若い頃はドラマなど見なかったが最近よく見る。今、気に入って見ているのは「教場0」。木村拓哉さん扮するベテラン刑事風間公親が若手刑事を育成するストーリーで独特の緊張感が何とも心地よいドラマだ。
気に入って観ているのにこんな事を言うのもなんだが、私がひねくれ者だからかこの「教場0」に限らずドラマを見ているといつも変なことが気になる。
たとえば「教場0」では毎回お約束の様に出てくる「仕留める」という単語。主人公の風間公親は自ら訓練する新人に「犯人に自供させる期日」を毎回設定するが、この際「〇〇までに仕留めろ。さもなくば交番勤務に戻ってもらう。」と言うのだ。
ドラマというのは百も承知で言うが、実際に現場の刑事が「仕留める」などという単語を使うだろうか?(笑)
カッコいいし、木村拓哉さんが言うとバシッと決まるがドラマ素材としてステレオタイプ化された職業像は私の様にものごと何でも斜めに見る人間から言わせると“現実味”が薄く感じられてしまう。
昔「ショムニ」というドラマが流行った。江角マキコさん扮する庶務課のOLが脚立を持ち社内を颯爽と歩くシーンが有名になったが、以前の会社で10年も総務課に所属していた私に言わせれば制服を着て脚立を持ち歩くOLなど日本国中どこの企業を探してもいないのは確実で、庶務課の仕事というのは実際にはものすごく地味だ(笑)。
ドラマは余興。余興ゆえ、見ている人に楽しんでもらうべく色んな要素を極端に見せるが、刑事でも庶務課でも実際の仕事はもっと地味で格好良くなんかなく、ありふれている。
それでも人間という生き物は派手で華麗な生き方に憧れる。そして現実はそうでないと知りながら、月曜21時になればまたテレビにかじりついて「教場0」を見てしまう私がいる(笑)。
さて、現実はそう派手でなく案外地味と言えば競馬もまた一緒。今週末メインの
日本ダービーにも“地味”な格言が存在する。では紹介しよう。
曰く「ダービーはダービーポジションをとれる馬」。
ソールオリエンスが直線一気の追い込みを決めた
皐月賞。
リバティアイランドが6馬身差で圧勝した
オークス。競馬ファンの頭には派手にG1を勝ち切るシーンが渦巻いていると思うが、歴代のダービーを振り返れば勝ち馬の多くは地味に先行馬群から抜け出している。そして「ダービーポジション」とは一般的に1角10番手以内、4角5番手以内を指す。
タスティエーラは
ソールオリエンス劇場(
皐月賞)で最高の脇役だった2着馬。ゴール前鮮やかに差し切られたシーンは記憶に新しいが掲示板に載った5頭で4角5番手以内にいたのは実は彼一頭だ。
同じレースが出来るかどうかは分からぬが有力馬の中ではほぼ確実に先行しそうで “ダービーポジション”さえ確保できれば格言がその背中を押してくれると信じたい。
5/28、
ソールオリエンスを仕留めろ、
タスティエーラ。第90回
東京優駿、歴史に名を刻むのは君だ。
(文:のら~り)