第17回
NHKマイルC(6日、東京11R、GI、3歳オープン、国際、牡・牝、指定、定量、芝1600メートル、1着本賞金9200万円=出走18頭)
秋山真一郎騎乗で1番人気の
カレンブラックヒルが先手を奪うと直線で後続を突き放して完勝、4戦4勝で3歳マイル王の座についた。レース史上初の逃げ切り勝ちだった。秋山騎手、
平田修調教師ともにJRA・GI初勝利。次走は未定ながら、ダービー(27日、東京GI、芝2400メートル)には登録する予定。2着には3番人気
アルフレード、3着に15番人気の
クラレントが入った。2番人気の
マウントシャスタは6位入線ながら走行妨害のため失格となった。
直前の
スコール、そして雷鳴。嵐の予感は
カレンブラックヒル圧勝劇の序章でしかなかった。誰もついてこられない。逃げ切るのが困難なマイルGIを堂々と押し切った。無敵の3歳マイル王が誕生した。
「勝ったら泣こうと思ってたのに、うれしすぎて泣かれへん」
デビュー16年目。GI55回目の挑戦。
秋山真一郎騎手にとって夢にまで見たGIのトップゴールだったが、派手なガッツポーズも涙もなかった。ウイニングランに入るとき、小さく右手の人さし指を立て、天に向かって突き出す。その姿はGIジョッキーになれたことを神に感謝するかのようだった。
スタートを決めると、ジョッキーはハナを奪っていった。「他馬に合わせてリズムを壊すより、自分のペースで走った方がいい。迷いはありませんでした。来られるもんなら、来てみろという気持ち」と腹をくくった秋山に馬も応えた。500メートルの直線でもスピードは緩むことなく、逆にラスト1ハロンで他馬を突き放す。終わってみれば2着以下は3馬身半も後ろに置き去りだった。
「必死だったから、こんなに差があるとは思わなかった。デビュー前から能力の高い馬だと思っていたし、こういう馬がGIを勝つんだな、と思いました」
秋山には、5年前の
オークスで1番人気の
ベッラレイアに騎乗してハナ差2着の苦い経験があった。今回の
カレンと同じ平田厩舎の馬だった。
「あの経験が今回に生きたと思います。あのときは精神的に余裕がなかった。今回は自信がありました」
真面目で関係者からの信頼も厚く、デビュー2年目から15年連続重賞勝ちと腕も確か。それでもブレークしきれなかった秋山が、この日の東京で、輝きを放った。「これまでGIのことを聞かれても、勝ってもいないのに偉そうなこと言えない、と思っていた。もうこれからは言えますね。どんどん聞いてください」と冗談めかして話すその表情が、ひと皮むけたものに見えた。
管理する
平田修調教師にとっても開業7年目で初めてつかんだGI。トレーナーは「これで一人前の端くれぐらいにはなれたかな」と笑顔。秋山同様、
ベッラレイアでの経験も「あのレースがあって、今の僕がある」と経験を糧にして、頂点に立った。
「この馬は想像以上に強い。今後のことはオーナーと相談して決めますが、ダービーには登録します」
調教師がダービーも視野に今後の路線を検討することを宣言。GIの厚かった壁を突き破った騎手と調教師。その勢いがあれば、
カレンブラックヒルの無敗街道はこれからも続いていくかもしれない。 (柴田章利)
