第72回
皐月賞(15日、中山11R、GI、3歳、芝2000メートル、1着賞金9700万円=出走18頭)“ウチパク・マジック”のさく裂だ! 3コーナー最後方からポッカリと空いた内を通って進出した4番人気
ゴールドシップが、直線で力強い伸びを披露。堂々と牡馬第1冠を制した。タイム2分1秒3(稍重)。鮮やかな手綱さばきを見せた
内田博幸騎手(41)=美・フリー=は、骨折から復帰後、初のGI制覇。
須貝尚介調教師(45)=栗東=はGI初制覇。スタート後につまずきながらも、直線で追い込んだ
ワールドエースが2着に入った。
支えてくれた人への感謝を込めて、拳を天に突き上げた。大けがを乗り越えて、つかんだ勝利。
内田博幸騎手が思い切りのいい騎乗で、
ゴールドシップを牡馬クラシック第1冠の覇者へ導いた。
「最高ですね。馬を信じて乗りました。けがをしてから、『絶対にGIを勝つんだ』と思ってやってきました。それを実現できて、うれしい」
昨年5月11日の大井競馬で落馬し、頸椎歯突起(けいついしとっき、首の部分)骨折の重傷を負い、今年1月28日の復帰まで約8カ月半の戦線離脱。その逆境を乗り越えた名手が完全復活だ。
勝負どころで、迷いなく動いた。向こう正面では最後方だったが、各馬が馬場の悪い内を避けて外へ出した3~4コーナー。
ゴールドシップ1頭だけが、ガラリと空いた内へ進路を取った。「道悪は下手ではないので、内へ行ったら走りがよかった」。その作戦はズバリ。4コーナーを回りスルスルと3番手まで押し上げると、直線は馬場のいいところを選ぶだけ。グングンと伸びて後続を突き放す一方だった。
ウチパクは2008年
菊花賞(
オウケンブルースリ)、10年ダービー(
エイシンフラッシュ)に次ぐ牡馬クラシック勝利で史上20人目、地方出身では初の3冠騎手となった。一時は寝たきりで上手に会話もできず、見舞いも断る苦しさを味わったが「馬に乗れる幸せは、大きなけがをしなければ分からなかった」と、競馬への情熱を再確認。妻の文子(あやこ)さんや、千葉県・鴨川市のリハビリ施設のスタッフの助けを得て、10年ダービー以来のGI制覇を果たした。
「(内田博に)全て任せていましたが、ヒヤヒヤしました」と振り返る
須貝尚介調教師は、昨年の
朝日杯FS(
マコトリヴァーサル13着)に次ぐ2度目の挑戦でGI初制覇。中62日のVは、1990年に
きさらぎ賞から直行した
ハクタイセイと並ぶ最長記録で、開業4年目ながら、難しい調整過程を克服した。
ステイゴールド×
メジロマックイーンの配合は昨年優勝の
オルフェーヴルと同じで、先輩に次ぐダービー(5月27日、東京、GI、芝2400メートル)制覇、2年連続3冠馬誕生へ期待は膨らむ。「本当に強い馬。東京の方が合っている」とウチパクが言えば、「距離は延びれば延びるほどいい」と須貝尚師も意欲十分。名手が舵を取る“黄金の船”
ゴールドシップの未来は、前途洋々だ。 (森田実)