上位に錚々たるメンバーが並んでいた昨年の
日本ダービー。
その中で”15番人気4着”というなんとも悩ましい人気と結果だったのが
サンライズアースだ。
その後も当たり前のようにG1で好走して一線級の評価を集めた同期たちの陰で、夏負けから復帰まで時間を要した本馬の評価は今一つ上がりきらなかった。満を持しての復帰戦がシンガリ負け、続く復帰2戦目も伏兵に脚を掬われ……と、”フロック”の4文字がちらつきかけたタイミングでの3000m級レースへの挑戦。
ここで見せ場すらないようだと”ダービー4着馬としては”後がない……そんな状況下で圧勝劇を演じてみせるあたり、この馬もかなりの役者だった。
レースは序盤から
サンライズアースがペースをコントロール。
競り合い等が発生することもなく、それぞれが勝負どころに向けて脚を温存する作戦に出る。
動きがあったのは残り1000mを切った辺り。好位のインで運んでいた
マコトヴェリーキーが一気の仕掛けでハナを奪い、そのまま粘り込みを図る。
その動きに呼応するように最後方にいた
ショウナンラプンタも動きを見せるが、11秒台の速いラップが連発される中で押し上げていくのは至難の業だった。
一方でハナを奪われた
サンライズアースと池添騎手は全く焦りを見せず、道中で作った十分な溜めを勝負どころで放出。最終コーナーで
マコトヴェリーキーに並びかけると、相手がモタれて減速した隙を逃さず一気に突き放していく。
後続はこの加速に全く付いてこれず、終わってみれば2着に1秒もの大差を付けての圧勝。迷走しかけていた馬が自分の庭を見つけ出した瞬間だった。
初重賞タイトルを手にするとともに、ステイヤーとしての高い可能性を示した
サンライズアース。
ダービーや前走の舞台である東京2400mでは完全に切れ負けしていたが、全く違う適性が求められるこの舞台で一気の素質開花となった。以前よりもスタートが安定し好位置で運べるようになったのは大きく、今回はハナへ行ってマイペースで運べたというのが効いた。
頭数が増え、軽いスピードも同時に求められるような舞台に変わるとまたひと工夫必要となりそうだが、3000m超の長距離レースならば今後もコンスタントに好走してくるのではないだろうか。
これまでもステイヤーっぽさは随所に見せていたものの、こうして確固たる結果を残したというのは本馬のキャリアにとって大きな一歩となる。
2着の
マコトヴェリーキーも初の長距離レースで見せ場たっぷりの走り。
以前も右回りの直線で強くモタれる面を見せており、今回もその分伸びきれなかった格好だが、実績で上を行く
ブローザホーンや
ショウナンラプンタを抑え込む粘りを発揮したのは評価できる。
昨年も3~5月にかけて大きくレースレベルを伸ばしており、この時期も合うのだろうが、いい流れをどこまで維持できるか。
前向きな気性で中距離までカバーできる柔軟性もあるだけに、今後の選択肢は広くなりそうだ。
接戦の3着争いを制したのは
ブローザホーン。
昨秋以降精彩を欠くレースぶりが続いていた上、メンバー唯一の59㎏という斤量。小柄な本馬にとってはかなり厳しい状況が揃っているように思ったが、上位の基礎能力と高い距離適性は完全には失われていなかった。
サンライズアースにはかなりの大差を付けられており、この好走をもって完全復活とは言い難いが、まだやれるきっかけを掴んだのは収穫。この後も昨年に近いローテを歩むと思われるが、もう一花咲かせられるか注目される。
抜けた人気を集めていた
ショウナンラプンタは4着。
これまで通りの待機策で道中は最後方。懸念されていた折り合いの難しさは出していなかったものの、
サンライズアースのペースになった上、勝負どころでは外を回らざるを得ないかたち。前が余力十分な中で押し上げるのは容易ではなかったし、現状ではこうした競馬しかできない馬。今回に関しては仕方のない敗戦と言える。
とは言え、血統的にも気性的にも3000m級のステイヤーという印象は薄い馬なだけに、本質的な適性差が出た面もあったのではないか。
同じことは5着の
ヴェローチェエラにも言え、両馬とも本来はもう少し短い距離の方が立ち回りやすいだろう。
どちらもまだ4歳で上積みは大きいが、真の適性がどこにあるのかが分かりにくいタイプ。最も能力を発揮できる舞台はどこなのか……陣営の判断と手腕が問われそうだ。