頭を悩ませながら熟考を繰り返した末に◎を託した馬が、予想通りに勝ち切ってくれる……その時の爽快感は競馬の醍醐味の一つだと思っているが、”勝ち方”は喜びにスパイスを加えてくれる。成功することが極めて少ない追い込みや大逃げ、マクりといった極端な戦法がハマった時の高揚感はなかなか他では得難いものだ。
おそらく今回、
ファウストラーゼンに◎を託した方は同じような気持ちだっただろう。
レースは先行勢が互いの出方を窺うような雰囲気からスタート。「じゃあ……」と言わんばかりに
ヴィンセンシオとルメール騎手がハナを切ると、すぐにペースが落ち着いた。
通常であればこのまま名手によってレースがコントロールされるところだが、後方を進んでいた
ファウストラーゼンと杉原騎手はそのシナリオを許さず。
ホープフルSで見せていたマクり戦法を再び発動させ、一気に位置を上げていく。逃げ馬に抵抗されて併走状態の時間が長かった前走と違い、今回は完全に単騎のかたちを作るまで進出は止まらなかった。
一方で逃げていた
ヴィンセンシオはこれを深追いすることなく、マイペースを貫く。
結果的にそれぞれの判断が互いのひと溜めに繋がり、直線の攻防で差し馬勢を抑える粘りへと転化。3~4コーナーで一気に進出した
ミュージアムマイルや
アロヒアリイはこれに屈するかたちで詰め切れず、最後は
ヴィンセンシオが押し切ろうとするところを
ファウストラーゼンがもうひと伸び。G1好走がフロックでないことを証明し、初重賞タイトルをもぎ取った。
マクりという特異な戦法を2戦続けて炸裂させたうえ、今回は勝ち切るまで至った
ファウストラーゼン。
スタートダッシュの鈍さは変わらずも、ブリンカー着用後は道中行きっぷりや反応がデビュー時と比べまるで別馬。
マクらずに普通の待機策だとどうなるのか、距離や舞台含めてどこに真の適性があるのか等、まだ不明な部分が多いが、"マクりという選択肢がある"という点は
皐月賞を見据える馬たちにとって大きな脅威。引き続き展開の鍵を握る馬として存在感を発揮するだろう。
二度あることは三度……となるのか、本番の走りに注目したい。
2着の
ヴィンセンシオは特殊な展開にも動じず、正攻法で勝ちに等しい内容。
デビューから馬体重が増え続けており、それに伴い走りにも重厚感が出てきたように思える。
二代母
シーザリオから連なる日本有数の名牝系の出身で、父の
リアルスティールは
皐月賞2着馬。次に控える本番でも血統の質は上位で、速い馬場も時計の掛かる馬場もこなせるのは強み。あと1ヶ月でどこまで上昇してくるだろうか。
3着の
アロヒアリイは中団で差しに構え、
ファウストラーゼンの進出から数テンポずらして大外をマクり上げるかたち。前走同様に4コーナーを逆手前で回ってしまったことでかなり外に張るロスがあったが、脚は最後まで伸ばし続けていた。
父
ドゥラメンテ、母父
オルフェーヴルという、高い能力と荒削り感を感じさせる血統構成の持ち主で、この世代の
ダークホースになってくるかもしれない。走法から左回りのほうがスムーズに運べそうでもあるので、
皐月賞以降のダービー路線でも注目すべき存在だろう。
最終的に1番人気に推された
ミュージアムマイルは4着。
課題のスタートはかなり改善されており、スムーズに流れに乗れていたように映ったが、4コーナーで同じような進出の仕方だった
アロヒアリイに最後は完全に伸び負けるかたち。コーナリングはこちらのほうが圧倒的にスムーズだっただけに、やや不満が残る内容だった。
鞍上は時計の掛かる馬場を敗因に挙げていただけに、本番ではどれだけ速い馬場で走れるかが好走の分かれ目になりそうだ。
今回
ホープフルS3着馬が勝利したことで、勝ち馬である
クロワデュノールの評価がさらに上がる結果に。
他のトライアルでこの王者に迫るだけの可能性を示す馬が現れるのか……引き続き目が離せないレースが続く。
予想する側としても、大本番での的中を目指して見る目を培っておきたいところだ。