重すぎた。2000m以上の距離でどっしり構えられそうな舞台に出てきた時に再評価したいと考えている。