第58回
有馬記念(22日、中山10R、GI、3歳上オープン国際(指)、定量、芝・内2500メートル、1着本賞金2億円=出走16頭)1番人気の
オルフェーヴルが、ケタ違いの強さを見せた。8馬身差の圧勝で昨年の
宝塚記念以来となるGI6勝目を挙げて、見事にラストランを飾った。タイム2分32秒3(良)。レース後は引退式が行われ、その日のうちに福島県ノーザンファーム天栄へ移動。来春からは種牡馬となる。
想像をはるかに超えた結末だった。12万を超えるファンが見守る中、王者
オルフェーヴルが2着馬に8馬身差をつけて大楽勝。驚愕のパフォーマンスで花道を飾った。
「オルフェが一番だとアピールしたかったし、自信がありました。オルフェは、世界一強いと思います」。心地よいオルフェ・コールを背に池添騎手が声を弾ませた。
序盤は後方4番手で、
ゴールドシップの直後を追走。1周目の正面スタンド前でも掛かることなく、流れに乗った。ハイライトは、2周目の3コーナー過ぎ。鞍上が軽く合図を送ると、大外から一気にひとマクリ。4コーナー先頭から、直線は独壇場だった。鞍上が内ラチ沿いに誘導した後、右ムチを振るって後続をぶっちぎった。
「呼吸を合わせて走らせました。少し動くのが早いかなと思ったけど、手応えが十分ありましたから。馬を信じて行きました」と池添騎手が会心の騎乗に胸を張った。
最強馬の主戦として、酸いも甘いも味わった。ダービージョッキーという最高の称号を得た後は、「毎日がプレッシャーとの戦い」だった。
凱旋門賞は2年連続で乗り替わり…。ヤケ酒では傷ついたプライドを癒やせず、「騎手を辞めよう」と思うこともあった。それでも、今春は相棒の鞍上の座を射止めるべく、仏遠征して武者修行するなど、「すべてはあの馬のため」に、エネルギーを注ぎ込んできた。
パートナーは主戦の思いに応える圧巻の走りで、GI6勝目をマーク。
有馬記念の8馬身差は、2003年
シンボリクリスエスの9馬身に次ぐ2番目の大きさ。まだまだ現役でやれる…という声も聞こえてくるが、来年からは種牡馬としての大きな仕事が待っている。
「これまでの名馬と同じように、オルフェも今の時代を築いた馬。オルフェと
凱旋門賞に挑むことはできなかったけど、オルフェの子供で叶えばこれ以上いうことはありません」と池添騎手は新たな夢を見すえる。
最後はハッピーエンドで幕を閉じた。多くのファンに愛された破天荒な最強馬は、永遠に語り継がれていく。 (鈴木康之)