ジョアン・モレイラ(41)=ブラジル=騎乗で3番人気の
エンブロイダリーが中団から鮮やかに突き抜け、重賞連勝で桜の女王に輝いた。鞍上は史上7人目の連覇を達成。開業2年目の
森一誠調教師(47)=美=はGⅠ初挑戦Vの快挙となった。2番人気
アルマヴェローチェが2着で、3着に4番人気
リンクスティップ。1番人気の
エリカエクスプレスは5着だった。
◇
泥まみれになりながら、
エンブロイダリーが華麗に美しく咲き誇った。2020年以来となる雨中決戦を制し、新種牡馬
アドマイヤマーズ産駒がGⅠ初制覇。7人目の桜花賞連覇を決めたモレイラ騎手が白い歯を見せる。
「とてもうれしい。素晴らしい牝馬でどんなジョッキーでも乗りたくなる馬だと思う。今のフィーリングはグッドです」
〝マジックマン〟の手綱さばきがさえ渡った。4R前から雨が降り出し、芝の傾向を踏まえて「あまり内は通りたくないイメージがあった」。直線に入っても慌てず、一番伸びるスペースが開くのをじっと待つ。残り1ハロンを切って
エリカエクスプレスの外に持ち出すと、2歳女王
アルマヴェローチェと馬体を併せながら鋭進。ぬかるんだ馬場も苦にすることなく勝負根性を発揮し、力強く突き放した。
開業2年目の森一調教師は、管理馬がGⅠ初出走で勝利する快挙。「うれしいのひと言です。最初に見たときからいい馬だなと思っていたので、良かったです」と喜びもひとしおだった。
東の名門・堀厩舎で調教助手を務め、技術調教師時代は国枝調教師の下で研鑽を積んだ。
アパパネ、
アーモンドアイで牝馬3冠を達成するなど、〝牝馬の国枝〟との異名もあるトレーナーから牝馬の扱いについて学んだという。「国枝先生は穏やかな性格で当たりが柔らかい方。馬に対してもビシビシやり過ぎないようにするというところが、牝馬との相性がいいのかなと思いました」。師匠から学んだことを生かして、馬の負担を減らすことを最優先に調整。今回は長距離輸送のリスクを避けるため、栗東滞在を選択した。現地のスタッフと密に連携を取りながら新しい環境に順応させて、最大限のパフォーマンスを引き出した。
今後は未定だが、「今のところは課題が見つからないし、まだまだこれから成長するタイプ。2400メートルはやってみないと分からないが、2000メートルまでは問題ないと思う」とモレイラ騎手は力を込めた。雨中の仁川で誕生したニューヒロイン。その未来は明るく広がっている。(増本隆一朗)
■
エンブロイダリー 父
アドマイヤマーズ、母ロッテンマイヤー、母の父
クロフネ。鹿毛の牝3歳。美浦・
森一誠厩舎所属。北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は㈲シルクレーシング。戦績6戦4勝。重賞は2025年GⅢ
クイーンCに次ぎ2勝目。獲得賞金2億2455万1000円。桜花賞はジョアン・モレイラ騎手が24年
ステレンボッシュに次ぎ2勝目、
森一誠調教師は初勝利。馬名は「刺繍。母名より連想」
★アラカルト
◆J・モレイラ騎手 昨年(
ステレンボッシュ)に続き2勝目。JRA・GⅠは
高松宮記念(
サトノレーヴ)以来で今年2勝目、通算4勝目。JRA重賞は
ダービー卿CT(
トロヴァトーレ)以来の今年3勝目で通算16勝目。
◆騎手の桜花賞連覇 1977&78年の福永洋一、93&94年の
武豊、95&96年の田原成貴、06&07年の安藤勝己、18&19年のC・ルメール、22&23年の
川田将雅以来、7人目。
◆
森一誠調教師 JRA・GⅠに管理馬初出走で勝利。JRA重賞は
クイーンC以来の今年2勝目で通算3勝目。
◆
アドマイヤマーズ産駒 産駒初出走で勝利。JRA・GⅠは今回の2頭を含む産駒3頭の出走で初勝利。前回は24年
阪神JF(
ジャルディニエ)の10着。JRA重賞は
クイーンC以来の今年2勝目で通算2勝目。
◆新種牡馬産駒の桜花賞制覇 グレード制を導入した84年以降、20年
デアリングタクト(父
エピファネイア)以来の7回目。
◆馬主・(有)シルクレーシング 18年(
アーモンドアイ)以来の2勝目。JRA・GⅠは昨年の
菊花賞(
アーバンシック)以来で通算24勝目。JRA重賞は前日のサンスポ杯
阪神牝馬S(
サフィラ)に続く今年4勝目で通算105勝目。
◆生産牧場・ノーザンファーム 23年(
リバティアイランド)以降、3年連続11勝目。JRA・GⅠは
フェブラリーS(
コスタノヴァ)以来で通算215勝目(ほかJ・GⅠ3勝)。JRA重賞は前日の
ニュージーランドT(
イミグラントソング)に続く今年19勝目で通算877勝目。
◆関東馬の勝利 24年から2年連続。通算成績は関東馬32勝、関西馬53勝。
★入場&売り上げ
桜花賞の売り上げは180億4001万9000円で前年比100・2%。13日の阪神競馬場の入場者人員は2万5610人で同74・8%だった。