今年の
中山金杯は、枠順決定時から荒れる香りがした。
抜けた実績を持つ
ホウオウビスケッツをはじめ、フレッシュな4歳牝馬の
クリスマスパレード、安定した先行力が持ち味の
ボーンディスウェイ、
シンリョクカ、
リカンカブール、近走で前向きなレースを展開している
ギャラクシーナイト、
ディオスバリエンテ、
アドマイヤビルゴ、
セイウンプラチナ……こういった馬たちが、びっくりするほど外枠に固まっていたのだ。
こうなると、序盤のポジション争いが激しくなるのは明白。これを見る形でロスなく運べた馬が勝つのだろうと想像できた。
レースが始まると比較的早い段階で隊列が決まったように見えたが、それでも
クリスマスパレードが
ディオスバリエンテのハナを叩き、それに
ホウオウビスケッツと
ボーンディスウェイが絶え間なく圧を掛け続けたことによって、2ハロン目が10秒8、それ以降は7ハロン連続で11秒8~11秒9というラップが刻まれた。道中で一度もラップが緩むところがないという展開は2000m戦としてはかなり特異で、見た目以上に先行勢への負荷は高かったはずだ。
そんな攻防を見ながら、完璧なレース運びを見せていたのが
アルナシームだった。
いつも通りに前進気勢の強い挙動を見せながらも、折り合いを欠くことなく好枠を生かしてロスのない待機策。勝負どころでするすると馬群を縫って進出すると、苦しくなった先行勢との手応えの差は歴然。後ろからは
マイネルモーントが同じ進路を辿って伸びてきたが、
アルナシームを脅かすまでには至らず。完勝と表現するに相応しい勝ち方だった。
これまで実績のなかった2000mという距離で重賞2勝目を決めた
アルナシーム。
近走の戦績を見ると、マイル戦や左回りだと明確にパフォーマンスを落としている一方、右回りの小回りでは非常に安定して走れていた。
フットワークの回転が速く、前へ前へと行こうとする気性の持ち主なだけに、これまでは”2000mよりはマイル”というローテを歩んできたが、今回の勝利で中距離寄りの適性を持つことが明確になったと言える。弱点も依然として多いものの、選択肢が多少でも広がったのは本馬にとってプラス。これからも同じような条件であれば大崩れなく走れるのではないだろうか。
2着の
マイネルモーントは休み明けの前走を叩かれてしっかりと良化を見せた。
以前から能力の高さは随所に感じさせ、中山への適性もすでに示していたものの、いかんせん気性面が難しく、輸送の影響も含めレース直前になるまでどういった状態で出てくるかというのが分かりにくい馬。今回は全てが上手くいったということなのだろうが、馬自身の成長も大きいだろう。
母の
ゲッカコウも中山をはじめ小回りで渋い活躍を見せた馬で、本馬もそうした適性を色濃く受け継いでいるように映る。ここから軌道に乗ってくるようならば、ローカル重賞などで出番が増えてくるだろう。
3着の
ボーンディスウェイは道中3番手からの粘り込み。
クリスマスパレードと
ホウオウビスケッツを前に見ながら絶妙な立ち回りだったが、この馬とて決して楽な流れでなかったことを考えれば評価できる内容。昨夏にもハイペースの
七夕賞で見せ場を作っており、切れよりも持続力が問われるレース質が合っているのかもしれない。
年齢や血統から、ここからさらに劇的に上向くという姿は想像しにくいが、このくらいのメンバーレベルなら警戒は必要か。
4着の
クリスマスパレードは結果的に厳しい展開に身を置くことになったものの、最後まで上々の粘り腰。
改めてこの舞台への適性と能力の高さを示したと言えるが、一方で緩急のある流れを作りにくいという課題が浮き彫りに。単騎で楽に逃げられれば強力な個性だが、今回のように圧を受ける立場になると、このクラスではどうしても甘くなってしまう。上手く番手で折り合い、少し溜めを作れるようになればレースの幅も広がってきそうなのだが、次走はどのような戦法を選択してくるだろうか。
クリスマスパレードと最後まで一番人気を争っていた
ホウオウビスケッツは9着。
近走のスローに近い逃げとは全く異なる流れだった上、一際重いハンデと大外枠、序盤で強引に好位を確保に行ったロスはかなり大きいように映った。主戦の岩田騎手が騎乗停止中で乗れないという状況も含め、今回は少々運のない敗戦だったと言える。
昨年のパフォーマンスを見ればこのあたりのメンバーでは基礎能力は抜けているだけに、条件が整えば一気に巻き返してくるはずで、大きな減点は必要ないと考える。
シンリョクカや
リカンカブールら上位人気勢も枠や展開に苦しんだ感が強く、この馬たちの巻き返しにも警戒したいところだ。