第156回天皇賞・秋(29日、東京11R、GI、3歳上オープン国際(指)、定量、芝2000メートル、1着本賞金1億5000万円 =出走18頭)サブちゃん感動!
武豊(48)=栗東・フリー=騎乗の1番人気
キタサンブラック(栗東・
清水久詞厩舎、牡5歳)が、出遅れをリカバリーする好騎乗と力強い伸び脚で優勝。GI6勝目を飾った。タイム2分8秒3(不良)。オーナーの歌手、北島三郎(81)も、
ジャパンカップ(11月26日、東京、GI、芝2400メートル)と
有馬記念(12月24日、中山、GI、芝2500メートル)のラスト2戦に全力投球を誓った。
鳥肌が立った。強い雨が降り続き、レコードより12秒2も時計を要した泥んこ馬場。そんな舞台で、
武豊騎手が鮮やかな“神騎乗”を見せ、
キタサンブラックを天皇賞春秋制覇へと導いた。
「パドックから返し馬に行って、最高のデキだと思いました。これだけの馬に乗せてもらっていますから、結果を出せてホッとしています」
14度目の天皇賞制覇を果たした鞍上は相棒の強さに胸を張ったが、アクシデントはいきなり訪れた。「前扉に突進して下がったとき」にゲートが開き、まさかの出遅れ。それでも、全く慌てなかった。「リズム良く走れば強い」と信じて中団のインを追走。外を回るロスを避け、内に懸けて勝負に出た。早めに位置を上げて2番手へ。直線で早々と先頭に立ってからが真骨頂だ。
サトノクラウンが迫ると、もうひと伸び。どこまでも詰まると思えないクビ差で、雨に煙る芝を駆け抜けた。
春の天皇賞では日本レコードを樹立したが、今回はレース史上最も遅いタイムで走破。「体の強さがあるので、こなせると思った」と豊が見抜いた通りだった。高速馬場もタフな馬場も問題なしの万能ぶりだ。
「秋は借りを返すというか、“本当のブラックはもっと強い”というところを見せる気持ちしかなかったので、本当にうれしいです」
復活の勝利に、清水久調教師も笑みがこぼれる。GI3連勝を狙った
宝塚記念で9着に大敗。「敗因は確定できない。“これ以上走ったらどこか痛める”とブラック自身が考えたのかも。馬を責めず、自分の責任として調整してきた」。その期待に応え、強いブラックが帰ってきた。
通算獲得賞金は、あの
ディープインパクトを超えて歴代2位に浮上。引退まで
ジャパンCと
有馬記念を残すのみだ。北島三郎オーナーが「寂しくなるけど、頑張ってほしい。武さんの乗っている
キタサンブラックが、皆さんの頭の中に残ってくれれば」と期待を寄せ、主戦も「
ジャパンCでは日本代表という形になる。連覇を目指して頑張りたい」と意気込む。残り2戦。名手と名馬の雄姿を目に焼き付ける。 (千葉智春)
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★「まつり」は有馬で!
北島オーナーは、1月にJRA賞授賞式に臨んだ際、一昨年の
菊花賞優勝時などに披露した代表曲「まつり」を今年は封印すると宣言。
大阪杯、天皇賞・春に続いて、今回も熱唱は見送られた。しかし、封印は「有馬まで取っておく」ことが目的。ラストランを飾り、“大トリ”を務めることを多くのファンが期待している。
記録アラカルト ◆天皇賞3勝目
テイエムオペラオー(2000年春、秋、01年春)以来、2頭目。 ◆JRA獲得賞金 歴代2位へ浮上した。残り2戦(
ジャパンC、
有馬記念ともV賞金3億円)で歴代1位を目指す。 ◆
武豊騎手 天皇賞春秋合わせて14勝は史上最多。秋は6勝目で、保田隆芳元騎手が持つ最多の7勝に近づいた。同一年の春秋制覇は3度目。 ◆最高馬体重 542キロでのVは、03年
シンボリクリスエスの534キロを超えて、天皇賞・秋史上最高馬体重V。春は
モンテファスト(84年=550キロ)が最高。 ◆タイム 2分8秒3は、2000メートルになった84年以降で最も遅いタイム。2番目に遅いのは91年
プレクラスニーの2分3秒9(不良)。